CanonのEOSを使い続けてかれこれ13年ほどになります。
父がNikon党の為、じゃあ私はCanonで始めよう…と言ったあまのじゃくから始まった私のカメラライフは、EOSの謳い文句でもある「快速・快適・高画質」に支えられ十分すぎるほどのものでした。
しかしその裏で、私はいつも気になっていました。
「Nikonのカメラやレンズはどうなんだろう」と…。
実際強力なライバルであることは間違いなく、車に例えるとランサーエボリューションとインプレッサのような関係。
お互いに追い付け追い越せと切磋琢磨しあうライバル同士、いつの時代も熾烈なるシェア争い/性能争いを繰り広げてきたわけです。
そうしてF,D,Zと続いてきたNikonの商品には魅力的なカメラやレンズが沢山あったわけですが、何となく「Nikon使ってみたい」と言ったら負けな気がして、いつの日も手を出せずにいました。
今思うと、つまらない意地を張っていたわけです…。
そんなある日、ひょんなことからZ6ⅡとNIKKOR Z 40mm F2の組み合わせで夜の撮影に出る機会がありました。
高感度に強いことと、軽いこと。この2つの条件で選んだ機材でした。
ISO:4000 f:2 SS:1/5
ファーストカットがこちらです。
撮影場所は深夜の駐車場の為、殆ど真っ暗。ピントを合わせた時計はもはや肉眼でもほぼ見えません。
しかしながらAF補助光を軽く瞬かせたZ6Ⅱは瞬時に合焦。
「やる!」と驚きましたが、凄いのはここからでした。
滑らかなボケ味とシャープネスに舌を巻いていたところ、アフタービューの撮影設定を見ているとISO4000の文字が見えます。
ISO4000?あれ400に設定しなかったっけ。うそでしょノイズほぼ見当たらないんだがいやいやおちつけ等倍で確認すればきっとカラーノイズが。
ないや…。
普段使用しているCanonのEOSでは、輝度ノイズ(細かいブツブツ)よりカラーノイズ(赤・青・緑の点々)が目立つのですが、Zはカラーノイズがほぼ確認できません。
これは裏面照射CMOSを搭載しているおかげか、もしくは配線に電気抵抗値の低い銅素材を採用したのが効いているのか…。
多分、その両方でしょう。カラーノイズが無いおかげで、非常にクリーンな高感度画質です。
かの有名なドイツのカメラメーカー、ライカの高感度ノイズによく似ています。
そしてこのせいで、後程ISOを下げる事を忘れ続けてしまいました。
ISO:4000 f:2 SS:1/400
引き続き、ISO4000のカットです。
驚くほどノイズが少ないのですが、それだけではありません。ピントを合わせた場所は非常にシャープです!
パンケーキレンズのような薄さを誇るZ40mm、ネットの前評判で「よく写る」という事は知っていましたが、正直「パンケーキにしては」という接頭語が付くものだと思っていました。
しかしそれは大きな間違いで、元データでは配管パイプの表面に巻かれたアルミホイルの質感まで写っています。更にこの立体感。ちょっと鳥肌ものです。
ピクセル等倍の切り出しはこちら。
(後編集は全くしていません。撮って出しのjpegです)
画像周辺部でさえこの写り。しかも絞り開放。
Zレンズの凄さを、身をもって感じた瞬間でした。
ISO:4000 f:2 SS:1/1250
相変わらずISO4000で撮り続けています…。
しかしこの感度でも原色系の色が濁らず、ヌケが良いというのは筆舌に尽くしがたいことです。
元データではこちらを見ているガードマンの顔まで判別できます。
ISO:4000 f:2 SS:1/1600
帰宅後写真を見返している時に気がついたのですが、オートホワイトバランスの精度が非常に高く、白を誠なる白にしてくれます。
この凄さ、普段他メーカーを使っている方ならわかって頂けるはず。
ミックス光の下で、こんなに白が白くなる事など、普通はありえません。
ISO:4000 f:2 SS:1/125
なんと精度が高いAWBなのでしょうか。AIでも内蔵しているのかと疑ってしまいます。
しかし内蔵しているのはAIにあらず。3種類のAWBです。
A0 白を優先する
A1 雰囲気を残す
A2 電球色を残す
それぞれ明確な役割がありますが、今回の記事は全てA0 白を優先するで撮影しています。
ニコンのホームページに
[A0]は、複雑な光源のスポーツ会場でも白いユニフォームを忠実に白く再現。
と記載されている通りの実力を見せつけてくれました。
私はひそかに、このAWBを漂白剤と呼ぶことに決めました。
ISO:4000 f:2 SS:1/60
無機物をソリッドに描ける事は解りました。では自然物はどうでしょうか。
こちらもアメイジング!
どこまでもしっかりとした色再現で、植物の緑が持つ微妙なニュアンスを正確無比に再現しています。
更にこのボケ味!
二線ボケ確認用の被写体としてこれほど適したものもないほどですが、まるでとろける様にスムーズなボケ味です。
Zレンズは格が違う。これでプラマウントレンズだなんて、S-Lineレンズは、どうなってしまうんだ…!?
ISO:4000 f:2 SS:1/13
驚きはレンズだけに留まりません。
左上の青い光、これほど彩度の高い光の滲みにさえ、バンディングノイズ(※グラデーションの部分に出る、縞々のトーンジャンプの事)が出ないなんて…。
この高画質は、ボディとレンズ両方の力が合わさってなせる技だと痛感します。
三日月の表面の質感も見事です。
ISO:4000 f:2 SS:1/13
手を伸ばせば触れられそうなほどの立体感。
背景から被写体が切り離され、別レイヤーになったかのような浮き上がり方、そしてやさしいボケ…。
この日の素晴らしい撮影体験を経て、何故ニコンのミラーレスカメラが「Z」という名前になったのかが私なりに分かった気がしました。
アルファベット最後の文字、Z。これ以上ないほど画質が良いから、Z。最上だから、Z。
後日この話を知人にしたところ、
「え、知らなかったの?もともとそういう意味だから」と言われてしまいました。
なかなかに恥ずかしい思いをしてしまいましたが、名前の由来を知らない「いちCanonユーザー」がそう思ったと言う所にフォーカスすることにしましょう…。
ノイズレスな画、透明感のあるヌケの良さ、立体感のある描写。
これがNikonの実力なんだと、体験を伴って実感できました。
羨ましいと、そう心底感じた一日でした。