ライカの復刻レンズシリーズの中でも特にお気に入りなのがNoctilux M50mm F1.2 ASPH.です。
オリジナルのような線の細さや繊細さを残しつつ、現代的なコントラストと破綻のない描写を両立しています。
今や雲の上の存在となってしまったオリジナルを思いつつ、復刻を使うのがマイブームとなりつつあります。
通勤路沿いの川に魚がいました。
冬の間はどこかで身を潜めていたのか、全く姿を目にしませんでした。
群れで悠々と澄んだ川の中を泳ぐ姿からやっと冬が終わったことを実感できます。
四隅の周辺減光と解像度落ちが中央部を引き立て、中央部のシャープネスの高さが平面でも立体感を生み出します。
休日散歩の醍醐味は思い付きで行動できるところでしょう。
通勤時には通ったことがない道路、用水路沿い、面白そうな方へ気の向くまま歩を進めます。
もう夏のような日差しから逃げるように小さなトンネルの中へ。
陰影の描写が美しいレンズです。
ノクティルックスと言うと現行のF0.95のイメージが強く、大きく重いイメージがありますが復刻は非常にコンパクトです。
M型の前後バランスを崩さないギリギリの重量、サイズ感は流石です。
牧場の匂いにつられて歩いてくると住宅街の真ん中に羊がいました。
ビル街では感じられない土の匂い、夏に向けてどんどんと新芽を出す緑の匂い、民家からお昼ごはんの匂い、そんな中に牧場のような匂いを感じてなんとなくそっちに向かいました。
端には尻尾を振りながら眠っている牛や、日陰で休憩しているほかの羊も。
牧場というとつい触れ合えるほどの距離感を求めてしまいがちですが、これくらいの距離感の方が動物たちにはストレスがないのでしょうか。
この1枚は少し絞ってF1.4、羊のふかふかとした質感をうまく捉えてくれました。
牧場併設のカフェへ。
地元で採れた野菜や牛乳などにこだわっているそうです。
少しうす暗い店内はまさにこのレンズ向き。
最短1mということで距離感に慣れは必要ですが、いつも使っているM3もこんなものだなと思いながらテーブルフォト。
少し甘いコップの縁やハイライトの滲みも非常に上品です。
前ボケのスムーズさは極上。
私は後ボケより前ボケの方が好みです。
そして合焦部の浮き立つような立体感。
ピークが非常にシャープでありながら、その周辺も被写界深度内に見えつつ若干滲むような描写が特徴的です。
ぱっと見ではF1.2なのに非常に被写界深度が深く見えます。
しかしながら、じっくり見ていくと実はほんの少しボケている、そんな印象です。
コントラストの高さからもわかっていただける通り、コーティングが良くなり余程意地悪な条件でないとゴーストは出ません。
レンジファインダーの特性上撮影結果を見ながら撮ることはできませんが、その分このレンズはどういう写りをするのだろうと想像しながら撮影する楽しさがあります。
絞りや光線状況から写りを予測し、シャッターを切ったら結果を確認する。
カメラやレンズと一問一答をしているような気分です。
この一枚はナチュラルに写したかったのでF2まで絞って撮影。
「THE大口径レンズ」という写りです。
光が回るという表現がしっくりきます。
背景に気を取られてしまいそうですが、女性像は非常に繊細な描写です。
いかにもノクティルックスで撮りましたという一枚です。
のんびりと歩いているともう夕方に。
この日最後に撮った1枚でしたが、家に帰って見てみると何とも言えぬ雰囲気があります。
光を受け滲む花や木の陰、そして強烈な幹の立体感。
いかにもライカらしいレンズです。
復刻とは言うもののただの焼き直しではなく、オリジナルの長所と現代の要素を掛け合わせた全く新しいレンズであるという見方も出来ます。
皆様のお手元にも、是非この一本を。
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