例年、本ブログで紹介していますからご存知の方も多いと思いますが、改めてその起源を説明しますと1977年11月30日に世界初のオートフォーカス(AF)カメラ『Konica C35 AF ジャスピンコニカ』が発売された事に由来しています。
カメラの歴史は180年以上にも遡りますが、AFカメラ誕生の日がカメラの日に選ばれた事を鑑みると、いかにAFがカメラの歴史上重要だったかということが分かります。今回はそんなAFに関する私的な思い出話と最近気になったカメラのAF機能を紹介したいと思います。
還暦までのカウントダウンが始まった筆者が初めて購入した(正確には買ってもらった)カメラが 『Nikon F-501(1986年発売)』。「F3AF」というNikon F3の派生モデルを除けば、ニコン初のAF一眼レフカメラです。F3AFはレンズ内モーターを搭載した専用レンズでAF駆動させていましたが、F-501はカメラ内のモーターでレンズのマウント部に設けられたカプラーを回し駆動させる別方式を採用。今にして思えば何故、レンズ内モーターで押し通さなかったのかと思ってしまいますが、その分レンズの値段が抑えられた恩恵も見逃せません。また、発売当初は少ないAFレンズを補うためマニュアルレンズをAF化するアダプター的なテレコンバーターも用意されていました。
一眼レフ機は専用のAFセンサーモジュールで被写体までの距離を測っていたので、レンズの開放F値が暗いと性能がフルに活かせないという宿命がついてまわります。ましてテレコンバーターを介した場合はF値も暗くなるので、結局明るいレンズが必要となり、高いレンズを買う羽目になるのですが。
テレコンバーター内のレンズをカメラのモーターで動かしMFレンズでもAFでのピント合わせを可能にしたという代物。最新カメラのAFを体感してしまうと快適とは言えませんが、レンズ側で多少ピント合わせを手伝うとスムーズに合焦してくれました。
このカットは大型観覧車の中から撮影したもの。想像以上の高さと揺れで手すりから手が離せなくなり、片手でカメラ任せに撮った1枚です。もう10年以上前の思い出ですが、AFって便利だなとしみじみ感じたのを今でも覚えています。
そして時は流れ、デジタルカメラ時代に。さらにミラーレスカメラが登場するとAFセンサーモジュールではなく撮像センサーによるピント合わせが行われるようになりました。
「Nikon 1 V1/J1」 はレンズ交換式カメラで世界初の搭載となる像面位相差AFを搭載。より高速で正確なAFが可能になりました。そしてなによりAFが可能なレンズのF値制限も無くなったのも見逃せないポイントです。
1インチサイズのセンサーを搭載した「Nikon 1」シリーズは35mm判換算で焦点距離が2.7倍になるというメリットも。200mmクラスのレンズでもテレコンバーター等を併用すれば1000mm近い超望遠AF撮影が可能になったのです。
AF操作が出来ないレンズとの組み合わせでもピントの合焦を知らせる「フォーカスエイド機能」が働くためピント合わせは容易でした。ミラーレス機の携帯性の良さも相まって、望遠撮影にハマっていったのを覚えています。
さらに時が流れるとメーカー(マウント)の垣根を越えたAF対応のマウントアダプターも登場するようになりました。
Fマウント時代には想像しなかったニコン機でZeissレンズのAF撮影が可能になりました。海外ブランドの製品が多く、信頼性に疑問を持っていましたが使ってみると想像以上に便利。カメラ側からのF値操作はもちろんExifデータも記録されるので、純正レンズと遜色のない操作が可能です。
毎年のように新製品が登場するデジタルカメラ。AFにも様々な機能が追加されましたが、その中で最も印象に残っているのが被写体認識機能でした。人物の顔に自動でピントを合わせるには当たり前。動物も含め左右の眼のどちらにピントを合わせるのかも選べるようになりました。そしてそれらの機能はアダプターを介した他社レンズでも問題なく動作できるのです。
風に揺れる葉にもスムーズにピントが合焦。他にもライカM用レンズをAF化するアダプター等も販売されており、冒頭に紹介したAFテレコンバーターが約35年ぶりに戻ってきたかのような懐かしい気分にもなりました。
そして最新モデルともなるともっと凄い機能が追加されるようになったのですが、正直言うと使いこなせていないのが実情です。
Nikon Z9は映像エンジンの進化でAFスピードは大幅に進化し動体の追従もパワーアップ。被写体認識機能や横切りへの反応など様々な機能が追加されています。
望遠端開放F値6.3のレンズに2倍テレコンバーターを追加。実効F値13でも離陸する飛行機をしっかり追従してくれました。最初期のAFを知っているからこそこの進化には本当に驚きます。
ニコン機に偏った内容になってしまったので、ここから各メーカーの中で気になった最新AF機能についてご紹介を。
瞬間をさかのぼれるプリ撮影(言い方も様々ですが、今回はプリ撮影としました)やブラックアウトフリー撮影、電子シャッターによるシャッタースピードの高速化、100コマ/秒さえ超える高速連続撮影など特に最近のカメラの技術の進化は凄まじいものがあります。
2024年の初めに登場した世界初のグローバルシャッター方式「SONY α9III」もとても話題になりました。もはや肉眼でさえ捉えきれなかった至近距離の鳥の動きさえ追従してくれたときには感動さえ覚えました。
「捉えることのできなかった世界が撮れる」というキャッチコピーをそのまま体感できたので、とても印象に残っているカメラです。
そして今年もう一つ大いに感動した機能といえばキヤノンの最新機種「EOS R5 Mark II」の「視線入力AF」機能です。
世界初の視線入力AF(オートフォーカス)搭載カメラが搭載されたのは同じくキヤノンの「EOS 5 QD」。1990年代のフィルムカメラに搭載されたのが始まりというのですから驚きです。
その後も「EOS-3」や「EOS 7」など継承は続きましたが、デジタルカメラへの移行に伴い「視線入力AF」は搭載されなくなりました。しかし2021年にミラーレスカメラ「EOS R3」で復活、最新機種「EOS R5 Mark II」でさらなる進化を遂げました。
「EOS R5 Mark II」で本格的に「視線入力AF」は使ったのですが、本当に思い通りの場所にポイントを当ててくれる機能にとても感動しました。
走り回る猿も視線で追うことが出来ました。この機能はオートフォーカスに不慣れな方でもすぐに使える機能なので、この機能が次世代にまた搭載されることがあれば初めてカメラを触る方でも気軽に動体撮影を楽しめるのではないかと可能性を感じたカメラです。
ファインダーを覗いている間に足を踏み外した鳥をプリ撮影で捉えたカットです。最新機種に搭載された機能を使えば、今まで逃していたシャッターチャンスも捉えることが出来るので写真がもっと楽しくなります。
ここ1年で印象的だったカメラといえば「OM SYSTEM OM-1 Mark II」は外せません。
中でも「ライブGND(ライブグラデーションND)」は印象的で、フィルターのタイプを選べるうえに、フィルターの位置や角度を調整できるのです。
そして連写性能、AF性能の向上も目玉でした。
言うなれば、カメラが補助してくれることが増えたことにより撮り手はブレーンのような存在になり、より表現することに集中できるようになりました。
こちらは忙しく高速で泳ぎ回るペンギンです。
超望遠レンズを使用し大きく写っているということは、通り過ぎるペンギンを素早く確実に捉えなければならないわけです。
それに対応できる機材というと限定されてきますが、この日手にしていたのは「OM-1 Mark II」ですから、むしろシャッターを押すのが楽しくて仕方ありませんでした。
噴水を高速シャッターで撮ると、目には見えない世界を捉えることができます。
「OM-1 Mark II」はシャッタースピードを 1/32000秒 にまで速くすることができるので特別な瞬間を見ることができますし、またもし噴水のしぶきが飛んできてもIP53の防水防塵性能があるので問題ありません。
撮影の幅を広くしてくれるさまざまな性能が詰め込まれているのが「OM-1 Mark II」の最大の魅力と言えるかもしれません。
1億200万画素の中判フォーマット機。高精細になればなるほどAFにもより正確さが求められるわけで、35mm判カメラと遜色なく使えるAFに驚きます。
さらに車や飛行機など動体の被写体検出までしてくれます。昔の中判カメラのイメージといえば写真館などでカメラを固定して使うイメージでしたからその進化は凄いの一言。加えて専用の500mm超望遠レンズまで登場。大きなレンズでも静粛に素早く動かすパワーと歩留まりの良さが確認できました。単に距離を測るだけではなく、それを決定的瞬間に間に合わせてこそのAF。中判カメラではよりその進化を感じることができました。
今年は思い出に残る一台から最新機種まで語りました。
カメラの世界は常に進化しており、さらなる高みを目指していきます。
しかしながらかつて最新機種だったカメラもまた魅力があり、新しいものだけが魅力的だと一口には言えないのです。
それぞれ別の魅力があるのがこのカメラの世界の面白いところ。
この機会に是非マップカメラをご利用いただき、最高の相棒を探すしあわせな旅に出てください。