【マップカメラ鉄道倶楽部RailMap】中央線の旧トンネルを歩く
「青春18きっぷ」を使っての、日帰り撮影小旅行。
2回目の今回は中央本線の甲斐大和~勝沼ぶどう郷間にある大日影トンネル(山梨県甲州市)の旧線跡を歩いて
きました。
まずは、新宿から中央線快速電車に乗って高尾へ。
日中、中央本線を一気に下ることができるのは特急列車の「あずさ」と「かいじ」のみ。
青春18きっぷでは特急列車が使用できないため、東京方面から中央本線を進むには立川か高尾で一旦乗り換える
必要があります。
高尾駅に降り立つと偶然にも目の前に鮮やかなオレンジ色の201系が停まっていました。
高尾駅に停まる中央線201系
もうすぐ中央線から消えると言われ続けてきた201系。何だかんだ言ってもまだしぶとく残っていますが、先日
青梅線から四季彩列車が消え、本当に残り僅かとなってしまいました。
あと何回お目にかかるか分からないので、高尾駅の名物でもある天狗の石像と一緒に撮っておきます。
高尾駅の天狗と201系
高尾から先は中央本線の難所の峠越え。長いトンネルと勾配が続きます。
目的地の「勝沼ぶどう郷」駅までは高尾駅から12駅ですが、特急列車の合間をぬってゆっくりと進むので1時間
以上かかります。しかも特急列車の通過待ちを繰り返しながら。
通過待ちの度に10分近く停車するので、ホームに降りて通過列車を撮影する余裕もあります。(甲斐大和駅にて)
ようやく目的地の「勝沼ぶどう郷」駅に到着。駅名どおり、四方をぶどう畑に囲まれた駅です。
ホームから望むぶどう畑。
勝沼ぶどう郷駅ホーム(写真左)と勝沼ぶどう郷駅舎(写真右)
駅舎の前には東京からの距離を示すキロポストが置かれています。なんとぞろ目の111。
勝沼は明治時代からワインの醸造が盛んに行われ、現在でも駅周辺にはたくさんのワイナリーが点在しています。
勝沼ぶどう郷駅(平成5年に改称、以前は勝沼駅)もワインを東京方面へ出荷する人たちの請願で開業したそうです。
お楽しみのワインは後にして、まずはトンネルの旧線跡へ向かいます。
道の入口では早速、勾配線区用のEF64形電気機関車がお出迎え。
静態保存のEF64形電気機関車
かつて中央本線を中心に活躍していた18号機は現役引退からまだ3年程しか経っておらず、屋外展示にも関わらず
かなり綺麗な状態で保存されていました。
勝沼周辺も勾配が厳しい区間です。勝沼駅も開業から中央本線が複線化された昭和43年まではスイッチバック駅
として作られていたそうで、トンネルに向かう途中には旧ホーム跡(写真左)やスイッチバック線の橋脚跡(写
真右)を見る事ができました。
旧ホーム脇の階段を昇り、現在の線路脇に出ると大日影トンネルの入口です。
新トンネルから飛び出す特急かいじ号
現在の列車が使用している新大日影第二トンネルの出口と並んで口を開けているものの、造られた時代背景から
同じトンネルでも大分イメージが異なることが分かります。
新大日影第二トンネルと大日影トンネル遊歩道(写真左) 大日影トンネル遊歩道の入口(写真右)
旧大日影トンネルは明治36年に中央本線のトンネルとして開業しました。
全長1367.8mのトンネルは英国式と呼ばれるレンガを一段ごとに縦と横を交互に積み重ねた工法で造られています。
時間短縮のため新たに掘られた新トンネルの開通に伴い、平成9年に廃線されるまで94年間、多くの乗客と荷物が
このトンネルを通り過ぎてきたことになります。
現在は鉄道遺産として整備され、線路を残した遊歩道として見学することができます。
中は想像以上に暗いのですが、トンネルは一直線で入った瞬間から出口の灯りが見えているので、怖いという
感覚はありません。また途中、保線作業待避用の横穴がいくつかあり、それぞれに歴史を紹介する看板の掲示や
ベンチが設けられているので自分達のペースで進む事ができます。
ただ至る所から涌き水が出ているため、足下に注意が必要です。水と光があれば…
レンガの隙間から植物が育ちます(写真右)。最近のコンクリートのトンネルではとても考えられませんね。
よく見ると天井部や壁面には煤が付着しており、蒸気機関車が走っていた時代の名残も感じさせます。
また鉄道標識もそのまま残されており、ここが東京から109.5kmで25‰の勾配であることが分かります。
トンネルは山中にある深沢川にぶつかったところで出口を迎えます。
川を渡った奥には時を同じくして開業し廃線となった旧深沢トンネルが続きます。
深沢川に架かる橋と深沢トンネル入口 ワインカーヴ案内所(ワインカーヴ駅舎)
旧深沢トンネルは残念ながら遊歩道化されていないので先に進むことはできませんが、こちらは「勝沼トンネル
ワインカーヴ」として別の役目を担っています。
ワインカーヴとは貯蔵庫の事。トンネル内の涼しい気温(年間6~14℃)と適度な湿度(45~65%)がワインの
成熟に最適な環境であることから、地元のワイナリーや個人オーナーの大切なワインを保管しています。
側にある案内所にお願いして内部を見せてもらいました。
旧深沢トンネルは全長1105.7mで、ほぼ旧大日影トンネルと同じ大きさがあります。
内部には720mlのワインボトルが300本収納可能なラックが322台設置されており、手前200mが個人用、
奥900mがワイナリー各社用となっています。使用料は月額2500円との事ですが現在70人以上の方が空きを
待っている状態だそうです。
ワインカーヴの内部
8月の猛暑の中、トンネル内は14℃(写真左)。涼しいをとおり越して寒い位です。
冷えすぎてしまった身体を温めるため、深沢川を渡る列車を撮影しながら、駅へ戻ります。
深沢川を渡る中央本線下列車
それでは、お楽しみのワイナリーへ。
勝沼ぶどう郷駅の正面にある小高い丘の上に「ぶどうの丘」と書かれた建物が見えます。
ワインカーヴや温泉、レストランを併設する観光施設との事。1件1件ワイン工場を廻っても良いのですが、ここ
なら勝沼のワインが一通り楽しめるそうなので、今回は「ぶどうの丘」へ向かう事にします。
見晴らしの良い丘に建てられた施設の地下には審査会をパスした約180種類のワインが集められています。
1,100円の試飲用容器を購入すればこれらを自由に試飲することができます。では、さっそく…。
中央の樽の上に置かれたのが試飲用のワイン。1,100円の元を取るため片っ端から味見を。
飲み過ぎ!と怒られそうですが、お酒が飲めるというのが自動車では味わえない鉄道の旅の楽しみの一つでもあり
ますから…。
もう少し経てば、葡萄狩りも楽しめる季節。皆様もカメラを持って列車で出掛けられてはいかがですか?