思い出のサマー ~大人の夏休み~
94年の夏
父に勧められて双眼鏡を覗いてみた
初めて知った、遠い世界
届きそうで届かない、不思議な不思議な遠い世界
遥か彼方の山並みや三郡山のレーダー基地
町はずれの大好きなおもちゃ屋……
双眼鏡に記された「Nikon」や「32×8」という文字
意味など当然分かるわけない
とにかく5歳の幼子にとって
双眼鏡の先に広がる、圧縮された丸い世界は
魔法の絨毯が空を舞うアニメのように
見入ってしまう魅力に満ちていた
94年の夏
宝物を見つけた、最高の夏
時は流れ、16年夏
94年の幼子は、今日も宝探しの真っ只中
手にするのは、双眼鏡のように小さなカメラと望遠レンズ
名曲「Summer of 69」に自らを重ね、懐かしい記憶をたどっていく
届きそうで届かない、不思議な不思議な遠い世界
遥か彼方のスカイライン、そこから飛び出す飛行機たち
幾重にも重なる摩天楼……
手にするものや景色は変わっても
宝物はどこかに満ち溢れている
94年を懐かしむ、16年夏
宝物を探しに、彼は今日も歩み続ける
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