見上げる町ー1丁目
空は、誰の頭上にも等しく覆いかぶさります。
時に、うららかな日差しを投げかけ。
時に、幾万の水の粒を落とし。
時に、空色のキャンバスに雲で絵を描き…
神無月の一日目。
八百万の神々が出雲の地へ会議へ赴き、不在になることから名づけられたこの10月、神無月。
本日『見上げる町』と銘打って、頭上の景色を写しながら書かせて頂きます。
此度見上げる秋空は、東京都のとある場所。
見上げた視界には、この街の見慣れない表情が垣間見えます。
一階はいつものコンビニ、お寿司屋さん、はたまたデパート。
街の歴史を物語るのは我々が普段見上げない、かつてのままの上層階だったりするのです。
voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2.0 Aspherical
今回使用したこのレンズは以前のブログでも“空が映える”と紹介させていただきました。
ここ最近は他のレンズにうつつを抜かしていたため、しばらくぶりではございますが、この色、この写り、是非お楽しみください。
解像感にはやはり目を見張るものがありますね。
ところで、街の電光掲示板では、22度の表記をよく見かけるようになりました。
「暑い」と「寒い」の中間にあたる季節は、春も秋も、同じ“22度”を経験するはずですが、
どうにも私には、寒くなってゆく22度が心地よく感じられます。
わくわくした気分になるのですが…単に暑がりなだけでしょうか。
そんな秋の天気は変わりやすいと聞いたことがあります。
快晴だった空もじわりじわりと薄雲がかかり、透明度の高い厚みを感じる空はすぐに臨めなくなってしまいました。
雨が降るでもなく風が吹くでもなく、ただすり抜けるように移ろう空を眺めながら…
おしゃれな街を、おしゃれだな、と当たり前に独り言ち、欠伸の涙を流さぬよう、幾度もファインダーを覗いては空を仰ぎ見ます。
陽の光を浴びるには特等席のこの場所から、緑が見下ろしていることはきっと、この町の人もあまり知らないでしょう。
もうお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、今回見上げた町は東京都武蔵野市、吉祥寺周辺です。
駅の周りには、長い時間を感じさせる建物が立ち並びます。
頻繁に歩き回るこの町ですが、見上げて初めて見える景色も多くありました。
規則的に並ぶ窓、風に揺れる草花、見慣れないビル装飾…
元はと言えば秋空に魅せられて見上げた視界です。
こんなにも楽しい世界が広がっていたとは、まだまだ私の視野も狭いことを実感いたしました。
関東は紅葉にはまだ早く、行楽シーズンも始まるかどうかといった時期ですが、秋空は今日も綺麗です。
「空を見上げてみては?」などと無粋な事は申しません。
ただ、このブログを見ていただくために見下ろしたそのスマホ、一度スリープにしてみてはいかがでしょうか。
見上げるべき広い広い世界は、見下ろす先にもきっと。
私は、毎日息をし、パンを食べ、写真を撮り、寝ます。
そうして生きる日々は常に更新し続け、全てを知り、記録することは不可能です。
その莫大な情報の中で、自分が歩んだこの街を、自分が気づいたその視野で、切り取ることは永遠の宝物です。
「明日、何処で写真撮ったろかなぁ」
ぜひ見上げる町ー2丁目にいらしてください。
首を痛めながら空を撮り続ける人が居たら、きっとそれは私でしょう。
それではまた。
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