『Nikon Z9』購入の際、資金捻出の為、これまで集めてきた機材の大半を手放してしまった筆者。
空きスペースが目立つようになった我が家の防湿庫の中で生き残ったレンズ、『Ai-S Nikkor 50mm F1.2』を紹介します。
機能上の不具合はなく、引き取り手が見つからなかったフィルム一眼レフカメラの救済用に残した本レンズ。とは言え、当のフィルム一眼レフを使う予定が全く無いので、このままでは庫内でオブジェ化してしまいます。
幸い『マウントアダプター FTZ』も残してあったので、Z9と組み合わせて横浜方面に出掛けてみました。
電子シャッター搭載により最高1/32000秒のシャッターが切れるようになったZ9は、強い日差しの下でも気兼ねなくF値開放で写真を撮る事ができます。
周辺光量の落ち込みが目立ちますがF1.2の柔らかい描写は凄いの一言です。
この柔らかな描写はファインダーを覗いた瞬間から伝わりました。一見、ピント合わせに影響しそうなふんわり感ですが、Z9の見やすいファインダーと、拡大表示やピーキング機能のお陰で意外とスムーズに使う事ができました。
また、マウントアダプターと組み合わせても他のZレンズと大きさに差はなく、丁度良いサイズ感に収まったのも使いやすさの一助になりました。
真夏の炎天下でも可能になったF1.2での撮影。
今回はそれをとことん味わってみようと、全カットF1.2で撮影することにしました。
柔らかい描写の中にも、しっかりシャープさも感じられるところに本レンズの底力を感じます。
どことなくノスタルジックさを加えたかのような描写。本レンズで動画撮影をしたら回想シーンを感じさせる画になり、楽しいかもしれません。
赤レンガ倉庫は改装工事中で立入禁止に。入口周辺にもバリケードが置かれていたため、これが写らないよう上層部だけを狙いました。
建物まで少し距離があったにも関わらず、煉瓦積みの細部までしっかり見てとれます。ピント面の解像力はかなり高そうです。
逆にピント面から外れた木々の部分では滲みが見られました。
最近では意図的に収差を残したレンズが発売されるなど、オールドレンズ的な描写が人気になりつつありますが、本レンズも1981年に登場したオールドレンズ。特徴的な写りに面白さを感じます。
中華街の軒下で撮った1枚は明暗差が大きくなり、明るい部分のボケがうるさく見えますが、ピント面がしっかり浮き出るのでさほど気になりません。
室内での撮影では明るいレンズの本領発揮。
ボディに搭載された手ブレ補正機能と相まって、ブレを気にせず撮影に集中できます。
シロガネヨシの柔らかそうな穂を本レンズはさらに柔らかく捉えました。
話題のロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」にも乗ってみました。
遠くまで見渡せる景色に興奮し写真を撮り始めたのですが、すれ違いざまに撮った対向ゴンドラの写真を見て驚きました。
ロープの目までしっかり捉えているのです。遠景はいかにもオールドレンズらしい描写なのに細部はしっかり解像しています。
オールドレンズとは言え、FマウントMFレンズの最後まで販売が続いたレンズはある意味最新レンズでもありますから、当然と言えば当然かもしれません。
桜木町駅側で展示されている帆船日本丸。
船自体の美しさもありますが、帆を張るための支柱やロープなど細かいパーツが沢山あるので、以前は機材テストを兼ねよく訪れていました。最近はご無沙汰していましたが、昔と変わらぬ姿に一安心です。
ここでも新旧の良さを合わせた描写を披露してくれました。F値を絞ったらもっと解像力もアップすると思いますが今回は開放だけで。絞ったカットはいずれ機会があれば紹介したいと思います。
50mm F1.2と言えば、「NIKKOR Z 50mm F1.2 S」が絞り開放からシャープに写り評判がかなり高いです。
AF機能などZ9の性能をフルに活かすなら最新レンズということになるのでしょが、たまにはこういう楽しみ方も良いのではないでしょうか。