週刊 カメラーズ・ハイ! 【アーカイブス】『マッキンリーに眠る ニコンF2 ウエムラスペシャル』
┃【10】週刊 カメラーズ・ハイ! 【アーカイブス】
┃ 『マッキンリーに眠る ニコンF2 ウエムラスペシャル』
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~こちらの記事は2010年09月24日に掲載されたものです~
ニコンF2には、通常モデルや記念・限定モデル以外に特別仕様のモデルが
存在しているのをご存知でしょうか?
「F2 チタン ウエムラスペシャル」こそ、マニア垂涎のカメラ、
世界にたった三台しか存在しないF2特別モデルです。
登山家・冒険家、植村直己(1941-1984)。
かつて北極圏の冒険時に植村氏が携行したカメラやレンズは、極寒と犬ぞりの強烈な振動で故障。
その教訓から、昭和53(1978)年の北極圏犬ぞり単独走破の記録用として、
ニコン(日本光学工業)に依頼して特別に製作されたモデルが「ウエムラスペシャル」です。
極限状態を想定したボディは、外装にチタンを採用。厳寒に耐える低粘度オイル、
低温時におけるシャッター速度の安定性の向上、各部バネの強化、フィルムの巻き上げを順巻きに改造、
巻き戻しクランクの赤色付け、フィルムカウンター「31」以降の数字に赤色付け、
凍傷を避けるためにストラップ金具を外し糸で縫いつけた、などの特殊改造が行われました。
ちなみにニコンがチタンを外装に使用したのは、この「ウエムラスペシャル」が最初。
ニコンのチタンボディの歴史はここから始まります。
また、このモデルをベースとして、報道用F2チタンがつくられたといわれています。
1984年2月12日、植村氏は北米マッキンリー世界初の厳冬期単独登頂に成功。
43歳の誕生日でした。
しかし、翌2月13日の交信以降は連絡が取れず消息不明に。
「ウエムラスペシャル」は特別仕様カメラとして三台製作され、その偉大な冒険を記録しました。
そして今、二台は日本の東京都板橋区にある植村冒険館と兵庫県豊岡市にある植村直己冒険館に、
残りの一台は、植村氏とともに今もマッキンリーのどこかに眠っています。
◆F2モデル一覧
F2(1971年9月発売)
基本となるアイレベルファインダーカメラ。Fの角を落としたスタイリッシュデザイン。
F2フォトミック(1971年9月発売)
FフォトミックFTNをより進化させ、小型化、電池内蔵を実現したTTL露出計標準搭載モデル。
F2フォトミックS(1973年3月発売)
低輝度に強く露出表示は2点LED。夜でも視認性は良好。
F2フォトミックSB(1976年10月発売)
フォトミックSの内部回路を再設計し露出表示は5点LEDに。
ファインダーも小型化されよりスマートに進化。
F2フォトミックA(1977年3月発売)
Ai方式レンズが対応可能。Fマウントカメラの脅威が伺える1台。
F2フォトミックAS(1977年7月発売)
F2フォトミックSBがAi対応になったとも言えるモデル。ほとんどのFマウントレンズでシャッター速度優先AEが可能。
F2チタン(1979年報道限定モデル)
報道カメラ用に限定供給された特別モデル。外装をチタンに変更する事により軽量化と耐久性を実現。
F2チタン(1979年6月発売)
一般向けに販売されたチタンモデル。外装はグレーとブラックレザートーンの2色。
軍艦部右側に筆記体で「Titan」と刻まれている。
一般に「ネーム入り」と呼ばれている。
F2フォトミックA(25周年アニバーサリーモデル)
ニコンがアメリカ上陸25周年を記念してニコンUSAが限定販売した。
軍艦部右側に「25Anniversary」と刻印されている。
F2H(1978年11月報道限定発売)
正式名称は高速モータードライブカメラ。
基本性能は報道用F2チタンと同じだが、本体下にモータードライブとMD-100とMB-100を装備。
F2チタン ウエムラスペシャル
冒険家・植村直己氏が北極点犬ぞり単独走破用に特別制作された極地使用カメラ。
このモデルをベースに報道用F2チタンが作られたと言われている。
===========Nikon F2 作例写真===========
Nikon F2 +Nikon Ai-S Nikkor 50mm F1.4
Nikon F2 +Nikon Ai-S Nikkor 50mm F1.4
Nikon F2 +Nikon Ai-S Nikkor 50mm F1.4