「写真表現の可能性を広げる道具立て。」
SIGMAのパンフレットにはこう書かれていたことを思い出します。
2014年発売の「SIGMA dp1 Quattro」
操作性はじゃじゃ馬ながらFoveonセンサーの叩き出す画のインパクト、ボディの先鋭的なデザイン、専用設計のレンズ搭載で14mm,19mm,30mm,50mmと絶妙な焦点距離展開。
今回はその中でも、19mm(28mm)F2.8をチョイスしました。
しかも、LCDビューファインダーキットを使用したので、全体のサイズはもうおよそコンパクトとは言えない様な格好に。
でも、いいんです。
「この道具は可能性を広げてくれる。」
使う道具を選ぶ時には様々な理由をつけて選びます。
「あれがしたい、これも欲しい、それも捨てがたいな。」
でも、単純な動機ほど強いものはありません。
「このカメラを使ってみたい、新しい表現に触れてみたい。」
そんな純度100%の好奇心に突き動かされ、気がついたら撮影に出かけていました。
普段は、JPEG撮って出しにすることがほとんとなのですが、せっかくのFoveonなのでSPP(SIGMA Photo Pro)で現像することにしました。ティールアンドオレンジを色の基本にして、各カットごとに気分で色味を変えてみました。
少し見頃を過ぎてしまった河津桜ですが、個人的には満開よりも花と葉が混ざっている方が好きです。
この日は良く晴れた日で、気温も暖かく春の訪れを体で感じる1日でした。
一時間ほど歩き回ると少し汗ばむくらいの陽気です。
おかげで遠方の富士山まですっきりと見通すことができました。
目的地までの道中、木々の鬱蒼としたエリアを通りかかりました。試しにカメラを向けてみると細々とした葉のひとつひとつを解像していることに驚きました。「コンパクトカメラの出す画ではないな。」というのが正直な感想です。この描写を見てしまうと、なるほど、「このカメラの虜にされてしまう人がいるのも頷けるな。」と思ってしまいます。
細かい線の描写力、RAW現像時の発色の良さや、レンジの広さ。
やはり、SIGMAの作るカメラは独特であり、一味違うなと唸りました。
「写真表現の可能性を広げる道具立て。」
このカメラを使うと、自分が今まで表現してきたこと、その限界を超えて新たな領域へと誘ってくれるような気がします。使う人のことを一番に考えた道具作り。SIGMAのカメラからはそんな作り手のスピリットを感じます。
なぜか太い枝の分かれ目にみかんがおかれていました。
「これは撮らずにはいられない」と思い、早速カメラを向けました。
今回は16:9のアスペクト比で撮影しているので、少し映画風な画面を目指して、前ボケに葉を入れ込んでみました。換算28mm画角ですが、前ボケなどを積極的に取り入れてみると、画面に遠近感や空気感のようなものをより感じることができると思いました。
このカメラで撮った素材を現像している時間はとても楽しく、あっという間に数時間たってしまいました。普段は、撮って出しで、撮影時に決め込んだ画でしか写真を残していませんでした。ですが、今回dp1で撮影してみて、現像という新たな表現の可能性を広げられたと感じました。
「道具の持つポテンシャルに、使い手側が感化される」
こういった体験は稀だと思います。そんな貴重な経験をさせてくれるこのカメラは非常に素晴らしい道具であると思いました。
ただし、冒頭にじゃじゃ馬といった通りに、AF性能や、操作性といった面で癖が強くでると感じました。
ですが、「逆に使いこなして見せる」と思わせてくれるカメラでもありました。
次は、何mmのdpを持ち出そうかな。
そう思わずにはいられないのでした。