【マップカメラ情報】ホホエミの島々
「島々」長野陽一 / リトル・モア 2004/06 ¥2,310 (税込)
「シマノホホエミ」長野陽一 / フォイル 2008/10 ¥1,890 (税込)
私たちが今居る、この日本という国。
街を歩いていて、和服を着ている人を時折しか見かけないように、わが国は押し寄せる異国の文化に染まり、またそれを巧みに利用して発展してきた歴史を持ちます。
しかし、太古の昔から変わっていないこと、変わりようがないこともあります。
その最大のものが、ものすごく当たり前のことですが、日本が島国であるという国土的特徴です。
交通が発達した今、多くの島々には橋が架かり、空港ができ、インターネットも開通したかもしれません。
しかし、本土(と呼ばれるところ)から、陸ではなく海を挟んで離れているということの意味は、いまだ想像以上に大きいものです。
この二冊の写真集を通して長野陽一さんが撮ったのは、日本の島嶼に暮らす子供たちや若者たちのポートレートです。
使われたカメラはペンタックス67だそうで、中判の豊かな写りは、亜熱帯の島の草いきれや、北の島の刺すように澄んだ空気までもを感じさせてくれますが、それら遠い島と島の写真が、写真集では隣同士に並んでいたりします。
…遠い?
真っ青な海も、真っ白な雪も、どちらも我が日本という小さな島国の光景であるということにはっとします。
日本がいかに粉々に粉砕された「島」で構成された国であるか。
ばらばらになりそうなほど特色濃いこれらの写真を結びつけているのが、メインテーマである、島に暮らす若者たちの姿です。
風景や文化と同様、島が変われば、こんなにも違うのかと思うほどに若者の顔も変わる。
きわめて流行に染まりやすい年代にありながら、彼らの中にとてもカラフルな「島々」が息づいているかのようです。
その表情を見ていると、「島々」というものが決して僻地などではなく、むしろ個々それぞれ中心地であるのだとすら思えてきます。
色彩も形状も豊かな日本の島々。
日本を旅するということは、すなわち島々を旅するということだと教えてくれる写真集です。