動体撮影でのデジタル一眼を撮り比べ
一瞬を切り撮る高速連写と高速AF 2月某日、昨年末発売された『OLYMPUS OM-D E-M1 MarkII』を手に入れたスタッフが、嬉しそうに早いAFと高速連写性能を自慢しにきた。「機能が豊富で一眼レフより使い勝手が良い。これは一眼レフ以上でしょう!」と。一眼レフ派で、ミラーレスを敬遠していた私はこの発言がイマイチ信用できず、もう一人の一眼レフ愛用スタッフを連れて実際に撮り比べてみることにした。訪れたのは東海道新幹線の小田原駅。最高時速270Kmで走る通過列車を間近で見ることができる撮影ポイントだ。 |
自慢の愛機持参で始まった対決!フルサイズ機も所有するカメラ好きスタッフだが、持ち寄られたのは「Canon EOS 7D Mark II」と「Nikon D500」の2機種。 動体撮影対決ということで、測距点のカバーエリアの広く、フルサイズ機よりも被写体を面で捉え続けることが容易なAPS-C機のフラッグシップの集結となった。夢の動体撮影2強対決も気になるところだが、今回はOLYMPUSから彗星の如く現れた“一眼レフを凌ぐ”可能性も秘めたダークホース「OM-D E-M1 Mark II」を加えての対決。はたして筆者の思惑通り、返り討ちにできるのか…。
焦点距離:200mm(換算:320mm相当) / 絞り:F5 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:100 / 使用機材:Canon EOS 7D Mark II + EF70-200mm F2.8L IS II USM
動体撮影に定評のあるキヤノンだけあって、素早いAF性能が確認できた。千鳥配置の二重測距がよりシビアに素早く合焦させるのだ。ミラーショックの少ないフィーリングは扱いやすく愛用者が多いのも頷ける。他機と比べ唯一気になったのが連写速度の安定感だ。”UDMA 7”対応のCFカードと、”UHS-I”対応のSDXCカードで振り分け書き込みを行ったにも関わらず、連写20コマ目位からスピードが低下。カット数も他機より少なくなってしまった。発売時期から搭載メディアの世代遅れでハンデを感じる結果は、基本性能が高水準にあるだけに少し残念だ。
焦点距離:200mm(換算:300mm相当) / 絞り:F6.3 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:200 / 使用機材:Nikon D500 + AF-S 70-200mm F2.8E ED VR
少しだけ他2機種より高い解像度を持つ「Nikon D500」。データ容量的にスピード面で不利になるかと思いきや、高速転送仕様のXQDカードの恩恵は凄まじく、列車の動きに合わせ後方に振り向いても、シャッターを高速で切り続けることができた。AF性能も素晴らしいの一言。「D5」と同じ153点のフォーカスポイントがコマ数同様、どこまでも喰らい続けてくれるのだ。ファインダー内のキレ、少ないミラーショックなど、全てにおいて大満足の結果を披露してくれた。
焦点距離:150mm(換算:300mm相当) / 絞り:F8 / シャッタースピード:1/1000秒 / ISO:400 / 使用機材:OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
他2機種と土俵を合わせるべく、メカシャッター10コマ/秒での挑戦だ。AFの喰いつき・追従は、これまで使っていた一眼レフと遜色を感じない。いや、それ以上の安定感がある。121点という圧倒的な測距点が的確に捉えてくれているのだ。気になるファインダー像も想像以上の結果だ。過去のミラーレス機はファインダーをさせずにあえて少し過去の映像を見せることでブラックアウトを防いでいたが、このカメラでは意図的にブラックアウトを極短時間作り画像遅延を見せないことで、一眼レフさながらの連写感覚を維持しているのだ。
撮影はRAW+JPEG(L/Fine)、シャッタースピードを1/1000秒に固定し、3人のスタッフが機材を交換しながら行った。3機種共、最初のAFの喰いつき・追従は素晴らしく、列車の動きに合わせてパンし後方に消えるまで補足し続けてくれたのは流石だ。いずれも高いAF性能をウリにしているだけに、納得の結果と言える。
差が出たのは連写性能。「OM-D E-M1 Mark II」は、さらに上の最大60コマ/秒までの連写設定が可能で、より細かな間隔で被写体を捉えることができる魅力を持つ。一方で「D500」の安定したスピードで200コマまで連続でシャッターが切れる書き込みスピードも捨てがたい。昨年発売の最新2モデルに甲乙つけがたい結果となった。
夜間撮影での利便性 新宿へ戻る途中、例のオリンパス愛用スタッフが、「ミラーレス機は夜間にさらなる威力を発揮する」と訴える。確かに暗いシーンで は、撮影画像と同じ露出で見えるのEVFファインダーは魅力だ。しかし、光学ファインダーの透明感とキレがあれば、余程の暗闇で無い限り使い勝手に差があるとは思えず、急遽の延長戦で検証が行われることになった。対決の場所は羽田空港。日没後は滑走路の誘導灯と、ビル灯りで綺麗な夜景が楽しめる場所だ。 |
焦点距離:182mm(換算:291mm相当) / 絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/10秒 / ISO:640 / 使用機材:Canon EOS 7D Mark II + EF70-200mm F2.8L IS II USM
日中同様、素早いピント合わせとスライド中でもしっかり追従し続ける高いAF性能が確認できた。キレのある明るいファインダーのおかげで、夜間でも視認性に不自由さは感じらず、大きな機体も画面一杯に捉えることができた。
F1.4の大口径単焦点レンズでの撮影では、空港の灯りを綺麗に捉えてくれた。イメージサークルに余裕のあるフルサイズ用レンズは、周辺まで均一に明るい画像が楽しめる。充実のEFレンズ群を持つキヤノンならではの贅沢な楽しみ方だ。
焦点距離:200mm(換算:300mm相当) / 絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/15秒 / ISO:1400 / 使用機材:Nikon D500 + AF-S 70-200mm F2.8E ED VR
D500も日中と変わらない高いAF性能が確認できた。驚いたのは高感度ノイズの少なさだ。常用ISO感度で 51200までサポートするハイスペックは伊達ではない。
ニコンにも充実のNIKKORレンズ群があるのを忘れてはいけない。キヤノン同様、大きなイメージサークルの美味しい部分だけを使っている贅沢さを味わうことができる。
焦点距離:150mm(換算:300mm相当) / 絞り:F2.8 / シャッタースピード:1/10秒 / ISO:1600 / 使用機材:OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II + M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO
カメラの設定露出が反映されるEVFファインダーは被写体が見えづらい暗いシーンでも明るい像で確認できるのは大きな魅力。飛行機の動きに合わせてスムーズにカメラをスライドさせることができた。センサーが小さい分、高感度時のノイズが心配されたが想像以上のクリアな画質だ。
キヤノン、ニコンに比べレンズのラインアップが少ない印象のオリンパスだが、実は魅力的なレンズが多々ある。最新の「M.ZUIKO DIGITAL ED25mm F1.2」もその1本。大口径レンズによる描写は開放からとてもシャープ。光のグラデーションも綺麗でとても上品な印象に仕上がった。
暗いシーンでの撮影で、一眼レフに勝る大きな魅力がある。ボディ内手ぶれ補正機能だ。本機より大幅にパワーアップした「5軸シンクロ手ぶれ補正」レンズとの組み合わせによる6.5段分相当の手ぶれ補正も試してみた。これは凄い!強風の中でもブレを抑えたクリアな画像が得られた。全員で何秒まで耐えられるか挑戦した結果、しっかりホールディングすれば2秒まで頑張れるとの結論に。
全ての機種で日中同様の安定のAF 性能が体感できた。ミラーレス機が苦手とされていた動体AFも「OM-D E-M1 Mark II」での進化を素直に感じることができた。ファインダーの見え方ではEVFの恩恵は感じたものの、品質の高いキヤノン、ニコンの光学ファインダーも見やすく不自由は感じられない。特筆すべきは手ぶれ補正機能の凄さだ。ボディとレンズのシンクロで軽減される手ぶれ補正の強力さは驚き以外の何物でもない。そして1日フルに撮影をすると、なかなかの疲労感が味わえる。そんな時に機材を見比べるとオリンパス機の小型システムがとても魅力的に見えてしまう。
Canon EOS 7D Mark II+EF70-200mm F2.8L IS II USM焦点距離(35mm換算)112-320mm
全長:約270mm 重さ:約2400g |
Nikon D500+AF-S 70-200mm F2.8E ED VR
焦点距離(35mm換算)105-300mm 全長:約280mm 重さ:約2290g |
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
+M.ZUIKO DIGITAL ED40-150mm F2.8 PRO 焦点距離(35mm換算)80-300mm 全長:約220mm 重さ:約1454g |
「一眼レフ以上!」の発言でスタートした今回の対決。ミラーレス一眼と一眼レフでは動体撮影には雲泥の差があったのは過去の話と言わざるをえない。撮像面でピントを判断するコントラストAF、像面位相差AFともにピント精度が高くこのまま進化が進めば下手な一眼レフカメラのAF性能を凌駕してくる可能性は大いにある。 いや、むしろそのタイミングがすぐ側まで来ていることを感じさせるような撮影であった。
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