【マップカメラコレクション】ステレオカメラ TDC Stereo Vivid ステレオ ビビッド
最近、映画「アバター」のヒットや3Dテレビの開発等で立体画像に脚光が集まっている。
赤と青のメガネをかけて観る方式を「アナグリフ」といい、既に150年程の歴史があるというので驚きである。
私の3D初体験もこの方式だった。
マイケルジャクソンの「キャプテンEO(イーオー)」。
1987年のTDLである。
天井からぶら下がってくる怖いお姉さんや楽器に変形するロボットがまさに目の前に現れたのである。
その時買った記念のテレホンカード(笑)は今も大切にしまってある。
いま開発中という3Dテレビではメガネにシャッターが組込まれテレビ側と同期しながら1秒間に120コマを表示させるという。
別々の画像を左右60コマずつ見せることで高画質が実現するらしい。
家庭のハイビジョンテレビが3Dになることで立体鑑賞はいよいよメジャーになるのだろうか。
写真の世界では幾度のブームはありながら広く浸透したり、スタンダードになったりと呼べるようなものは残念ながらなかった。
詳しくはストロベリー氏の「極私的カメラうんちく」もご一読を。
90年代初めに赤瀬川原平氏の「二つ目の哲学」出版され、ステレオカメラブームが起こった。
この本で著者がステレオカメラを意識し始めた頃の気持ちや新たな立体体験をしていく過程が克明に描かれている。
こちらはカメラに詳しくない方でも楽しめる内容になっていてお薦めだ。
今回ご紹介するのはステレオカメラ TDC 「Stereo Vivid(ステレオ ビビッド)」。
TDCとは「Three Dimension Co.」の略で訳すと三次元会社。
1950年代Bell&Howell(ベルハウエル)社から独立した会社でその名の通り3Dカメラを専門で作っていたと思われる。
1920~1960年頃までアメリカで何回かに渡ってステレオブームが起こっている。
その時代を代表的するカメラがデビッドホワイト社のステレオリアリストだ。
35mmフィルムを使用したH24×W23mmのフォーマットに他社も追従した。
いわゆる「リアリスト判(サイズ)」と呼ばれるカメラ達である。
ステレオビビッドはその中のひとつ。
1950年代中頃の製造だと思われるが詳細は不明。
ボディの底面にフィルムの装填方法がプリントされていてCHICAGO,U.S.Aと書かれている。
ボディはアルミをプレスした成型。
まるみのあるボディで、各ダイアルがカメラ上部に密集しメカニカル感が高い。
ボディ上面の絞りダイヤルとシャッタースピードダイヤルがのこぎりの刃のような形をしているのがこのカメラの特徴だ。
レンズは35mmF3.5のTRIDARというレンズが2つ。
レンズの間隔は65mm程で、これは人間の両目の間隔と同じくらい。
ピント合わせはバックフォーカスタイプ。
右手ひとさし指でフォーカシングダイアルを回し、カメラ内部をフィルムごと前後させる。
絞りはF3.5~16までの実絞り。
シャッターはギロチン式。
1/10~1/100の大陸式表記で現代では高速側に足りないので、ピーカン時に高感度フィルムは使えない。
ボディー上面にシャッターダイアルと絞りダイアルに連動して円形の文字盤が回転する仕組みになっている。
この文字盤は露出の目安表で、矢印に「BRIGHT(快晴)」「CLOUDY(くもり)」等の天候を合わせるとシャッターと絞りの組合せが決まる。
機能的で合理的なこういうパーツがカメラのデザインを決めているというのはすばらしい。
モノクロ(写真)をやっているとモノクロの視線になり、見るものすべてグレーの階調に置換えられる。
なんていうことをよく言われるが、このステレオカメラも持ち歩くと視線が立体を意識しはじめるのだ。
もともと私たちは立体でもの見ているのであたりまえの話なのだが…。
普段私たちは立体でものを見ているのに、そういう感覚が実感としてない。
ステレオカメラはその空気のような感覚を呼び起こしてくれるのである。
今回ステレオ写真の鑑賞法等は割愛させて頂く。
専用ビュアーでのスライド鑑賞。
プリントでの「平行法」「交差法」による裸眼立体視。
などなど、楽しみ方は色々あるのでとても書ききれない。
今年は3D元年と言われるらしいが、半世紀も前に立体画像をこのクオリティで撮影出来ていたことに驚くのである。
┌【作例1】────────────────────────────────
・交差法
・平行法
┌【作例2】────────────────────────────────
・交差法
・平行法
┌【作例3】────────────────────────────────
・平行法
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