銀塩写真列伝 Kodak PORTRA 160編
皆様、フィルムはお好きでしょうか。
筆者はフィルム写真を始めたとき、このフィルムはどんな写りをするのだろう。と雑誌やネット記事等いろんなものを読み漁りました。
好みのものを見つけては試写し、前回使ったものとここが違うと一喜一憂したりと大変楽しかった覚えがあります。
今回の「銀塩写真列伝」ではそんなフィルムに焦点を当て、各フィルムの特徴などを作例とともに紹介し、フィルム選びの助けとなることを目指しています。
世の中には期限の切れたフィルムを含めたくさんのフィルムがありますが、今回の連載ではマップカメラでお求めいただけるものに焦点を当てご紹介してゆきたいと思います。
例年はシルバーウィークでにぎわう頃ですが、今年は4連休となりました。
今年は一味違った過ごし方になるかと思いますが、フィルム入門の方も、すでにお使いの方も楽しんでいただければ幸いです。
・・・
このフィルムはカラーネガフィルムの中でも、私が特に好きなフィルムです。
印象としては、粒状感を抑えつつ、やや現実離れした優しい色合いの写真を撮れるフィルムといったところでしょうか。
現像やスキャンの方法によりますが、晴れた日の屋外撮影に使用すると
適度に柔らかく、かつ荒れているわけではない情緒ある写真として仕上げることができます。
それでは写真を見ていきましょう。
今回フィルムを通したのはLeica M2です。
レンズにはいつも一緒のElmar 35mm F3.5を使っています。
80〜90年前のレンズとは思えないほど写りは上々。
強い光が入ってこない状況であれば素直な色で表現してくれます。
撮影した時期は晴天の初夏だったのでとても明るい日でしたが、露出の調節を誤らなければ
明るい景色が見えているという情報は損なわないまま、目で見るよりはっきりとした色で写真に残すことができます。
眩しいとどうしても正しい色を視認しにくいので、写真で見返すとこんな景色だったんだと気づくことがあります。
もちろん、あえて太陽を真正面に見据えての逆光撮影も楽しいです。
白っぽく霞んだ色や光、レンズフレアによって写真を幻想的に演出することができます。
特に逆光で撮った写真では、PORTRA 160でもフィルムらしい粒状感が感じられ、シャドウ部の階調の豊かさにも驚きました。
完全に逆光になってしまった小田原城の写真です。
露出計を忘れてどう撮ったものかと悩んだ覚えがありますが、空の色を損なうこともなく、
肉眼では背景が眩しすぎてちゃんと視認できなかった、城の細部まで写せています。
デジタルカメラでも広いダイナミックレンジが必要な場面で、なかなか両方をバランスよく写すのは難しいと感じますが、
このフィルムではちゃんと残すことができました。
あまりよく考えずに露出を決めましたが、フィルムに救われた形になりました。
少し陽が遮られた条件や、日没すぐの夕方の写真でもこのフィルムの階調は活かされます。
こういった環境では、被写体同士の明暗の差はちゃんと表現しつつ、そのどちらも破綻してしまわないため、
明るいところと暗いところの両方を同時に確認できる肉眼に近い景色の見方ができるように思います。
個人的には空を白く飛ばしてしまいたい場面や、影を真っ黒なシルエットにしたいと思う場面があるので
そういったときにどう使ってあげれば理想通りの写真が撮れるのか、試行錯誤中です。
もちろん思い通りにいかないのが面白いところでもあるのですが。
このフィルムは旅行に持っていくことが多いです。
まだ露出計算に慣れていないので、ISO100として直感的に撮影ができることや、
冒頭にも述べたように、現実っぽくはない、それでいて優しい色合いと、邪魔をしてこない程度の粒状感がちょうどいいからです。
少なくなってきたとはいえ、世界にはまだいくつもの種類のフィルムがあります。
用途に合わせて、作りたい作品に合わせて、最適なフィルムを選べるようになりたいと思います。