ぼくらのズミクロン日記Vol.6 ~知的で、エレガントなメガネっ子~
この連載は、マップカメラライカブティックのスタッフそれぞれがズミクロンへの愛を語るものです。
1954年に発売され、その性能の高さと描写力で世界のレンズ設計の基準を引き上げたとすら言われるLeicaレンズのレジェンド、ズミクロン。
今ではライカMマウント以外にも、Rマウント、Lマウント、Sマウント等様々なズミクロンが存在します。
十人十色ならぬ十本十個性の色々なズミクロンに対し、様々な角度でスポットを当てていきたいと思います。
今回ご紹介するのは、DRズミクロンM50mmF2 です。
1953年に登場、その解像力の高さから、戦後のライカレンズを代表する銘玉の評価を得たズミクロン50mmF2。
M3の発売と同時にMマウントになり、その後固定鏡胴化。
1956年レンジファインダーの機構上難しいとされていた近接撮影を可能にしたモデルとして発売されたのが、このDRズミクロンM50mmです。
通常は従来のズミクロン50mmと同様、1m~∞の範囲で撮影が可能ですが、メガネ(近接アタッチメント)を取り付けることでロックが解除され、
約48~90cmの範囲でヘリコイドが稼働し、近接撮影が可能になります。
2つの撮影範囲を持つことが「DR(デュアルレンジ)」の名称の由来になっています。
メガネを外した状態。 1m~∞の範囲でヘリコイドが動く。
メガネを装着した状態。 ピンをずらし、48~90cmの範囲でヘリコイドが稼働可能になる。
とっても凝った仕掛けで、それだけでも所有する喜びが得られます。
なお、距離計連動部分の形状上、残念ながらデジタルのMボディでは近接撮影が出来ません。
実際に2つの最短距離で撮影すると、こんな感じに。
通常撮影の最短1m。
近接撮影時の最短約48cm。
レンジファインダーでこれだけ寄れれば、撮影の幅もぐっと広がります。
その時の被写体との距離感は、こんな感じ。
手を伸ばせば届きます。
もう1枚、メガネ無しの最短1m開放F2。
現代のレンズのような滑らかなボケでなく、いかにもオールドレンズらしく二線ボケも見受けられますが、
それが逆にレンズの味になっています。
メガネ付き近接約48cm。 近接の方がボケが素直か。
オールドレンズは本来、開放より2,3段絞ったところで真価を発揮するものが多いです。
というわけで、日中、少し絞っての撮影になると、なんともシャープで立体感のある描写に。
ちょっと古風な雰囲気を持った優等生なレンズです。
喩えるならクラスの学級委員長タイプ?
とはいえ、決して冷たく厳しい印象ではなく、自然と知性を感じさせる優雅な物腰。
休み時間や放課後は素顔で過ごし、勉強の時だけ細いフレームの眼鏡をちょこんと掛け、
清楚で知的な雰囲気に…
こんな子と一緒なら、普段は見過ごしてしまっていたような、道端にひっそり咲く花にも目をとめ、
「きれいだね… こんな素敵な発見も君がいたからだよ!」なんて…
…貴方もDRズミクロンとの素敵なデート、いかがですか?!
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