週刊 カメラーズ・ハイ!【アーカイブス】『ライカを超えて ニコン SP』
┃週刊 カメラーズ・ハイ!【アーカイブス】『ライカを超えて ニコン SP』
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~こちらの記事は2009年8月20日に掲載されたものです~
◆蓄えた技術の結晶
1954年、西独・ケルンのフォトキナで発表されたライカM3の登場は、
そのあまりの性能の高さゆえ、ライカを目標として技術開発を行ってきた日本メーカーに大きな衝撃を与えます。
しかしその衝撃こそ、M3を超えるカメラをつくるという日本光学(現ニコン)の挑戦の原動力となります。
ファインダー機構だけでも10種類以上行われたという試作を重ね、
1957年、ついにM3を超えるカメラとして距離連動式の「SP」は発表されます。
それはまさに、蓄えた技術と独自の発想が生んだひとつの到達点であり、ニコン精神の象徴でした。
まず、SP最大の特徴として挙げられるのが、採光窓が一体化したユニバーサルファインダーです。
このファインダーには左右二つの覗き窓があり、右側の標準・望遠用と左側の広角用に分かれ、
焦点距離の画角に応じた枠が覗けるという独自の構造になっています。
ライカM3のフレーム数を超える28mmから135mmまで6種類のフレーム(光像枠)を内蔵し、
セレクターの指標に合わせファインダー内に色付きフレームが次々に現れ、各交換レンズに対応するという仕組みです。
また、最高速1/1000秒のフォーカルプレーンシャッターは布幕式を採用し、
発売当時に「ささやくシャッター」と評価されたほど静粛性の高いものでした。
パララックスの補正も自動となり、当時としては珍しくシャッターダイヤルが1軸式の不回転のものになりました。
さらに、裏蓋の着脱に応じフイルムカウンターが「0」に戻るようになり、モータードライブも装着可能に。
セルフタイマーを初搭載し、シンクロセレクターとシャッターダイヤルが兼用になっているのも特徴です。
こうして、ライカなどのドイツカメラに果敢に挑戦し続けた日本光学は、
SPの完成によってライカM3に肩を並べ追い越すほどの製造技術に達したことを証明しました。
SPのPは「プロフェッショナル」の頭文字からで、その名の通りプロを意識した機能は、
交換レンズを多用した当時のプロカメラマンに支持され、世界中に知られることになります。
中古市場でも今なお人気のモデルで、ニコンファンの憧れとして2005年には復刻版もつくられ、
今では新品同様品が手に入ります。
あまりに精巧かつ複雑なメカニズムゆえ復刻は不可能といわれたSPでしたが、
丹念な手作業による工程を再現してつくられた極めて完成度が高い復刻モデルとなっています。
※SP後期にはシャッター幕の材質はチタン製に。復刻版は発売当時の布幕式を採用。