週刊 カメラーズ・ハイ!【アーカイブス】「どうして撮った写真はすぐに見れないの?」
┃週刊 カメラーズ・ハイ!【アーカイブス】「どうして撮った写真はすぐに見れないの?」
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~こちらの記事は2010年07月02日に掲載されたものです~
デジタル一眼、コンパクトデジタルカメラ、カメラ付き携帯電話など、
撮影したその場で画像を見ることが当たり前にできる時代になりました。
デジタルカメラの急速な進化と普及、その陰にあるフィルムカメラの衰退は、十数年前は想像も出来なかった事です。
では、ここで皆さんに質問です。
約40年前に「アラジンの魔法の箱」と呼ばれたカメラがあった事をご存知ですか?
「どうして撮った写真はすぐに見れないの?」
米科学者、エドウィン・ハーバード・ランド。当時3歳であった愛娘から言われたその一言が、
のちに“20世紀最高の発明品”と呼ばれるカメラを作るきっかけになりました。
創業者として「ポラロイド社」設立後の1947年、ランド博士は米国光学協会の席上で、
撮影後60秒以内で写真が完成する処理法を発表。
その場で撮影して実験成果を公開し、会場の聴衆に驚きと大きな衝撃を与えます。
撮影後に暗室での処理作業を必要としないこのインスタント写真システムの発明に、世界中が注目しました。
そして1971年、世界初の自己現像方式といわれる「SX-70フィルム」を発表。
翌年の1972年にコードネーム『アラジン』と名付けられたカメラ「SX-70」発売。(日本では1974年発売)
『アラジンの魔法の箱』と呼ばれ、瞬く間に世界中で大ヒットしました。
SX-70はシャッターを押すとフィルムが自動的に送り出され、その場で現像を開始・終了。
収納式レンズを持ち上げて撮影スタイルにし、撮影時以外は本のように折りたたみ持ち運べるという、
画期的な変形をする一眼レフカメラでした。
革張りが施された美しいフォルムは、アメリカのインダストリアルデザイン界を代表するヘンリー・ドレイファス氏によるデザイン。
あまりにも美しいボディは、アンディー・ウォーホールや、ジョン・レノンも愛用したほどです。
専用フィルムも人気のひとつで、青みがかったノスタルジックな色合いに仕上がる特性が、
他のカメラやフィルムにはできないとして支持されました。
ここ数年は、相次いで発売された若者向けのカメラ雑誌でも取り上げられ、
その独特なボディの雰囲気とフィルムの特性に惹かれ“SX-70ファン”が急増。
廉価版や二眼タイプ、プラスチック製ボディ版やカラーバリエーションなど、
個性的な各年代モデルもあらためて知られることになり、ポラロイドカメラ再ブームの火付け役となったといえます。
現在、SX-70フィルムは2005年に惜しまれつつ生産終了になり、入手することはできません。
しかし、同じような特性はないものの、IMPOSSIBLE社から新しいポラロイドフィルム「PXフィルム」が発売されています。
もしも中古カメラ屋でこの名機に出合えた時は、ぜひ店員に声をかけ触ってみてください。
“20世紀最高の発明品”の完成度の高さに必ず驚くはずです。
※ポラロイドの語源は、偏光版(ポラライザー)とセルロイド。
ふたつの言葉を合わせて造られた合成語であり、現在までインスタントカメラ(インスタント写真)の代名詞となっている。