「Leica Summitar 50mm F2」なるレンズを貸していただきました。
ズミターという聞き慣れない名前ですが、調べてみるとズミクロンの前身になったレンズで、1939年から1955年にかけて17万本も生産されたロングセラーレンズであったとの事。
ライカと悪戦苦闘し始めて1年半。これまでズミクロンだけを使っていたこともあり、ズミクロンの前身と聞いただけで急に親近感が湧いてきました。さらに約210gという軽さも魅力的です。
古い機材を使うと被写体にも懐かしさを求めてしまう筆者。さすがに生まれる前の記憶はありませんが、昔ながらの風景を探しに都内を散策してきました。
お茶の水駅の側にある湯島聖堂。江戸幕府直轄の学問所だった建物は、今年の大河ドラマで重要な役割を果たした平岡円四郎とゆかりがある場所として紹介され、機会があれば訪れたいと思っていました。
都心とは思えない立派な木々と古壁に囲まれた静かな場所は、足を踏み入れた瞬間から厳かな空気に包まれます。
この日は生憎の空模様でしたが、濡れて真っ黒になった石畳がオールドレンズならではの柔らかな描写を引き締めます。
絞り開放では周辺部の甘さと大きなボケが相まって、手前の門だけがソフトフィルターをかけたような描写に。まるで別世界への扉のように描かれました。
湯島聖堂の裏手は江戸の総鎮守「神田明神」。黒で統一されていた湯島聖堂の直後に訪れると、朱色の本殿がいつも以上に鮮やかに感じます。
撮影中、ちょっと困った事が発生しました。
紫陽花の細かな花にピントを合わせようと、ライブビュー機能を起動したところピント合わせ最中に、「レンズが装着されていません」のメッセージと共に、ライブビューが落ちてしまいました。
機材をよく見ると、M/Lリングの無限遠ロックレバーを逃がす半欠部分から6ビットコードの読み取り部分が露出しており、その上をロックレバーが移動した際、誤認識を起こしたようです。
ボディの故障でなかった事に胸を撫で下ろしましたが、終日ライブビューは使いものにならずで不便さを感じました。
後で調べたところ、このような症状に対応したM/L変換リングがRAYQUALから販売されているとのことなので、M型のデジタルカメラでご使用の際はご注意ください。
上野の不忍池にたどりつきました。池はハスの葉で覆われており、夏の訪れを感じることができます。
その中に葉の影に早咲きの花を見つけました。日中は閉じてしまうハスの花ですが、生憎の天気と大きな葉の影になったことで、閉じるのを忘れてしまったようです。
葉の上に出来た水溜りがフレア気味になり、また少し幻想的な画になりました。
動物園や博物館、美術館と多くの展示施設が集まる上野公園ですが、歴史を辿ると上野寛永寺の境内だった事もあり多くの寺社が残っています。その一角をモノクロで切り取ってみました。
モノクロにすることで描写の甘さが目立たなくなったものの、周辺にかけての柔らかさはそのまま。オールドレンズらしい味のある写りです。
朱色の鳥居の周囲を囲う青いフェンス。色が喧嘩してカラーで撮りづらい場所も柔らかいモノクロで上品に収めることができました。
公園の奥まで進むと、京成電鉄の旧博物館動物園駅(平成9年休止)の入口に辿り着きました。 今回の撮影の中で唯一、当時の記憶が残る懐かしい場所です。
重く閉ざされた扉には、すぐ脇の東京藝術大学の協力で施された装飾が加えられていました。この装飾も立派なのですが、個人的にはホームから階段にかけて描かれていた動物の壁画をもう一度見てみたいものです。
そして博物館動物園駅の側にある子ども図書館は、明治39年に建てられた「帝国図書館」の面影を残す建物です。
1988年に改修されたことで、実際見ると近代的な雰囲気も醸し出していますが、これもモノクロに撮る事でより昔のイメージを想像しやすくなりました。
本日の撮影散策のゴールは上野寛永寺の根本中堂です。大河ドラマをきっかけに湯島聖堂からスタートし、15代将軍ゆかりの地をゴールとしました。
直線距離にしたらさほど離れていませんが、本郷台地から上野台地をまたぐ地形は坂道が多く、想像以上に体力を要しました。小型軽量な機材で本当に助かりました。
また、ドラマのタイトルのような晴天とはなりませんでしたが、強い逆光は得意としないオールドレンズだけに丁度良い天候だったのかもしれません。
今回はM/L変換リングの選択ミスというハンデがありましたが、写真は全体的にやや弱目の発色でオールドレンズらしい柔らかな描写が楽しめました。
被写体次第では、本当にタイムスリップしたかのような感覚になれます。ぜひ一度お試しください。
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