昨今は「ミラーレス一眼」による動画撮影が主流となり、それまでの動画撮影において主流であった「ビデオカメラ」はそのシェアを奪われてしまいました。
しかし、「ビデオカメラ」には「ミラーレス一眼」にはないメリットが沢山あります。
今回は動画撮影においてビデオカメラを選択するメリットについてお伝えしたいと思います。
使用するボディは「Panasonic デジタル4Kビデオカメラ HC-X1500」
兄弟機として「HC-X2000」というハンドルユニットやBNC端子を搭載した通称「ディレクターカム」と呼ばれる機種もあります。
基本性能は同一となるので、本格的な映像制作用に使用できるビデオカメラと言えます。
今回の撮影設定は
記録フォーマット「1080-23.98p/422ALL-I 100M」
ガンマモード「CINE-LIKE V」
カラーグレーディングは行わず、撮って出しの素材を編集致しました。
それでは作例映像をご覧ください。
・内蔵NDの搭載
・動画撮影用のボタン配置
・電動ズーム用のシーソーボタン
・カバー範囲の広いズーム倍率
・強力な手振れ補正
などが挙げられます。
機種にもよりますが、ビデオカメラにはNDフィルターが内蔵されている場合が多いです。
ミラーレス一眼となると、ボディサイズが小さくなるため、NDを内蔵するのは難しくなります。
そのため、レンズ前のフィルターとして可変NDフィルターを使用する方が多いのが現状です。可変NDの場合、レンズチェンジの度にフィルターを付け替える必要が生じるので、撮影のテンポが遅くなってしまいがちです。内臓NDですと直感的に操作することができるので撮影のテンポを落とすことがありません。また、可変ではなく固定NDですので、一定の減光率になってはしまいますが、可変NDで生じがちな「色転び」や「X字状のムラ」は生じなくなるメリットがあります。
次に見ていくのはボタンの配置についてです。
ビデオカメラの場合スチルカメラとは名称が異なる場合があります。
上記の写真では「IRIS」や「GAIN」という言葉はスチルカメラには馴染みの少ない名称といえます。
それぞれ「IRIS」は「絞り」、「GAIN」は「ISO感度」の事を指します。
各種操作系が集中して配置されるボタン配置が多いので、必要な設定をすぐに切り替えることができます。
スチルカメラでいうところのカスタムボタン。これに既に動画撮影しやすい設定がされている状態と言えます。
ビデオカメラにはこのような通称「シーソーボタン」と呼ばれるボタンが設置されていることがあります。
これは電動ズーム機構を操作する専用のボタンで、T側が望遠へ、W側が広角へズームします。大き目なボタンで作られることがほとんどで、押し込む深さによってズームのスピードを変える事ができます。ゆっくりズームするにも、素早くズームするにもこのシーソーボタンを多用します。
ドキュメンタリーや単独でのライブ・イベント撮影など、ズームで画角を変更する間の画も使用したいケースではこのシーソーボタンが快適なズーム操作を約束してくれます。
本機にはライカディコマーレンズが搭載されており、光学ズームのみでも24倍という倍率を誇ります。
ワイド端が35mm判換算で25mmですので24倍では換算600mmとなります。
映像本編中でも上空を飛行する航空機からのズームバックカットがありました。
望遠端から広角端までズームバックしたカットです、焦点距離のカバー範囲の広さが分かります。
ミラーレス一眼においてはこの範囲を一本でカバーできるレンズは難しく、複数本を用意してカバーすることになります。センサーの小さいビデオカメラだからこそできる機能と言えます。
小さいセンサーの利点はまだまだあります。手振れ補正を強力にすることができる点です。
本編20秒くらいからのカットで、橋をバックにススキの穂が揺れているカットがあります。
これはかなりの望遠側で手持ち撮影しました。通常、望遠側の手持ちは手振れの補正が難しい条件となります。こと動画となると写真と違い連続の表現となるため、条件がさらに難しくなります。対策として「ジンバル」と呼ばれる補正装置を用いれば手ブレの対策ができますが、機材の総量が増えてしまいます。ビデオカメラであれば小型センサーであるおかげで手振れの補正もより強力となり、ジンバルや三脚を用いなくてもある程度の手振れは補正することができます。撮影の機動力が増すので、セッティング時間の短い現場や、移動の多い現場などで力を発揮します。
以上のように、ビデオカメラにはミラーレス一眼では難しい撮影条件にも柔軟に対応できる能力があります。
もちろん、今回の比較はビデオカメラとミラーレス一眼の間に優劣をつけるようなものではありません。
機材には必ず「適材適所」の考えがあります。
機動力や直感的な操作、様々な撮影条件に対応できるのがビデオカメラの得意な分野です。
ですが、小型センサーにはもちろんのことデメリットもあります。
受光面積の小ささにより、暗部のノイズ感が増える。ダイナミックレンジが狭まってしまう。
被写界深度を浅くしづらいので、広角でボケを活かして立体感を得づらい。
など、が挙げられます。
それぞれの機材の特徴を判断し、自身の撮影する対象に合わせて機材を選択することが、よりクリエイティブな表現をする近道だと思います。