曇ったレンズの楽しみ方
皆さんはレンズを選ぶ際にレンズ内のコンディションは当然気にされると思います。
チリやホコリの混入はどうか…
特にカビやクモリについては度合いによっては顕著に描写へ影響してくる場合もあり、
発生の仕方によってはかなり深刻な状況に陥ることがあります。
今回はそんなレンズ内のコンディションの中でも、中玉が1枚全面にかけて曇ってしまったレンズを敢えてご紹介。
曇ってしまったレンズはもちろんマップカメラでは難有り品として取り扱われますし、
中古保証等もお付けすることが出来ないため完全に自己責任にてお求め頂く必要がございます…予めご了承ください。
さて、今回のレンズはVoigtlander Color-Heliar 75mm F2.5 (L39マウント)です。
今回はL39マウントという事で、L-M変換リングを使用してMマウントへ変換、その上でLeica M11 Monochromに装着して撮影に臨んで参りました。
果たして曇ってしまったレンズの写りはいかなるものなのか?乞うご期待です。
レンズが曇ってしまう事により、強い光源がある状態で撮影した際にフレアやハロの原因となり得ます。
端的に言えば光が滲みを伴ってしまうわけです。当然スッキリとした写りからは程遠くなってしまいますが…いかがでしょうか。
フレアなどが増えるという事は当然コントラストの低下を招くという事ですので、カラーでの撮影においてはどうしてものっぺりしてしまいがちだと思われます。
そのため、今回はモノクロ撮影に割り切って、コントラストの低下というマイナス要素を中間調のトーンを増やして階調をより豊かにする方向を狙っています。
個人的にはレンズ本来の描写を楽しみたいなあと思う派なのですが、こういうレンズだと割り切ってしまえば効果的に使えるとなかなか楽しいです。
50mmから一歩飛び出た中望遠にあたる75mmという焦点距離、少し難しく感じる焦点距離かもしませんがそういう時は縦構図も取り入れてみましょう。
窮屈さの解消に一役買ってくれるかもしれません。
続いて日中の写真です。やはりコントラストが低く特に逆光気味になった時のポヤっとした描写は好みが分かれることになりそうですが、
同じように滲みを伴うオールドレンズにはありがちなコマ収差などが良く補正されており、純粋に滲みの部分だけが楽しめるのは良いなと思いました。
順光であればそれなりにコントラストは出てくれていました。
ピントピークを外れたところからやや急速にボケているように感じますが、これは元々のレンズの特性でしょう。
やはりどちらかと言えば光が回りきっているところより、ゆるくその場を満たしているような光を狙う方が良い結果が得られそうです。
逆に光が回った状態を見てみたくて、天を仰ぎつつ数枚。
夏の空に近い雲の形をし始めていますが、全体的にハロをまとって滲んでいるのを見るとどこかノスタルジーを感じます。
雲の中に隠れてはいますが、太陽が入るように構図を取ってみました。電信柱が思いの外解像している事に驚きです。
このノスタルジー感は真夏にもう一度使ってみたい雰囲気を感じます。
打って変わってこちらはRAW現像でコントラストを復活させてみました。
モノクロ専用機だからということもあるとは思いますが、本当に多くの階調データが残っていてRAW現像の幅広さには驚かされます。
またコントラストは復活しているものの、ピントを置いている面についてもじんわりとした滲みは消し去ることは出来ずじまいでした。
さて、数枚の写真で綴ってみましたがいかがでしたでしょうか。
もちろんオールシーンで使えるレンズではありませんが、例えるならヘクトール 73mm F1.9をマイルドにしたような趣きを味わうことが出来ました。
しかしながら曇っているという事で本来の描写性能が発揮出来ないレンズになりますから、市場的な価値で見れば当然下がってしまいます。
何よりリセールに期待が出来ない個体になってしまいますから、そういった事も理解の上で選ぶものである事に違いはありません。
また、カビやクモリは日頃から適切な湿度での保管を行う事で発生する可能性を減らす事も出来ます。
特に日本は多湿になりやすい時期がありますので、防湿庫やドライボックスなどで保管して少しでも発生リスクを低減させる事も大事です。