週刊カメラーズ・ハイ!第19回『ただ一つの中判コンタックス CONTAX645』
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┃週刊 カメラーズ・ハイ!第19回『ただ一つの中判コンタックス CONTAX645』
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今から遡ること15年前の1999年、唯一無二の中判コンタックス、CONTAX645が発売された。
その前後にはPENTAX 645NIIやFUJIFILM 645GX、HASSELBLAD H1などが登場していることからも分かるように
6×4.5というフォーマットが写真の世界で一つの確たる地位を改めて築きつつあるのを感じさせる事象であった。
CONTAXは1975年のRTS発売以来、ドイツの名門光学機器メーカー、カールツァイス製のレンズを
使用できる数少ない一眼レフとして2005年のカメラ事業撤退までの30年間多くのファンを獲得した。
CONTAXが支持を得たのはプラナ―をはじめカールツァイスのレンズラインナップによるところが大きいが
それに加えて他社とは一線を画すユニークな設計思想にその独自性を強く打ち出せたからであろう。
電磁レリーズを一早く実用化したRTSを始め、段階露出を自動化した167MT、マニュアルフォーカスレンズのまま
フィルム面を前後に動かすことで焦点調節を自動化したAX。
さらにはフィルムの平面性を極限まで追求するバキューム方式を採用したRTSIIIなど、
他社ではなかなか真似の出来ない機構をも次から次へと搭載していった。
実用性はともかくとしても、斬新な機構を開発・投入してゆこうしたCONTAXは、
機械好きでもあるカメラファンに常に興味の材料を提供し続けたのである。
ここで紹介するCONTAX645もそんな中で登場した。
CONTAX645は実際に使ってみるとまず何よりその感触の良さに感心する。
ここでいう感触には視覚的聴覚的なものも含み、単に手に伝わる感触だけではない。
ファインダーのクリアで明るく切れのいい見え具合もさることながら、シャッターの感触が殊に素晴らしい。
CONTAXの開発陣はシャッター音にはかなりこだわりがあったようで、納得のゆく音が得られるまで
微調整を繰り返したとの逸話が残っている。本機のシャッター感触の良さも、使用するにつれて
こだわり抜かれた成果であろうと思えてくる。
シャッターの最高速は1/4000秒。シャッター幕の面積が35ミリ判よりもずっと大きい中判カメラでは
1/500秒から早くても1/2000秒が一般的。1/4000秒まである中判カメラは数少ない。
プラナー80mmF2のような明るいレンズを使用する際にこの速いシャッタースピードは非常に有効である。
ツァイスのレンズを用いる中判カメラのもう一つの雄ハッセルブラッドの500シリーズは最高速が
1/500秒であるから、大口径レンズを使う上での優位性は歴然である。
ここで本機の難点を2点指摘したい。
まず、電池の消耗が激しいことである。電池はカメラ用リチウム電池(2CR5)を使うが
多く撮るときには二日ともたず、電池消耗サインに頻繁にやきもきさせられることになる。
そこで、バッテリーグリップが非常に重宝するアイテムとして登場する。
縦位置レリーズが付いているだけでなく、このグリップを装着すると2CR5に加え単三電池も使用でき、
電源の不安から大分解放される。
難点をもう一つ。感度設定ダイヤルが不意に動いてしまう。
これは非常に問題である。撮影に夢中になっていると400のつもりが100になっていたりする。
もちろんロック機構はあるが頼りにならないためパーマセルなどを貼って固定することをお勧めする。
このように難点もある本機であるが、ここぞという時に持って出たくなるのは、
とにかく撮っていて気持ちが良いからである。操作感触については上述の通り。
加えてダイヤル操作を基本とするため電源をいれずとも設定を常に読み取ることができ
瞬時に次の撮影に移行できるからである。
とてもシンプルであるがこのシンプルさがなかなか得難かったりする。
Planar80/2
Planar80/2
Distagon35/3.5
Apo-Makro-Planar120/4
Apo-Makro-Planar120/4