週刊カメラーズ・ハイ!第4回『二眼レフカメラの完成形! ローライフレックス3.5F&2.8F』
┃週刊カメラーズ・ハイ!第4回『二眼レフカメラの完成形! ローライフレックス3.5F&2.8F』
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そのクラシカルなスタイルから、もはや骨董品の扱いを受けてしまいそうな二眼レフカメラ。
しかし実際には、まだ数社が新品の製造・販売を続けていますし、
その独特の撮影スタイルをこよなく愛するファンも多く存在します。
現在も二眼レフカメラの生産・販売を続けているメーカーの一つに、
ドイツのローライがあります。
そして、このローライこそが、二眼レフカメラの基礎を築いたメーカーであり、
今に至るまで多くのカメラファンに「二眼レフ=(イコール)ローライ」「ローライ=二眼レフ」との印象を
与え続けている存在なのです。
ローライの歴史の起源は、1920年ドイツの名門メーカー、フォクトレンダー社を退社した
パウル・フランケとラインホルト・ハイデッケが興した
「フランケ・ウント・ハイデッケ社」から始まります。
創業当初はフォクトレンダーで生産されていたものによく似た、
横型三眼式ステレオカメラ『ハイドスコープ』というカメラを生産。
後にそれをロールフィルム専用に改造した『ロライドスコープ』が成功をおさめます。
三眼式ステレオカメラとは、中央にフォーカス用のレンズ、
その左右に撮影用のレンズを配置し、ステレオ撮影を可能にしたものです。
そのステレオレンズの一つを取り去り、横型から縦一列へとレンズの配置を変更、
ファインダーをその縦型ボディの上部に設置すると、
・・・そう、皆さんのよく知る二眼レフカメラの完成です。
こうして1929年に発売された二眼レフカメラが『ローライフレックス』、
現在『ローライフレックス・オリジナル』と呼ばれているモデルです。
ロールフィルムのレフレックスカメラという意味の『ローライフレックス』、
その成功はドイツの他のカメラメーカーは勿論、
世界中のメーカーに二眼レフカメラを開発・生産させることとなります。
複雑なファインダー機構を必要とするレンジファインダーカメラや、
耐久性に不安のある蛇腹式のスプリングカメラに較べ、
極めてシンプルなつくりの二眼レフカメラは、
大手メーカーだけでなく町工場的な規模でも生産可能で、
現に1950年代日本ではカメラ名の頭文字がアルファベットのAからZまで存在した
とまで言われるほどに様々な機体が存在しました。
他にないユニークなアイデアが施されたり、
使いやすさや写りにこだわった機体など、実にたくさんのモデルが登場し、
部分的には本家をも上回る性能を持つものが存在したにもかかわらず、
ローライのカメラは「二眼レフの王様」の地位を守り続けました。
『ローライフレックス・オリジナル』から改良に改良を重ねた機能面や
妥協のない確かなつくりと操作性の良さ。
高級機「ローライフレックス」シリーズのほかに、
早い時期から普及機「ローライコード」シリーズを確立、
そのどちらにもレンズメーカーの最高峰、カールツァイス社や
シュナイダー社のレンズを惜しみなく装備し、
描写性能の向上に努めた点が他の追随を許さなかったといえます。
そのローライ二眼レフの中でも最高のモデルと名高いのが、
1959年の『ローライフレックス3.5F』と
翌1960年の『ローライフレックス2.8F』です。
この2機種には、ローライが永年培ってきた技術がふんだんに盛り込まれています。
フィルム装填時にスタートマークに合わせる必要なく、
1コマ目で自動ストップするオートマット機構や、
巻き上げとシャッターチャージが同一レバーで出来るセルフコッキング、
スクリーン下の枠が動くことで近接撮影時のパララックスの補正が自動で行えることや、
絞りとシャッタースピードの設定に連動する露出計を備えるなど、
まさに至れり尽くせりの機能を持っています。
ローライ二眼レフの系譜はここで一度途絶え、
その後、伝統のオートマット機構などを省略し、
LED表示の露出計を配した『ローライフレックス2.8GX』で復活、
現行の『ローライフレックス2.8FX』へと続きます。
そんな意味でも『3.5F』『2.8F』は、クラシックローライの最終形モデルと言えます。
『3.5F』の撮影レンズには75mmF3.5、
『2.8F』には80mmF2.8のレンズが装備されています。
それぞれのモデルにカールツァイス社製のプラナーレンズと
シュナイダー社製のクセノタールレンズの2種があったので、
都合4種のバリエーションが存在したことになります。
この4種のレンズの描写に甲乙は付けがたいのですが、
周辺の歪みが少ないクセノタールが風景向き、
肌の描写に定評のあるプラナーが人物向きなどと言われています。
日本では当時からカールツァイス信仰が根強く、
特にアマチュアカメラマンには、より明るい『2.8F』の人気が高かったようです。
実際にプラナーの2機種を撮り較べた感想としては、
『2.8F』の方が絞り開放時のボケが大きく、カラーの発色もより鮮やかで、
『3.5F』は色味が渋い印象を受けました。
ただ『2.8F』はレンズが大きい分、構えた時に重心が前に傾く感覚があり、
シャッターレリーズのテンションも重めです。
『3.5F』の方がボディバランスが良く、手にすっぽり納まる感じ。
レリーズも軽く、プロの愛好者が多かったのもそんな理由からだったのかもしれません。
ただこの4機種のいずれを選んだとしても、
その独特な撮影スタイルやスクエアフォーマットに写し出される
クラシックレンズ特有の柔らかな描写に魅了されることは必至です。
ファインダースクリーンに映る画像の美しさに思わず見入ってしまうような、
そんな贅沢な撮影を楽しめる味わい深いカメラです。
ローライフレックス3.5F(プラナー)
ローライフレックス2.8F(プラナー)
ローライフレックス2.8F(クセノタール)
ローライフレックス3.5F(プラナー)