【Voigtlander】VMレンズと歩く~SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical III & APO-LANTHAR 50mm F3.5 Type I~
レンジファインダー用レンズでもいきなりライカレンズは…とお思いの方に、
価格からは想像できない写りや独特の描写を見せる事で人気の高いVoigtlanderのレンズもおすすめです。
今回はLeica M11-Pと共に、新旧2本のVMレンズで撮影してみました。
1本目は優秀な超広角レンズの定番モデル。
SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical III VM
ライカMシリーズ互換のVMマウントとSONYのEマウントでも販売されているロングセラーモデル。
レンズ構成も同じでEマウントが最短撮影距離0.3mとVMより少し寄れる程度の違いです。
Voigtlanderの超広角は3種類。
15mmの本レンズに加えて12mmのULTRA WIDE-HELIAR、10mmのHELIAR HYPER WIDEというラインナップ。
今回の15mmはこの3兄弟の中で一番画角が狭く、扱いやすいです。
開放で撮影をしていましたが線も真っすぐと伸び、歪みも殆ど見られません。
分かりやすく異世界のような写りをする超広角レンズは、手にしてみると初回は楽しくて
何枚も撮ってしまいますが…「何枚か撮り続けてると飽きてくる」という人も多いはず。
筆者も基本は超広角レンズは殆ど使用した事がありませんでした。
ただ現代ではスマートフォンで撮影する時に「広角モード」の設定にすると約14mmほど。
昔に比べるとこの画角に意外と慣れ親しんでいたおかげであまり違和感は感じません。
歪みも殆ど無い為、このように真正面から大きなものを撮るのも良し。
M11-PやM11の画はややマゼンタや赤に被る傾向が見られ、調整に少し苦労があります。
実際にこのレンズ自体も目を凝らすとM11クラスの高画素センサーには追従できていないのが
分かります。開放で撮影するとやはり年代なりの傾向があるものの、ボディの画作りのクセと
相まってなんだかポジフィルムで撮影したような印象です。
「色々なものを組み立てていき撮影する」という意味で場所によってはこんな撮り方も。
都市を写すには15mmという画角は思っていた以上に馴染みやすい焦点距離にも感じます。
ボディのファインダー内で画角は見えませんが、距離計連動のため、ピントを合わせてから背面の液晶で確認して撮影する
「作法」が必要です。勿論ビゾフレックス2等のEVFをお持ちの方ならそちらで確認しながら撮影できます。
なんだか撮影しながら「子どもの頃に空に手を伸ばしていた」時の事を思いだします。
子どもの時に遠くのものへ手を伸ばす時に「こんなに遠いんだな」と目に見えていたようなイメージが
そのままこの画角だったのではないかと、なんだか懐かしいような不思議な感情です。
お次はこちら、8/29発売の最新モデルAPO-LANTHAR 50mm F3.5 VMです。
まずこのデザインを見て「何か」を感じた方はなかなかのレンズ通ではないでしょうか。
“1950年代に登場したレンジファインダー用レンズを彷彿させる沈胴風デザイン”とはありますが
よく見るとこのレンズ、ニコンS/ライカL39マウントのMicro Nikkor 5cm F3.5によく似ています。
最短撮影距離が0.45mなのも同レンズと同じ。リスペクトに溢れた仕様です。
レンズ構成は全く異なり、6群8枚。異常部分分散ガラスを4枚使用しているという現代仕様。
まずこの写り。なんと開放での撮影。
データを見た時に流石にこれは驚きました。F2のAPO-LANTHARもかなりの写りですが、
F3.5という余裕のある設計に変化し、アポクロマート設計の恩恵を得たこのレンズは
令和に生まれた旧Micro Nikkor 5cmと言っても過言ではありません。
同じく開放、最短撮影距離での撮影です。
ボケの良さや立体感も良く、解像力だけでは語れない何かを持っているレンズです。
同じく開放、最短撮影距離での撮影。
解像力の高さから僅かな動きですぐにピントが動いてしまいます。
ここは先代のF2モデルと同様です。ボケにはクセがなく、F3.5ながら綺麗なボケ味です。
こちらも同様に開放で最短撮影距離での1枚。後ボケも綺麗なものです。
アポクロマート設計によりハイライトに収差が現れそうなこの場面でも全く見られません。
一見何を撮っているのか、本来なら分かりにくいところです。
飛んでいた鳥の群れにピントを置きました。主題もここまで解像力が高いとしっかりと見えるものです。
M11-Pのデジタルズーム機能を使ってみました。こちらは1.8倍。
約90mm相当にクロップしています。クロップなのでボケ感は50mmのまま。
しかし6,000万画素のM11-Pのセンサーなら十分に使える機能。
人によってはレンズ1本をこの機能でカバーする方もいる程、元々の性能の高さを物語ります。
またここでも少しレンズの力を試してみます。
撮影から戻ってきた時に見せたら「意地悪だなあ」と苦笑いされてしまった1枚。
しかし解像力は圧倒的です。10万円しない価格でこんなに優秀なレンズが手に入ってしまうのかと思うと、
当時CarlZeissのOtusと対抗して現れたSigma Art 50mm F1.4の事を想起させます。
日本のレンズメーカーの強い意志を使ってみると感じられる逸品です。
1本目のレンズで撮影したものを別の角度から撮影してみました。
レンズや場所によって同じものでも見方が少し変わります。開放で撮影しているおかげか、
草葉にジャギー等も無く立体感が上手く表現できていると思います。実は撮影中全て開放にしており、
個人的には意図が無い限りは開放で使っていく事にこのレンズの面白さや魅力が詰まっているとも言えます。
状況によってはこのように周辺減光がやや大きくなります。
減光部分のグラデーションはVoigtlanderのレンズによく見られる味の一つ。
あまりにレンズの出来がよく、今回はスナップというよりレンズ自体の能力を確かめたい欲求が湧いてきました。
しっかり応えてくれるAPO-LANTHAR 50mm F3.5は個人的にも同社の製品では屈指の出来と感じます。
50mmレンズのバリエーションが非常に多い事で有名なVMレンズにまた悩ましい選択肢が…
なんだかジオラマのように見えて撮影した1枚。このデータを見た時もレンズの性能の高さに驚きました。
破綻が殆ど無く、細かい線も乱れずにしっかりと写し撮ってくれます。
F3.5=所謂”サンハン”レンズというのは歴史を見ても優れたものが多いのは知っている方も多いはず。
LeicaにはElmarやSummaron、NikonのMicro Nikkor、OlympusのOM Auto W3.5シリーズ、
VoigtlanderのHELIARに続きサンハンレンズの新しい選択肢がここに現れました。
「暗い」の一言で片づけてしまうには勿体無い。むしろ現代のデジタル機であれば、F3.5という絞り値は
ボケを求めない限りは普段使いができる位の性能を今は各社持ち合わせています。
このAPO-LANTHAR 50mm F3.5は沈胴型デザインのTypeI、そして固定鏡胴型のTypeIIがあります。
デザインはお好みで。今回使用したのはTypeIのツートンモデル。重量は250gとなっており、
もう一つのマットブラックペイントはなんと150gという軽量さを実現しています。TypeIIもシルバーは250g、
ブラックは175g。TypeIIはより最短撮影距離が短くなり0.35mまで寄る事が可能です。
お値段はおよそ10万円、一般的な価値観からすれば「10万円!?」とはなるものの、
ここまで高性能なレンズを10万円で手に入れることができる事実は本当に嬉しいものです。
APO-LANTHARに限らず15mmという超広角レンズになるSUPER WIDE-HELIARも10万以下の価格にして
歪みを全く感じさせない写りとコンパクトな鏡胴は大きな魅力です。ちょっと迷っていたあなたも、
VMレンズの世界に踏み入れてみて下さい!