【タイムズフォト】草津白根山の幻の山頂を訪ねる【本白根山・白根山】
暖かい日と寒い日が交互に来る今日この頃ですが、もう春まであと少しとなってまいりました。寒さの苦手な方
もあと少しの辛抱です!
…そんな切り出し方とは正反対の内容なのですが、雪のある山では普段は入れない場所でも入りやすくなるとい
う魅力がありまして、今時期は登山道のない山へも積極的に登られる時期でもあります。今回はそんな山のひと
つ、群馬県の「草津白根山」の頂上を訪れてまいりました。
「草津白根山」といえば、群馬県に位置する、日本を代表する名湯・草津温泉の母体ともいえる火山です。標高
2,171メートルの本白根山(もとしらねさん)と、2,160メートルの白根山(しらねさん)に大きく分けられ、ど
ちらも活火山として、現在でも所々から火山ガスを噴出しています。
草津温泉最大の源泉「湯畑」
頂上のすぐ下を国道292号線(志賀草津道路)が通り、特に火口湖の「湯釜」は観光シーズンには大変賑わうほ
ど有名です。「日本百名山」のひとつにも数えられています。ただしこの山、頂上一帯に噴火口と小さな高まり
がいくつも点在し、どこが本当の頂上なのか迷う山でもあります。
以下の地図を併せてご覧いただきたいのですが、地図のほぼ中央の「逢ノ峰」(あいのみね)ではやや低いです
し、地図下部の「三角点峰」(正確な名前はなし)は現在、火山ガスの危険地帯で立入禁止、図上その上の「本
白根山」最高点の2,171メートルの頂上、および「白根山」の2,160メートルの頂上は登山道がありません。今回
はその「本白根山」最高点と、「白根山」の2カ所を訪れました。
…まあその、「幻」というのも大げさかも知れませんが。
※赤の実線が歩いたルートです。
毎年4月下旬のゴールデンウィーク前から11月中旬までは、国道292号線こと「志賀草津道路」が通れますが、冬
の間は閉鎖されています。ただし「白根火山ロープウェイ」は通年営業ですので、今回はそれを使って一気に頂
上の直下までアプローチしました。国道はその山麓駅まで除雪されています。
草津国際スキー場の中なのですが、平日なのでスキーヤーおよびボーダーもまばらです。空いているという意味
では狙い目かも…。しかしすぐ近くに火山ガス発生地帯の「殺生河原」があるため、あたりは硫黄の臭いが立ち
込めています。
ロープウェイは片道10分、これに沿ってスキーコースがあります。頂上から滑るとかなりのロングコースで、以
前滑ったという知人によれば、とても滑り甲斐があったとか。もちろん眺めもまずまずです。
白根火山ロープウェイー山麓駅。大駐車場あり。 ゴンドラの中より。
頂上駅を降りるとそこはすでに標高2,000メートル!山麓駅よりも一段と雪深くなります。ただしこの日はかな
り暖かく、雪もやや重めでした。ここからスタートです。
頂上駅前のコース案内図 「コース外立入禁止」の告知
まずは「本白根山」の最高点(2,171メートルの頂上)を目指します。最初は夏の登山道と同じコースをたどり
ます。森の中ですが、時々展望が開けます。
雪に埋もれた道標 背後に見えてきた「横手山」
ロープウェイー山頂駅から一段上の尾根に上がると、目指す本白根山「頂上」が見えてきました。一見なだらか
そうですが、反対側の斜面は崖になっています。
中央が2,171メートルの最高地点。右のなだらかな山が立入禁止の「三角点峰」
尾根に出てからは、夏の登山道から離れてそのまま尾根を山頂まで目指します。途中から段々と展望が開けてき
ます。
下に見える建物は「万座温泉」、背後遠景は妙高・戸隠の山々
頂上手前から、短い間ですが急な登りになります。左側は大きな噴火口が開いていますが、崖になっているので
転落に注意しながら進みます。
頂上を見上げて。尾根に雪庇(せっぴ)が出ています 左側は大きな噴火口です
※雪庇(せっぴ):ひさしのように積もった雪。しばしば転落やなだれの原因になります。
頂上の手前から、歩いてきた尾根を振り返ってみました。
頂上は、誰かが目印に付けた赤テープが小さく木に巻いてある以外、標識類は何もありません。頂上からの眺め
は360度!ややこの日は霞んでいましたが、それでも冬としては素晴らしい展望でした。
ここが本白根山、イコール「草津白根山」最高地点
浅間山(左端の台形)
北アルプスのパノラマ
雪のない時期にこの頂上までは来れませんが、夏の登山道からも同程度の展望はありますし、コマクサをはじめ
とした高山植物の宝庫だそうです。
この頂上からは、一旦は来た道を戻ります。
今度は「白根山」の頂上を目指します。ロープウェイ頂上駅近くまで戻り、反対側の林道を志賀草津道路に向か
って進みます。もちろん林道も閉鎖中なので、クルマの心配などせずに歩けます。
雪に埋まった林道。雪上車は通っています。
林道を抜けると、志賀草津道路に出ると同時に、森がまったくなくなります。広々とした目の前に、なだらかな
白根山が見えます。それにしても、夏の交通量と喧騒がウソのようです…。
閉鎖中の志賀草津道路。背後の建物は白根レストハウス
レストハウスも閉鎖中。 道路から見上げる白根山
見通しのよい斜面を頂上を目指して登るわけですが、白根火山の名所であると同時に現役の噴火口「湯釜」の至
近を通る関係上、通常とは設置目的の違う「避難小屋」があります。途中で「ドッカーン」と来たら、この中に
逃げ込むということに。
休憩所を兼ねた避難小屋 山中の至るところに、こんな看板があります
ゆるやかな斜面を登り詰めれば、白根山の頂上に到着です。登山道は上記の避難小屋までで、ここまで来られる
のは雪のある時期のみです。ケルン(石を積み上げた目印)がなければ、これまた何の標識もないなだらかな頂
上です。悪天候などで視界がないときは要注意な場所でもあります。
白根山頂上に立つケルン
遮るものが何もないだけに眺めは大変はよく、振り返れば先ほどの本白根山や、草津と志賀の境をなす山・横手
山が大きく見えます。
本白根山を望む
横手山が近くに迫ります
白根山からも、もと来た道を引き返すのみですが、途中で噴火口・湯釜を望める場所があります。火山ガスと噴
火の危険のため、夏であれば遊歩道以外は立入禁止ですが、冬の場合は遊歩道も含めて半径500メートル以内が
立入禁止となります。今回も大事を取って、立入禁止区域ぎりぎりから湯釜を眺めてみました。
冬でもなお凍結しない、誰もいない冬の湯釜
ロープウェイの最終は16時なので、それまでに山頂駅に戻り無事、山麓駅まで下りました。暖かい日だっただけ
に、さっき登った本白根山も春霞でした。
ロープウェイ山麓駅から本白根山を見上げる
今回と同じコースを、夏にたどることは不可能ですが、高山植物もありますし、本白根山は登山が初めての方で
もそれほど難しいコースではありません。また、下山後はせっかくなので、草津温泉に入るとよいでしょう。温
泉街には「立ち寄り湯」がいくつもあります。
最後に口上ですが…
積雪期に草津白根山の登山を行う場合は、ロープウェイ山頂駅にある「白根パトロール」に届け出が必要です。
また、「冬山」に登るなりの装備と経験が要求され、火山活動の危険もありますので、登山される場合にはあく
まで「自己責任」での判断と行動でお願いいたします。
登山・撮影:2010年 2月25日
カメラ:Nikon D300
レンズ:AF-S DX VR16-85mm F3.5-5.6G