
去る5月5日、LeicaからSL2-S用ファームウェア(バージョン2.0)がリリースされました。
内容は動画撮影機能の大幅向上。
待望のHEVC(H.265)圧縮対応や、動画撮影中だと一目でわかるタリーモードの採用、比較的ビットレートを抑えたLong GOP(メーカーそれぞれの圧縮アルゴリズムによって大きく画質が変わるので、同機のAll-Intraとの画質の差も試してみたい…!)の搭載といった、素晴らしいアップデートです。
こちらに関しては近いうちにまた試すとして、本日ご紹介いたしますのは、このアップデートが来る前にSL2-Sとアポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.で撮影したものです。
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撮影に赴いたのは、東京に桜前線が訪れた2021年3月19日の事。
カメラボディにレンズ、三脚を携えて、目黒川のほとりに赴きました。
しかしながら私は、ここで大きな過ちに気が付きます。
人がいっぱいで!三脚が!立てられない!
もともとお花見をする風習のない私は、最近まで田舎の実家に住んでいたこともあって、都会の桜名所の人出を完全に失念していたのです。
三脚を使えないため、期せずしてボディ内手振れ補正の実力も試すことになりました。
※動画内のいくつかのカットでは、三脚を立てております。
まずは通常のモードで撮影した動画です。
MOV C4K(4096×2160)の29.97fps,ALL-I 400 Mbps, 4:2:2 / 10 Bit で内臓SDに記録。
手振れ補正の利きは控えめで、ガチガチに補正するというよりは自然な感じに抑えるようです。
※しっかりと持っていたつもりでも、少し酔いそうな画面になってしまいました…。
色味は落ち着いた渋みのある、「ライカカラー」な仕上がりに。
いわゆる“撮って出し”でのこの仕上がりは、他機種にはない大きな魅力です。
桜の下を船が通過するカットでは、桜に白トビが見られますが、十分なダイナミックレンジが見て取れます。
さて、次はHLG(ハイブリッドログガンマ)の作例をご紹介いたします。
※HLGとは…NHKとイギリスの公共放送局であるBBCが共同で開発し、電波産業会で標準化された動画用HDR方式。HDR対応ディスプレイでは高ダイナミックレンジな画像を再現し、従来のディスプレイでは“そのディスプレイ性能に応じた”再現性での表示となります。
LOG撮影された動画をカラーグレーディングするのと異なり、ある意味「インスタントで」HDR動画が撮れるという手軽さも魅力の一つです。
こちらもMOV C4K(4096×2160)の29.97fps, ALL-I 400 Mbps, 4:2:2 / 10 Bit で内臓SDに記録。
どのディスプレイで見るかによって大きく再現性が変わってしまいますが、HDR対応ディスプレイで見た時の美しさはやはり格別!
高ダイナミックレンジももちろんですが、HLGで撮ることによりRec. 2020の色空間になるので、色味も変わってきます。
写真を嗜んでいる方にお伝えするのであれば、「Adobe RGBよりも(紫のごく一部の色相以外は)全てにおいて再現できる色域が広い色空間」というのがしっくりくるかと思います。
私がiMACでこの動画を見たところ、ハイライト部のペールトーンが非常に上品で、カラフルな花などによく合うだろうな…という印象を受けました。
使用したレンズの信じられない程の高性能ぶりにも驚きましたが、SL2-Sの使いやすさ、色味にも大満足な一日となりました。
ちなみにバッテリーもちもよく、歩き回りながら2時間ほどの撮影の後残量は60%以上残っていました。
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この日は写真も撮りましたので、少しではありますが以下にご紹介いたします。
SL2-S+アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.
SS:1/250 f:2 ISO:100
SL2-S+アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.
SS:1/250 f:2 ISO:100
SL2-S+アポズミクロン SL50mm F2.0 ASPH.
SS:1/5000 f:2 ISO:100
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普段は国産のミラーレス機で動画を楽しんでいる私ですが、SL2-Sで動画撮影をしてみて非常に感動した事があります。
それは動画と静止画を完全に分けたユーザーインターフェースにより、ワンボタンでスチルとムービーそれぞれの設定を呼び出せる事。
動画には動画の、静止画には静止画の設定があるので、写真→動画→写真…。と撮り分ける際、非常に便利でした。
(※殆どのカメラは、大枠のMENUの中に動画設定を内包しています。)
伝統と伝説のM型も素晴らしいですが、こういった質実剛健かつユーザー本位で、過去の常識にとらわれない柔軟な発想もライカの魅力だと感じた一日でした。