【Nikon】追憶のNew FM2
・追憶のNew FM2
今年もまた四月になりました。
出会いと別れの季節としばしばいわれる春の月は、私にとってあるカメラを想起させます。
学生時代、まだカメラを始めてからそう長い年月が経っていないころ。
写真の道を志した私が初めて触れたフィルムカメラ。それがNikon New FM2でした。
本機種は、長いNikonの沿革の中でも特にベストセラーとしてよく知られています。
私個人と同様に、初めて触れた(フィルム)カメラがFM2、New FM2であったという方はおおくいらっしゃるでしょう。
私がこのカメラに触れた時にはすでにフィルムカメラ全盛の時代ではありませんでしたが、
当時、カメラ店のショーケースにて見かけ、見た目の絶妙な造形のバランスに心を奪われたものです。
New FM2の発売は1984年。4000分の1秒で撮影可能な金属製シャッターを採用し、
SR44あるいはLR44のボタン電池を使用すると、ファインダー内に設けられた露出計(+・○・-という形でランプが点灯するシンプルなもの)が動きます。
その他駆動部分に電源を使用しない為、電池を入れなくても露出計さえ使用しなければ問題なく撮影が可能です。
Nikon (ニコン) New FM2 シルバー + Nikon (ニコン) Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8S + FUJIFILM ネオパン 100 ACROS 135/36枚撮り
Nikon (ニコン) New FM2 シルバー + Nikon (ニコン) Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8S + FUJIFILM ネオパン 100 ACROS 135/36枚撮り
Nikon (ニコン) New FM2 シルバー + Nikon (ニコン) Ai Micro-Nikkor 55mm F2.8S + FUJIFILM ネオパン 100 ACROS 135/36枚撮り
後からほかのフィルムカメラと比較してとりわけ感じるのは、このカメラは、こと使いやすさという点で他メーカーの同クラス機種を圧倒しているということです。
着目すべき点は、フィルムを送る際の絶妙なトルク。「カリカリカリ…」というような小さな細かい感触とともに、極めて軽い力でコマ送りが可能なこと。
露出計の精度も申し分なく、いまでこそネガを使うときは露出はほぼ目測ですが、相反則の感覚を掴むのに一番役立ったのは、本機の使用経験でした。
本機の性能という面の話からは若干逸れますが、MFニッコールの描写性能の高さを認識したのもこのボディのおかげといえるかもしれません。
中でも上の作例で使用したAi Micro-Nikkor 55mm F2.8Sは、近接から無限遠まで極めて高い描写性能で、かつ、硬すぎないボケ、良好なコントラストなど、お気に入りでありました。
Nikon (ニコン) New FM2 シルバー +Carl Zeiss (カールツァイス) Planar T* 50mm F1.4 ZF.2 + FUJIFILM フジクローム Provia 400X 135/36枚撮り
Nikon (ニコン) New FM2 シルバー +Carl Zeiss (カールツァイス) Planar T* 50mm F1.4 ZF.2 + FUJIFILM フジクローム Provia 400X 135/36枚撮り
過去の写真を見返していると、今は無きFUJIFILM Provia 400Xで撮影されたカットもありました。
思い返される学生の夏休みのひと時。高いコントラストのこの写真は、決して夏への憧憬だけではなく、私の学生時代の様々な青い苦悩がよみがえります。
該当のフィルムの発売が中止された今なお、撮影された原板は生きており、アナログな記録メディアとして極めて優秀な媒体であるとしみじみ感じるところです。
Nikon (ニコン) New FM2 シルバー +Carl Zeiss (カールツァイス) Planar T* 50mm F1.4 ZF.2 + ILFORD HP5 PLUS 400 135/36枚撮り
Nikon (ニコン) New FM2 シルバー +Carl Zeiss (カールツァイス) Planar T* 50mm F1.4 ZF.2 + ILFORD HP5 PLUS 400 135/36枚撮り
今は比較的よりコントラストがなだらかな描写の写真を撮影することが多いですが、当時はコントラストが高めで硬調な写真が好みでした。
ILFORDのHP5 PLUSは現像方法でそこそこ質感をコントロールすることができるので、よく使っていました。
・写真と記憶
日々生きているなかで振り返る思い出といえば、良い思い出や悪い思い出が多く、普遍的な日常を回顧することはあまり多くありません。
しかしながら、「写真」というツールは、極めて写実的に過去自身が存在した場所を描写することができます。
写真によって想起される記憶は、長期間鮮度のよい状態で保存され、思い出す際に五感の記憶をも伴って現れる気がします。
たまには自身の撮影した写真を振り返りながら、過去に記憶に寄り添ってみるのもよいかもしれません。