【Voigtlander】レンズの衣替え、ついでにボディも。
少し前の話になりますが、システムを一式衣替えしました。
以前は「Canon EOS 7D Mark II」とズームレンズ4本、単焦点レンズを1本持っていました。
しかし、フルサイズデビューをしたかったのと、何より、あのレンズを使いたいがためにまるっと乗り換えたのです。
そのレンズこそ「Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」です。
SONY Eマウントのレンズである為、ボディも「SONY α7RⅢ」に買い換えました。
特にマクロ撮影をしたい、という欲は無かったのですが、写る色や描写力に惚れ込んでの“衣替え”でした。
このコンビネーションで作り出す写真は、言わずもがな。
回転角の長いヘリコイドでじわじわと追い込むピントが心地よいです。
いつもであれば近接での撮影はあまり行わないのですが、せっかくなので今回は被写体にぐっと寄った写真もお届けします。
錆はどうしてこうも人を魅了するのでしょうか。
風景撮影のために山に持ち込んだのですが、つい「寄れるんだった」と思い出して撮影してしまいます。
ピントヘリコイドを回した分だけ、被写界深度が目に見えて前後する様は押し寄せては返す波のようです。
路の端に連なった鎖のように、中空に浮いたようなものを写すとき、背景がグラデーションのある色の壁のようになり、
被写体だけが本当に浮いているように見えるのがなんとも絵画的でじっと眺めてしまいます。
改めてマクロレンズとしての性能を発揮させると、これもまた面白く感じてきます。
近接撮影をあまりしないとはいえ、仮に最短がもっと遠ければここまでこのレンズを好きにはなっていなかったでしょう。
さて、マクロ撮影のストックは多くないので風景撮影の作例紹介に移りましょう。
65㎜という焦点距離もお気に入りです。
標準レンズの焦点距離はは35㎜か50㎜、と、そう言われがちですが、私にとっての標準は50㎜だと少し広く感じます。
見えている景色のごく一部だけを切り取って作品にするのが好きだからかもしれません。
ちょっと離れた被写体でも、65㎜かつ、しっかりと描き出す表現力を持ってすれば「遠いから写しにくい」とは感じません。
夏の美ヶ原では、道から少し外れた場所にダケカンバとマルバダケブキが良い組み合わせで群生していました。
少しトリミングしても大丈夫、という安心感のおかげで離れていても撮影しようと思えます。
また、合焦面の質感ををこれでもかと再現する能力には、いつまで経っても驚かされます。
霧に覆われてしっとりとした空気の中、コオニユリの花弁、葉のいずれにも目視では水滴は確認できません。
にもかかわらず、「霧の中」に存在している感、を写真に残すことが出来ました。
ただ色が白っぽくくすんでいるだけでは霧とも煙とも、はたまたレンズの曇りとも見えてしまいそうですが、
湿度をしっとりと感じる描写が出来るからこそ霧の中の写真だと認識できるのでしょう。
森の中で足元を見降ろせば、私がこのレンズの写りを調べていた時の作例のような、そんな風景に出会いました。
少しコントラストを上げて、色も緑をぐっと強めて撮ってみました。
苔の柔らかく細かい質感、落ち葉の葉脈の線や艶めき、地面を写したはずなのに感じる立体感。
面としてとらえてしまいがちな僅かな立体でさえも際立たせてくれます。
およそ全天とは言い難い65㎜の画角で、つい空を撮ってしまうのが私の癖。
大抵は旅の途中でいい空を見つけた時に撮るのですが、雲以外の被写体を入れないがためにどこで撮ったのやら分からなくなります。
この写真に写っている瞬間の空はフィルムでも2枚、デジタルで1枚撮ったような気がします。相当なお気に入りだったようで。
いつ撮った空なのか、日付を確認するためにパソコンで情報を確認すると、今は手元にないレンズの名前も出てきます。
16㎜や30㎜、やはり広いレンズで撮りがちだったようですね。
けれど遠い遠い空は、好きなところだけをマクロレンズでぽこっと抜き取るのもまた、乙なものなのです。
それではまた。