68年目の青い海
どこまでも青く、きらきらと輝く海。
訪れたものの心をやさしく撫でるような海風。
けれども68年前のちょうど今頃、ここは筆舌に尽くし難い悲劇の地。
太平洋戦争終盤、圧倒的なアメリカ軍。
島の北端に追い詰められた人々の中には軍人のみならず、たくさんの普通の人々。
アメリカ軍の必死の説得に応じる事なく、その多くが自ら海に身を投じました。
Leica M5 / Voigtlander Ultron 28mmf1.9 NEOPAN ACROSS100
サイパン島北部プンタン・サバネタ岬「BANZAI Cliff」
人の子として、子を持つ親として、耳を覆いたくなるようなエピソード。
追い詰められ、この絶壁に立った人々は、この青い海を見て何を思ったでしょうか。
「あれから日本ではいろいろな事がありました。
楽しいこと、嬉しいこと、また、悲しいこと、つらいことも。
それでもなんとか平和に無事に暮らせています。
この暮らしを、ともすれば当たり前の事と思い、すごしてしまう私達。
でも、本当はこれが得難く貴重なものであることは、こころの中ではわかっています。
どうぞこの国の行く末を見守っていただければ幸いです。」
あえて銀塩カメラを持ち出したのは、きちんと向き合いたいと思ったから。
1本だけ撮ったアクロス100を、大事に大事に持って帰って来ました。
Leica M5 / Voigtlander Ultron 28mmf1.9 NEOPAN ACROSS100
Philippine Sea Sunset
フィルムでなければならないものも、まだこの世にはあるような気がします。
じっと、あえてじっと見つめなければならない物事に出会ったとき、
完成までに手間のかかるフィルム写真は、立ち止まって考える機会を与えてくれます。