【マップカメラ情報】FUJIFILM FinePix X100 レポート
所有欲を満たす最新のアナクロニズム
2011年3月5日にフジフイルムから発売された「FINEPIX X100」。これ程まで多くの注目を浴びて発売されたコンパクトデジタルカメラを、私は他に知らない。
まだ発売を数週間も先に控えていた頃、某朝の情報番組ではメインキャスターが番組開始からの数分間を本機の為に費やしてその魅力を語り、今年の2月9日~12日まで横浜で開催されたカメラと写真映像の情報発信イベント「CP+」では、発売前の体験コーナーに長蛇の列ができ、常に30分以上の待ち時間が必要とされた程だったのだ。
ボディはまるでクラシックカメラのようなデザインで、随所にフジフイルムのこだわりが見られる。現代のデジタルカメラとは思えないこの外観を懐かしく感じたり、新鮮に捉えたり、人によって印象は様々だろう。 トップカバーと底面部にはマグネシウムダイキャストを使用し、軽量化と高い堅牢性を確保した。また、中間部は上質で耐久性のある黒い合成皮革で覆った。本革よりも長期使用に適しているため、敢えて合成皮革を採用したとのことだ。金属ブロックから削りだして作られたシャッターダイヤルや絞りリング等の操作部も非常に質感が高い。「カチカチッ」と一目盛りずつ手に伝わってくるクリック感に“写真機を操作している悦び”を覚えずにはいられない。
シャッターダイヤルと絞りリングはそれぞれ1段ずつの変更になるのだが、それよりも細かな調整をする場合はボディ背面のコマンドレバーを使用すれば1/3段ずつの調整ができるようになる。シャッターダイヤルと絞りリングの組み合わせで、絞り、シャッタースピード、プログラムの各オート撮影が使用可能だ。
フジフイルムのこだわりは外観のみならず内部にも及んでいる。撮像素子にはAPS-Cサイズ、有効画素数1230万画素のCMOSセンサーを採用し、画像処理エンジン「EXRプロセッサー」は従来より高い解像度と低ノイズを実現するためにリニューアルされた。
世界初の「ハイブリッドビューファインダー」
本機の最大の特徴といえるのが、光学ファインダー(OVF)と電子ビューファインダー(EVF)を自由に切り換えられる「ハイブリッドビューファインダー」。OVF時のファインダー内がまた素晴らしい。透明度が高いので非常に見やすく、ファインダーを覗いていることすら感じさせない程だ。ファインダーの光学系に透過性の高い素材を採用し、表面にはレンズと同じ「スーパーEBCコーティング」を施しているという。 そして、そこにAFターゲットマークやISO感度等の撮影情報が浮かび上がる様は今までに無かった感覚だ。近接撮影時のパララックス補正もきちんと押さえてある。
厳密なフレーミングがしたいときや、ホワイトバランスや露出、ピントなどを確認しながら撮影したいときにはEVFを使用する。EVFのスペックは最高クラスの視野率約100%、144万ドット。撮影画像をファインダー内に表示させて確認するのにも充分。ピント合わせが難しい場面に役立つ拡大表示もEVFでなければできないことだ。
OVF、EVFの切り換えは、ボディ前面に付いているファインダー切り換えレバーで行う。このレバーの位置が丁度良い所にあるので、切り換えたいと思ったときに指が自然とレバーに届く。また、マクロモードで被写体に接近して撮影するときは自動的にEVFに切り替わる。
FINEPIX X100の為に新設計された伝統の「フジノンレンズ」
レンズは新開発の「フジノン23mm F2レンズ」を搭載。レンズの表面に施した独自の「スーパーEBCコーティング」により、逆光でもゴーストを抑えたクリアな画像を実現している。こちらのレンズは、35mm判換算で35mm相当となり、スナップ撮影でとても使い勝手が良い焦点距離だ。開放絞りをF2と明るめにしたことでレンズの描写に余裕を持たせ、9枚羽根の円形絞りとAPS-Cサイズの撮像素子との相乗効果により、大きく心地良いボケ味が生まれる。もちろん魅力はボケ味だけではない。とてつもなく高い解像感も特筆すべき点である。具体的には、F4以上絞ると途端にシャープさが増してくる。これは、一般的な撮影において使用頻度が高い絞り値F4~F5.6付近で最も高い解像感を得られるように設計されているからとのことだが、成る程、実際にこの辺りの絞り値で撮影した画質にはまるで文句のつけようが無い。撮影した画像を等倍で確認するとよくわかるのだが、まさかここまで写るのかと驚かされる。この場で等倍の画像が載せられないことを悔しく思う。これに対して開放絞り(F2)では非常に柔らかい描写になり、ソフトフォーカスで撮影したような優しい描写になる。マクロ撮影やポートレート等に使用するとより一層楽しめそうだ。
総合写真メーカーならではの豊かな表現力
撮影目的や表現意図に合わせてフィルムを選ぶように、色彩表現やコントラストの強弱を使い分けることができる「フィルムシミュレーションモード」を本機でも搭載した。
プリセットには「Standard」、「Vivid」、「Soft」があり、それぞれ、見たままの色再現で自然な仕上がりになる「PROVIA(Standard)」、ネイチャーフォトグラファーに支持され、高めのコントラストで色をより鮮やかに表現する「Velvia(Vivid)」、コントラストを抑えて落ち着いた発色にし、肌色再現に定評のある「ASTIA(Soft)」をイメージして設定されている。これら全ての銘柄は同社のリバーサルフィルムブランド「FUJICHROME」のもので、今も昔も非常に多くのフィルムカメラユーザーに愛用されている。シミュレーションに実在するフィルム名を使用できるところはさすが総合写真メーカー。シーンに応じて実際にフィルムを選ぶような楽しさを味わわせてくれる。個人的な印象だとASTIAよりもPROVIAの方が幾分ソフトな感じもするが、この辺りの捉え方は人によって違うのかもしれない。
また、モノクロモードのプリセットでは、通常の「フィルターなし」、コントラストを高める「Yeフィルター」と「Rフィルター」、緑色を明るくし、赤色を濃く表現する「Gフィルター」があり、これに色褪せた写真のような褐色の「セピア」を入れた全5種類が用意されている。ひとくちに“モノクロ”といってもこれだけのバリエーションを持たせているのだから、画作りに対するフジフイルムの熱意がどれ程のものかがわかる。もし、どのフィルムモードにするか迷ったなら、1枚の撮影画像から「PROVIA」、「Velvia」、「ASTIA」の3種類の画像を同時に生成する「フィルムシミュレーションブラケティング」が役に立つ。大変便利な機能なので、積極的に活用したい。
夕焼けや晴れた日中の屋外など明暗の差が激しい状況下の撮影では、「ワイドダイナミックレンジ技術」が効果を発揮する。白とびや黒つぶれを防ぎ、ハイライトからシャドーまでを自然で豊かな階調で表現する。この幅広いダイナミックレンジを生かして細部のディテールまで表現することが可能だ。状況に応じて「100%」、「200%」、「400%」の3段階から選択できる他に、シーンに応じた最適なダイナミックレンジをカメラが自動で選ぶ「オート」も設定できる。今では名称こそ違えど同じような技術が各メーカーでもステータスとなっているが、その中でもフジフイルムはこの技術に早い時期から着目していたメーカーのひとつだった。 また、フィルムシミュレーションと同じように100%、200%、400%の3枚の画像を連続で生成する「ダイナミックレンジブラケティング」も用意されている。ただし、ひとつ気を付けておきたいのが、1回のシャッターから3枚の画像が生成されるフィルムシミュレーションやISO感度等のブラケティングとは違い、シャッターが3回連続で切れるということ。厳密なフレーミングでブラケット撮影をしたいときは、三脚等で固定するか、ずれないようにしっかり両手でホールディングすれば確実だ。
フジフイルムは、専用アクセサリーとしてレンズフード「LH-X100」やレザーケース「AR-X100」も用意しており、どちらも非常によく作られている。素材、質感共に申し分なく、本機をさらにドレスアップさせたいときには欠かせないアイテムだろう。
作例写真
■ 撮影機材:FUJIFILM FinePix X100 (リンク先は50%にサイズ縮小してあります)
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ISO感度:800
シャッター速度:1/500秒 / 絞り値:F8
ダイナミックレンジ:400%
フィルムシミュレーション:PROVIA
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ISO感度:200
シャッター速度:1/250秒 / 絞り値:F4
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:Velvia
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ISO感度:400
シャッター速度:1/800秒 / 絞り値:F4
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:PROVIA
-
ISO感度:1250
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F5.6
ダイナミックレンジ:200%
フィルムシミュレーション:PROVIA
-
ISO感度:200
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F7.1
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:Velvia
-
ISO感度:800
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F8
ダイナミックレンジ:400%
フィルムシミュレーション:PROVIA
-
ISO感度:800
シャッター速度:1/250秒 / 絞り値:F7.1
ダイナミックレンジ:400%
フィルムシミュレーション:PROVIA
-
ISO感度:200
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F4
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:PROVIA
マクロモード
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ISO感度:500
シャッター速度:1/125秒 / 絞り値:F4
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:PROVIA
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ISO感度:3200
シャッター速度:1/500秒 / 絞り値:F2
ダイナミックレンジ:200%
フィルムシミュレーション:PROVIA
マクロモード
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ISO感度:800
シャッター速度:1/125秒 / 絞り値:F4
ダイナミックレンジ:200%
フィルムシミュレーション:セピア
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ISO感度:500
シャッター速度:1/125秒 / 絞り値:F4
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:モノクロ
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ISO感度:200
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F5.6
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:PROVIA
-
ISO感度:200
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F5.6
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:Velvia
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ISO感度:200
シャッター速度:1/1000秒 / 絞り値:F5.6
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:ASTIA
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ISO感度:800
シャッター速度:1/500秒 / 絞り値:F8
ダイナミックレンジ:100%
フィルムシミュレーション:PROVIA
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ISO感度:800
シャッター速度:1/500秒 / 絞り値:F8
ダイナミックレンジ:200%
フィルムシミュレーション:PROVIA
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ISO感度:800
シャッター速度:1/500秒 / 絞り値:F8
ダイナミックレンジ:400%
フィルムシミュレーション:PROVIA
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