【SONY】母艦機日記 Hugo Meyer Kino Plasmat 25mm F1.5
これはSONY α7RⅢを軽量性だとかAFだとかを無視して古いレンズの母艦機として運用している筆者の日記です。
母艦機とは本来燃料や航空機などを輸送する船のことを指す言葉ですが、カメラボディに対してこの言葉を使う場合は「レンズを使うためのボディ」という少々ややこしい意味を持ちます。
フランジバックの問題でレフ機ではアダプターがなく楽しめなかったあのレンズもこのレンズも、ミラーレスならすべて楽しめるというわけです。
大昔の聞いたことがないレンズから一度は耳にしたことがあるレンズまで、α7RⅢに付けて楽しんでいきたいと思います。
今回使用したのはMeyer社のKino Plasmat。
近年ではバブルボケのトリオプランで名前を聞くことが増えてきたMeyer社ですが、戦前・戦後に分けて考えるのが一般的です。
Hugo Meyer銘で戦前に製作されたPlasmatシリーズを初めとした(時代を勘案すれば)超高性能な玉は超高価、MeyerOptik銘で製作された戦後の現在市場にあふれているトリオプラン等は(比較的)低品質で低価格というような分け方です。
少し意地悪な言い回しをしましたが、レンズ名にKinoとつく通り戦前のレンズは主に映画用に作成されています。
かつてのシネレンズは非常に高性能、非常に高価というのが定石ですが、それに比べOptikがついた戦後のMeyerは一般写真用のレンズとして作られた為(戦前のモデルと比較した時に)低品質だと言われることが多いという訳です。
筆者は激しく癖のある描写からゴミプランとすら揶揄される同社のドミプランを愛用していますが、周辺の流れも含めてこれはこれで楽しい物だと割り切って使っています。
少し話が逸れてしまいました。そんな非常に長い歴史を持つMeyerのPlasmatシリーズにはいくつものバリエーションがあります。
焦点距離・マウントで無数と言っても良いほどのバリエーションがあり、僅か数本しか製作されていない物もあります。
流石100年近く前のレンズ、謎に包まれた部分も多くの人々の心をつかんで離しません。
今回はそんな謎多きKino Plasmat 25mm(1inch) F1.5を使用しました。戦前のシネレンズがどんな写りをしてくれるのか、ぜひご覧ください。
イメージサークル確認用にフルサイズで一枚撮ってみました。
本来の用途である16mmフィルムのイメージサークル内だけは解像度が非常に高く、そこからは一気に崩れていく印象があります。
APS-Cでも周辺が若干ケラレる為、マイクロフォーサーズ等で楽しむのが一般的なようです。
本投稿の写真は上の一枚以外全てAPS-Cモードにクロップしてあります。ご了承ください。
まずは一枚。後ろボケが特徴的なレンズだという前情報は聞いていましたがこれはこれは。
いつもより多めに回しております!と言わんばかりのグルグルボケです。
中央部以外にピントを合わせても全体的にぽやっとした写真になってしまう為、開放の場合は中央にピントを置くのがおすすめです。
最大F値11まで絞り込んでみました。
周辺の甘さは残るものの、中央部の解像度がメキメキと上がっているのが分かっていただけるかと思います。
カラーネガなどなかった時代のレンズにも関わらず色乗りが良く、少し色が薄めなSONYとの組み合わせると良い色が出てくれます。
手元に面白いレンズがあるとついつい壁を撮ってしまいます。
平面性の高い物を撮るとレンズのクセが出やすいので、早めに壁を撮ってレンズの性質を理解してあげるようにしています。
中心に向かって強調線でも出ているかのような周辺部の収差、そしてしっかりとしたピントピークの上から滲みをふりかけたような描写は特有のものです。
お気に入りのカフェへ。
調度品の質が良く、珈琲も美味しいのでドライブついでについ寄ってしまいます。
品が良いモノには品が良いレンズを。
シャドーの中にじわりと滲むような描写が非常に美しいです。
最近、比較的解像度の高いオールドレンズを高画素機に付けると描写が絵画的になる事に気が付きました。
偶々そういった特性のレンズを連続で選んでしまっている可能性もありますが、過去にFUJIFILM GFX50S Ⅱでも同様に感じた事があります。
ハイライトの飛び方がそう感じさせるのか、色の出方がそう感じさせるのか、周辺の甘さがそう感じさせるのか。
母艦機日記を通して自分なりの答えを探し出せればと思います。
今回は戦前のシネレンズ、Hugo Meyer Kino Plasmat 25mm F1.5と共にお送りしました。
こってりとした色の乗り方や中央部の解像度と周辺部の流れが楽しい一本です。
APS-Cフォーマットで周辺の光量落ちを楽しんで良し、マイクロフォーサーズで中央部の高解像を楽しんで良し、様々な楽しみ方が出来るのも良いですね。
見かけた際は是非お手に取ってみてください。