【マップカメラコレクション】写真機の回廊 ~ Mamiya C220 ~
マミヤは、独創的なアイディアを実装したラインナップでユーザーを魅了したメーカーだ。
マミヤ光機初号機の「マミヤシックス」は、フイルム面を動かしピント合わせをするバックフォーカスを導入し、改良を重ねスプリングカメラとしては世界初のセルフコッキングを装備するまでに至る。
35mmの分野でも、マミヤシックス同様のバックフォーカスシステムを採用した「マミヤ35」、 M42マウントの一眼レフ各機種や24×24の「マミヤスケッチ」など多くのカメラを発売。
だがやはり「マミヤ」と言えば「中判」のイメージが強いだろう。
スタジオ撮影では大きなシェアを誇った「RB67・RZ67」、報道の分野でも愛用されたアオリ機構のある「マミヤプレス」。
近年では、優れたレンズ性能と携帯性で愛用者が多い「ニューマミヤ6・マミヤ7」がある。
二眼レフにおいても、フイルム装填時に「二本のローラーの間に裏紙を通す」という手間すらも必要ない、フルオートマットの「マミヤフレックス オートマットA(オートマチック)」を早々に開発(1949年)。
その後も、35mm一眼レフの台頭に真っ向から挑むかのようにレンズ交換可能なマミヤフレックスCを発売。アクセサリーも多種多様なものが用意されていた。このレンズ交換式シリーズは改良を重ねロングセラーとなり、1994年に生産が完了した「C330s」が1950年代には栄華を極めた国産二眼レフ最後の機種となる。
好きなメーカーゆえ枕も長くなってしまったが、今回取り上げるのはその中でもバランスの取れた「C220」である。Cシリーズは、中途から上位機種と普及ラインナップとに別れるが、大まかに言ってクランク巻上げ・セルフコッキングのC33系、ノブ巻き上げ手動シャッターチャージのC22系となる。
シリーズは10機種以上が発売されており、中古市場でも比較的数は多いので、C220に限らず前後のモデルや上位・下位機種とを比べて自身にあった機構のものを選択すると良いだろう。
C220は特別な変更無しに220フイルムの使用が可能となり、ボディの素材変更で大幅な軽量化を達成。ノブ巻き上げながら折り畳み式のクランクも装備し、セルフコッキングに拘らなければ実用性は非常に高い機種だ。より機構的な部分や質感を求めるのならば、個人的にはC330・C330fがお勧めだ。
Cシリーズは一貫して、フイルムの平面性確保の為にフイルム送りはストレート構造となっており、ラックピニオンギアと蛇腹を用いた近接撮影能力は、二眼レフの中ではずば抜けている。反面、他の二眼レフに比べるとやや大きく重い仕上がりだ。
極度の近接撮影になると、露出倍数の問題も無視できないので相応に補正が必要だが、 C220の側面には露出倍数の補正表が完備されている。
二眼レフの弱点とされる、パララックス(視差)を補正するための「パラメンダー」というアクセサリーも用意されていた。
カメラと雲台の間に取り付け、ピント合わせ・フレーミングの後にテイクレンズをビューレンズの高さに持ち上げることで、「見えていた」絵柄と「撮影した」画像の差を無くすというものだった。
一般的な二眼レフの最短撮影距離は1m。近接撮影能力に優れた東京光学のプリモフレックス・オートマットでも65cmまで。ファインダースクリーン上での見え方は、以下の画像のようになる。マミヤの近接能力が、いかにずば抜けているかがお解りいただけるだろう。
左から リコーフレックス・ニューダイヤ / プリモフレックス・オートマット / マミヤC220(80mm)
最大の特徴と言える交換レンズ群は55mmから250mmまでがあり、 生産期間が長いためシャッターリングの色やチャージレバーのマークなどで数種に分類される。
一般的に人気があるのは、ワイドローライと同じ焦点距離の最広角55mmだろうか。特徴的なものとしては、ビューレンズにも絞りが付いた105mmDSがある。
また、各レンズ前期・後期でフードなどのアクセサリーが異なるものもあるので注意が必要だ。
レンズは、巧みに曲げられた1本のワイヤーのみで固定されているが、工夫を凝らしたロック機構で不用意に外れる心配は無い。側面のレンズロック解除ダイヤルを回すのに連動して、フイルム室内で遮光板が立ち上がり、レンズ交換時の光線引きを防止する仕掛けだ。
今回の実写には65mmF3.5を使用。夜景の三脚使用が前提だったので、これまた巨大なレンズフードにはお留守番をお願いした。
55mm等と比較したことは無いのだが、65mmは逆光でゴーストが出ても像は比較的安定しているように思う。
ただ、他の焦点距離よりもクモリ玉を見かけることが多いので、購入時はちょっと気にしてみると良いかも知れない。
レンズ交換が出来る二眼レフではあるが、私は65mmを付けっぱなしで使用している。二眼レフの標準75・80mmよりちょっと広角寄りの焦点距離は、守備範囲が広く非常に使いやすい。
二眼レフに限らず、写真を撮ってゆくと自分の焦点距離というのは自ずと固まってくるのではないだろうか。それがまた変化の乏しさをもたらしたり、そのひとの「作風」などと呼ばれるものに続いて行ったりするのかも知れないが。
個人的に、撮影中にレンズ交換の必要性を感じることは少ないのだが、マミヤCシリーズというカメラは、「最初に焦点距離を選べる」という二眼レフ。そんな稀有な存在である。