【SONY】動画を撮るならフルサイズ?それともAPS-C?
動画制作を行う際に、何を一番重視するか。これを考えた時に筆者の場合は被写体がどれだけ綺麗に写せているか、でしょうか。
特にポートレート動画においてはここはしっかり意識をして撮影に臨んでいます。ポートレート動画の主役はもちろん人物。この人物をどれだけ綺麗に撮れるかで作品のクオリティに直結するような気がします。
では動画を綺麗に撮るときはどういった機材を選ぶべきなのでしょうか。
言わずもがな、それ以外にも動画の構成であったりBGMとの親和性であったり、意図しない無駄な手ブレを抑えたり、露出が極端にならないように、など動画には気にかけなければならないポイントがたくさん存在します。
今回はその中でも、凄く単純に”綺麗に撮るために何を選べばいいか”を中心に考えていきたいと思います。
「綺麗」という凄くざっくりとした表現で書いてしまいました。「綺麗」という定義は十人十色で答えは各々違ってくると思いますが今回の内容で定義するのであれば「ノイズの量が少ない」もしくは「ノイズが目立たない」こととさせてください。
ポートレート動画であれば、肌の色味なんかは綺麗に見せるうえではこだわってシビアにやるべきポイントかと思います。しかし、大前提としてノイジーであると見せたい肌の部分にもノイズがかかってしまい、せっかく綺麗に色を出せてもザラっとしてしまい色味や質感が分かりづらくなってしまいますので、今回はノイズが少ないというのを綺麗の定義にしました。
さて、前置きが長くなってしまいましたがこちらの以前に筆者が撮影した二本の動画の切り抜きを用いて比較をしていきます。上の切り抜きが「α7SⅢ×SEL2470GM2」で下の切り抜きが「FX30×SEL15F14G or SEL55F18Z」となっております。
α7SⅢはフルサイズセンサーを持つ有効1210万画素の高感度特化のカメラで、FX30はAPS-C(Super35)センサーの有効2600万画素のセンサーを搭載しております。
撮影設定はどちらも設定は共通のXAVC S-I 4K/24p+S&Q/60p | 4:2:2 10bit | S-Gamut3 /S-Log3で撮影を行い、シャッタースピードはフレームレートの倍にて設定。基準感度は高感度側にて固定。撮影後は編集ソフト(Adobe Premiere PRO)にてカラーグレーディングを行いました。
まずα7SⅢで撮影された動画のカットを見ていきます。
最初に載せた切り抜きの写真同様でノイズがゼロという事はあり得ないのですが、全体的にノイジーな印象はなく肌の質感が非常に綺麗に表現出来ております。周辺環境は車の往来こそありはしますが、街灯のような目立つ大きな光源が無いシチュエーションでした。こういった環境だからこそでしょうか、フルサイズセンサー故の優れた高感度耐性を目の当たりにすることが出来ました。
そしてこちらが、FX30で撮影されたカットの1枚。
全体を通して見てもどちらもしっかりノイズが抑えられているのが分かると思います。しかし細かいところを重箱の隅をつつく様に見ていくとやはりAPS-Cセンサーの方には上記のカットのようにノイズの目立つカットが散見されます。特に序盤のストリーム周辺で撮影されたカットはあまり環境光の多い場所では無かったのでどうしても暗くなっています。加えて上記のカットに関しては60fpsで撮っていたのでシャッタースピードが1/125の設定でアンダー気味に撮影していたのでそれもノイズの一因であると思います。
今回は10bitと色の情報量の多いデータで記録・編集しているため、編集への耐性はそれなりにあるのである程度強気に増感・減感処理を行っても破綻する事はありません。しかしS-Logの特性上明るめに撮る方が階調が豊かになるので、出来れば+0.7~+1.0のオーバー露出で撮りたいというのが正直なところです。
夜間の撮影で露光量をS-Log3の理想とする+0.7~+1.0の値まで持っていくのは難しいシチュエーションが多かったのは事実です。
しかし、α7SⅢのようなフルサイズの一部のモデルは基準感度のISO12800にすることで理想の露光量に近付けることが出来ました。FX30は基準感度の高感度側がISO2500なので、こういったシチュエーションでは理想の値には持っていくことが出来ずアンダーでの記録を余儀なくされます。
アンダーに出てしまうシチュエーションですと編集時に、増感処理を編集ソフト上で行うのですがその時にどうしても少しザラっと映像にノイズが乗ってしまいます。
こちらはFX30にて撮影されたカットです。
先程の寄りの画と比較をすると、明らかにノイズが少ないのが分かるかと思います。こういった環境光の多いシチュエーションであればAPS-Cセンサーでも充分に基準感度の範囲でS-Log3の理想とする+0.7~+1.0の値に近付けることが出来ました。加えてこのカットは24fpsでの撮影だったのでシャッタースピードが1/48の設定にして撮影を行っておりますので、なおのこと露光量が増えノイズを抑えているカットになりました。
こちらはα7SⅢにて撮影したカットになります。
このカットは、S-Log3が理想とする+0.7~+1.0以上オーバーになるシチュエーションで撮影されたカットです。真横のショーウィンドウから強烈な光が当たっており撮影中は肌が一部白飛びをしていたのですが、編集にて減感処理を行い白飛びを戻すような形で編集しました。
増感処理を施している他のカットと比較すると目に見えてノイズが少ないのが分かります。
いかがでしょうか。
今回はポートレート動画を用いて、フルサイズセンサーのモデルとAPS-Cセンサーのモデルでノイズの部分に特化して比較を行ってきました。
当たり前ではありますがカメラごとにもともと持っている画素や基準感度の違いにより差はあるとは思いますが、やはりセンサーサイズの大きいフルサイズの方が映像のノイズを抑えて撮影を行う事が出来ます。そもそも比較してどうこう言うのが間違っているかもしれません。
では、すべてのシチュエーションにおいてフルサイズが優れているかと言われたらそうではありません。APS-Cセンサーを用いて撮影を行った際に感じたのはバッテリーの持ちの長さです。今回の撮影において両方とも実撮影時間は同じくらいでしたが、使用したバッテリーの数はフルサイズがおよそ3本、APS-Cは2本(厳密には1、2本くらい)
このバッテリーライフの差は撮影時間が増えていくほど少しずつ響いてくるポイントだと思います。特に長回しするようなシチュエーションであれば、APS-Cセンサーモデルの方が1本のバッテリーで撮れる時間は増えるので優れていると思います。また、夜間においてはノイズが出やすく画質に差が出やすいですが適切に露光量を調整したカットであればAPS-Cセンサーモデルでもしっかりノイズを抑制できるので、日中であれば特に極端な画質の差は感じないと思います。
また、使用するレンズもかなり軽くできるのもAPS-Cセンサーモデルの魅力です。上記動画ではレンズ2本持ち出しているのですが、どちらも小型なので携帯するうえで不便さを感じませんでした。
結論を書くとすれば、撮影されるシチュエーションにおいて撮影時間を優先するのであればAPS-C(熱への耐性も高いです)、シチュエーションに左右されず映像のクオリティを優先するのであればフルサイズといったところでしょうか。
カット単位で見ていくとノイズ感の違いは分かるかもしれませんが動画として流れている映像として見るとAPS-Cセンサーモデルもそこまでノイズが気にならないと思います。
最後に、もし今回この記事を読んだ方で動画機を検討している方がいましたら少しでも機材選びの参考になれば幸いです。ありがとうございました。
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