週刊 カメラーズ・ハイ! 第24回『ロシアが生んだ奇跡のカメラ LOMO LC-A』
「ロシア製のカメラやレンズが好きです」と言うと“物好き”と思われてしまいますが、
「LOMOが好きです」
と言うと途端にオシャレに聞こえてしまうから不思議です。
今回紹介するカメラは『LOMO LC-A』
初代が登場してから30年が経つ今もなお、多くのファンを持つロシアが生んだ奇跡のコンパクトカメラを紹介しましょう。
まずロシア製カメラは既存のカメラをモデルに作られた製品が非常に多く
ライカ、コンタックス、ハッセルブラッド、ミノックスなどのコピーが有名です。
では今回のLC-Aはというと、これもモデルとなった機種が存在します。
Carl Zeissレンズの製造などで有名な日本のコシナが1981年に発売した『COSINA CX−2』がそのカメラです。
写真が少し荒れていてすみません。
こちらは数年前にマップカメラに入荷した『COSINA CX−2』です。
レンズを閉じている時のスタイルはそっくりです。
カメラ前部をくるりと回してレンズカバーが開く個性的なカメラです。
LC-Aは『COSINA CX−2』にインスピレーションを受けて
1982年旧ソビエト連邦のサンクトペテルブルグにあるLOMO PLC光学研究所で最初のサンプルモデルが誕生しました。
「誰でもどこでも毎日使えるカメラ」というコンセプトで生まれたLC-Aには
独自に開発された「MINITAR 1」と呼ばれるレンズが搭載されています。
このレンズこそが多くのフォトグラファーを魅了した魔法のレンズです。
オートマチックでコンパクトなLC-Aは大ヒットのカメラとなり、その評判はロシア全土に急速に広がったと言われています。
LC-Aは同じ社会主義国のポーランドやキューバなどへも渡っていきました。
しかしこのままだと「当時ロシアで流行った大衆カメラ」だけで終わってしまいます。
今の人気に続くきっかけは90年代初頭のプラハで始まりました。
ソビエト連邦崩壊後、ロシア製品は「旧世界の産物」として扱われていました。
無論ロシア製カメラもその中の一つだったのですが、プラハに訪れていたウィーンの大学生が偶然このLC-Aに出会います。
この学生こそがLomographic Societyの設立者であるマティアスとウォルフガングでした。
彼らがきっかけでウィーンでのLC-Aの評判が広がっていきます。
LC-Aを求める人々の要望に応える為、彼らはすぐにこのカメラの輸入を始めることになりました。
そして1992年「The Lomographic Society International」がウィーンに設立されます。
後に展示や活動が世界的に行われ「Lomography」と共にLC-Aの名は有名となりました。
本機は筆者所有の『LC-A』
1990年以後のウィーンバージョンと呼ばれているものです。
時代によってロゴがキリル文字のものやZENIT銘のものなど、様々な種類『LC-A』が存在しています。
目が半開きの状態。
カメラ前部底にあるレバーをスライドさせるとファインダーとレンズカバーが開閉します。
本機は『MADE IN RUSSIA』のロシアレンズ。
旧ソ連時代に製造されたものは『MADE IN USSR』
現行の『LC-A+』は中国でOEM製造しているので『MADE IN CHINA』
目が開きました!おはようございまーす!
コイツは誰だ?と思われた人も多いでしょう。
彼が有名な『ロモ蔵』です。
怪しげな紫色のコーティングが施された『MINITAR 1』
私はこのコーティング色をみると東欧・ロシアの風を思い出します。
ま、行ったことないですが。
ちなみにレンズ構成は4群4枚。中央部はシャープな描写です。
正面左側には絞りレバーが付いています。
絞ると羽の形状が菱形になります。
正面右側には距離計レバーが付いています。
曖昧な合わせ方ですが、そこはご愛嬌。
このカメラのピントは正確に合わせるんじゃないんです、ピントの山は心で感じてください。
乾電池はLR44が3つ入ります。
2コ入りパックを2つ買うと1つ余ってどうしようってなります。
『LC-A』は電子シャッターです。電池が無いと写真が撮れませんのでご注意ください。
LC-Aの個性的な写りがスマートフォンのカメラアプリやフィルター効果に多大な影響を与えた事は間違いないでしょう。
そして、こんなに現像が楽しみなフィルムカメラは他に無いかもしれません。
どういう風に写っているか分からないハラハラ感と、奇跡的な写りで大当たりしたときの嬉しさ。
予想通りという言葉が当てはまらないカメラです。
現代のデジタルカメラへのアンチテーゼなんて例え方もされたりしますが、いい写真の考え方は人それぞれ。
このLC-Aが多くの方に長く支持されているのは、このカメラにしか撮れない“いい写真”と楽しみがあるからではないでしょうか。
使用すると「カメラって不思議な道具だな」と改めて思います。
可愛らしいスタイルに予測不可能な可能性を秘めた『LOMO LC-A』。
写真を楽しむ時間を与えてくれるカメラです。
参考文献:http://www.lomography.jp