ズマールは1933年に製造が開始された、F2のレンズです。
ライカでF2と言えばズミクロンですが、これはズミクロンへと繋がる源のレンズです。
しかし、その写りはズミクロンとは対照的に柔らかく幻想的だと聞きます。
以前から気になっていたレンズをさっそくいつものようにZ5に付けて試してみました。
向かった先は沼津です。
実際に目に映った景色よりも鈍色がかっているように感じます。
全体的にうっすらとベールを纏ったような雰囲気です。
ズミクロンへの片鱗を感じたのは周辺減光の少なさです。
また、全体的にあっさりとした写りも沈胴ズミクロンと似たものを感じました。
柔らかい写りの中にもピント面ははっきりとしています。
ズマールは個体差が大きいレンズです。今回はよく写るものを選んだようです。
古いレンズになればなるほど基本的な写りは変わりませんが細かい描写で個体差が出やすくなってきます。
どのレンズを選んだかでボケが暴れやすかったり、より柔らかい写りになったりするのは面白いと思います。
足を延ばして伊豆に行きました。
こちらの滝では、鮎釣りも体験できるとのこと。
家族で釣りを楽しむ姿が多く見られました。
ときおり、歓声があがりどうやら釣果は上々の人々が多そうです。
アンダーで手前の草にピントを合わせ背景をぼかします。
これまでのベールをかぶったような描写から一転してはっきりした描写のように見受けられます。
この辺りは『伊豆の踊子』の舞台としても有名で、銅像が立っていました。
『伊豆の踊子』は孤独と憂鬱にさいなまれた主人公が踊子の純情や優しさによって解放されていく話です。
この銅像が物語中のどの場面のものなのかは正確にはわかりませんが、背景がすこし滲みぐるぐる回っているところは
主人公の孤独や憂鬱を表しているように思いました。
歩いてきた道を振り返り一枚写真を撮りました。
緑が思いのほか鮮やかで驚きました。海の写真を撮った時の青はLeicaらしいなと思いましたが鮮やかな緑はNikonらしいなと思います。
マウントアダプターを介して二つのメーカーのカメラとレンズを使うと、それぞれの個性がでて楽しいです。
それでも日の当たった場所は幻想的にきらめいていてズマールを感じます。
何気なく黄色い風鈴にピントを合わせて写真を撮り、背面で確認した時に驚いた一枚です。
ボケもざわざわし、ピント面ではないガラスはふわっとした描写になっています。
白昼夢にいるかのような一枚にしてくれるズマール。
日常から離れるおでかけの際に持っていきたいレンズだと思いました。