「もう、写真撮るならあらかじめ言ってくれたら、もっとちゃんと作ったのに!!」
・・・・・・ん?
・・・ま、いっか・・・・・・
では、あらかじめ言う。 今度は表紙だ!
さて、今回棚から出てきたローライは、ローライフレックス 2.8E(プラナー)
1956年から1959年にかけて製造されました。
それまでのモデルとの最大の違いは、セレン式の露出計を搭載したこと。
ボディ正面「ROLLEIFLEX」のネームプレート下部にあるイボイボがセレン受光部。
そこで受けた光を測定し、フォーカシングノブ側面にある追針式のメーターで値を読み取ります。
表示されるのはEV値という、絞り値とシャッタースピードを組み合わせたもの。
その値から絞りやシャッタースピードを決定し、ボディ正面のそれぞれのダイヤルで設定します。
・・・はい、はっきり言って面倒くさいです・・・
その点、ローライフレックスの完成型ともいえる 2.8Fや 3.5Fなどの Fシリーズでは、
同じセレン式の露出計を搭載していますが、絞りとシャッタースピードのダイヤルが露出計と連動しているため、
ダイヤルを動かしてその場の明るさを表す針に合わせることで適正露出が得られるようになっています。
ただ、このセレン式露出計、時代が経っているので受光部やメーターが劣化している個体も多く、
もう部品も手に入らないため交換・修理等はできません。
(マップカメラの中古品も、露出計に関しては保証対象外にさせていただいてます。)
撮影の際は、できれば単体の露出計を用意されることをお奨めします。
(特に棚からいろいろな二眼レフが出てくる場合、その方が便利です。)
その他、Fシリーズとの違いとして、2.8Eは上部フォーカシングフードが固定式のため、スクリーンの交換ができません。
(バージョンアップされた 2.8E3は Fと同じ形状です。)
レンズやシャッターに違いはありません。
それでいて中古市場で結構な価格差がありますから、
多少の使いづらさを我慢できれば、安価にローライ二眼レフカメラの撮影を楽しめるモデルということになります。
・・・まぁ、そんなわけで棚から出てきた 2.8Eをお伴に、いざ鎌倉へ。
・・・そう、今回はアジサイ真っ盛り、6月の鎌倉が舞台です。
前回がゴールデンウィーク前ですから、極々自然な流れです。
たとえ執筆時、紅葉シーズンが終わっていてもです…
そして、今回お伴のローライのさらにお伴として、「ローライナー」というアイテムをあのメロディ(旧いやつ)を口ずさみながら、
お腹のポケットより颯爽と取り出します。
・・・はい、皆さん ご一緒に!!
♪ ローライナー
・・・えぇ、何かといいますと、最短撮影距離 1メートルのローライ2眼レフカメラで、
より近くの被写体を撮影するためのクローズアップレンズです。
レンズ1枚の薄いものと筒状のものの2枚セット。
そう、2眼レフですので、上下2つのレンズにつける必要があります。
薄いほうが撮影レンズ用、筒状の方はフォーカスレンズに装着します。
カメラ上部のフォーカスレンズにつける際は、筒に刻まれた赤い点が上を向くように装着します。
筒の内部をよく見てみると、レンズが斜めに入っているのが分かります。
一眼レフと異なり撮影レンズとフォーカスレンズが離れているため、
被写体に近付くほどスクリーンの像と実際に写る範囲に差が生じてしまいます。
これが視差(パララックス)で、その補正のために斜め下向きにレンズが組み込まれているのです。
芸の細かいことです。
撮影距離に応じて、3種類のローライナーがあります。
「ローライナー 1」を装着すると、100センチ ~ 45センチ までの撮影が可能に。
「ローライナー 2」は、50センチ ~ 31センチ。
「ローライナー 3」は、32センチ ~ 24センチ。
なお、レンズへの装着はバヨネット式ですが、レンズタイプによって径が異なります。
大雑把に分けますと、2.8シリーズのプラナー80mmやクセノタール80mmは、バヨネットタイプIII。
3.5シリーズのプラナー75mmやクセノタール75mmは、バヨネットタイプII。
3.5シリーズ初期のモデルやローライコードのテッサー75mmやクセナー75mmは、バヨネットタイプI といった具合。
(最初期のローライ2眼レフでは装着できないものもあります。)
径を間違えると装着できませんのでご注意ください。
このバヨネットの区別は、フードをつける際にも必要になります。
では、ようやく本題。
6月中旬の鎌倉です。
電車で1時間くらいの距離に住んでいるので、鎌倉へは毎年のようにアジサイ鑑賞に訪れています。
それも順路がおおよそ決まっていて、まずは鎌倉駅の一つ手前、JR北鎌倉駅で下車。
通称「あじさい寺」として有名な「明月院」へ向かいます。
「アジサイなんてどこでも一緒、わざわざ混んでる鎌倉まで行かなくても・・・」と思われる方も多いでしょうが、
青いアジサイ一色で構成された明月院の庭は、いかにも鎌倉らしい情緒があって心惹かれます。
・・・まぁ、本当に混んでますけど・・・
特にローライでピント合わせに集中していると、人の流れを止めちゃいそうで気を使います。
・・・あぁ、すみません。 どうぞ気にせずお進みください。
そんな不審な目で見ないで。 箱こねくり回してるみたいですけど、カメラです・・・
そちらの外国の方、驚かれてますね。
イエス、アンティークカメラ! ドゥ ユー ノウ?
マップカメラ デ ウッテマス!!
・・・なかなか、気を使います・・・
ローライフレックス 2.8E(プラナー) フジフィルム ベルビア100F
まずは、ローライナーを付けずに最短 1メートルくらいでの撮影。
続いて、お腹のポケットより、メロディ(旧いやつ)とともに。
♪ ローライナー
・・・まぁ、声には出しませんが・・・
ローライナー 1 使用
背景の葉っぱが塗りつぶされたようにボケて、ちょっと絵画的になっています。
ローライナー 1 使用
石畳がバックになるように、レンズを下の方に向けて撮影。 ウエストレベルだとちょっとつらい体勢・・・
これまた、背景が面白い感じにボケてくれました。
撮影に夢中になってファインダーを覗きこんでいると、またまた何やら視線を感じます。
イエース、ディス イズ ローライ ニガンレフ カメラ・・・ って、妻でした・・・ 少し先で待っていました・・・
ごめん、忘れてた…… ってわけありませんよ、いやいや、本当に・・・
それでも、心を鬼にして、大事な作例撮りを続けます。
・・・大丈夫、怒ってないよね・・・
フジフィルム プロビア100F ローライナー 2 使用
ローライナー 2 使用
ピント面少し後ろはソフトをかけたようにボケてくれました。
ローライナーを外して、最短付近で絵馬を撮影。
やはり、ローライナー無しのほうがボケ方は自然な気がします。
天に伸びる竹を撮影。 ウエストレベルファインダーなら、上を見上げることなく撮影できます。
本堂裏の庭のハナショウブは見頃を過ぎてしまっているとのことで、ようやく院を後に。
人の流れに従いつつ、道を戻る途中でもカシャッ。
ローライナー 2 使用
色づく前のものも瑞々しくて好きです。
私が立ち止まったり、脇にそれたりする度に、妻が少し先で待っていてくれます。
本当、良くできた人です。(←フォローです。)
踏み切りを渡り、これまた順路の1つ、「浄智寺」へ。
明月院の混雑が嘘のように、静かになります。
といっても、年を追うごとに、人が増えてきた気はしますが・・・
境内手前の池から惣門を臨む光景は、いかにも風情があり、
よくスケッチ集団が陣取っているのですが、今日は見当たりません。
左手にある小さな井戸「甘露の井」横のガクアジサイが、特に有名。
ローライナー 2 使用
ここでもカメラをこねくり回して、良いアングルを模索していると、年配の方から声をかけられました。
「ずいぶん古いの使ってるねぇ。」「あ、はい・・・」
「フィルムは何入れてるの?」「あ、プロビアです・・・」
「あぁ、リバーサルかぁ。まだあるんだ?」「えぇ、ずいぶん値上がりしちゃいましたが・・・」
「そうだよねぇ、フィルム高いよねぇ。」「えぇ・・・」
少し離れたところで妻が見ています。
・・・あの目は何でしょう?
(よく話しかけられるわねぇ・・・)か、
(そんな調子で、お店でセールストーク出来てるのかしら・・・)か・・・
・・・大丈夫、お店ではちゃんとしてますよ。 ……たぶん…
続いて、お隣「東慶寺」へ。 その昔、縁切り寺として知られたお寺。
花の寺としても名高く、四季折々の花が楽しめます。
山門前の階段には、白いアジサイが咲き誇っていました。
ローライナー 2 使用
バックの木洩れ日のボケが五角形に。 絞り羽根の形状が出ています。
ローライナー 2 使用
中に入ると、様々なタイプのアジサイが。
ローライナー 1 使用
境内はやはり人が多かったのですが、明月院ほどの混雑はなく、皆さん思い思いに撮影を楽しんでいる様子。
被写体があちこちに散らばっているので、ローライでじっくりピント合わせしていてもOK。
あっちの花、こっちの花へ行ったり来たり・・・
ここでは、ハナショウブが見頃でした。 奥行き感も出ています。
はっ、妻は・・・ あ、いえ、別に忘れていたわけではなく・・・
あぁ、向こうの方で、同じくスマホで撮影していました。
スマホを花に近づけたり、少し離したり・・・ なかなか楽しんでいるようです。
あ、今度はあっちのアジサイに。 結構夢中な様子・・・
……おーい… ・・・私のこと、忘れてないよね?
北鎌倉駅に戻って、電車で1駅、鎌倉駅に。
建長寺を経由して鶴岡八幡宮まで歩く方法もありますが、不精します。
お腹も空いてきたので、遅めの昼食を。
鎌倉でのお昼ご飯、私の定番は、小町通りをちょっと外れた所にある「なかむら庵」という蕎麦屋さん。
1人で撮影に来た時は、毎回こちらにお邪魔して「大冷やしなめこそば」とビール、最後に濃いめの蕎麦湯で締めて・・・
……じゅる…
では、さっそく なかむら庵 に。
いつもなら店前に結構並んでいたりするのに、今日は2人しか並んでない。
なんてラッキーな・・・と、列に加わろうとしたところで、妻が、
「また、お蕎麦? この前来た時もそうだったし、今日は別の所にしませんか?!」
「………どこにする?」
「えっと・・・」スマホをいじり出しました。
「こっち・・・」 歩くこと数分、1軒のお店の前に。
「ずいぶん並んでいるね・・・」 見たままを口にする私。
「う~ん、じゃ、このお店は・・・」 そして、店の前。
「さっきの所より並んでいるね・・・」
「え~、じゃあ、もう1つの所・・・」 ・・・以下、略。
まぁ、アジサイシーズンですし・・・ スマホに載っているようなお店は特に・・・
「・・・お蕎麦でもいっか・・・」 なかむら庵 に戻ると、長蛇の列・・・
「……………」
結局、少し離れた所で親子丼とビールを食しました。 味は省略・・・
お腹も満たされ、さて次にどこに行こうか・・・
例年のアジサイ撮影コースですと、江ノ電に乗り込み、長谷寺や御霊神社などに向かいます。
近年特に人気のスポットになっていて、今日の明月院の混み具合からすると、長谷寺などは入場制限がかかっているかも・・・
それ以前に江ノ電も多分かなり混んでいるでしょうし・・・
まだ妻を連れて行っていない所にしましょう。
駅前からバスに乗り込み、向かったのは「報国寺」。
「竹の寺」として有名な所です。
拝観料を払って入ると、すぐに竹の庭が広がります。
「すごーい」 さっそくスマホを取り出す妻。 気に入ってくれたようです。
では、私も・・・ と、露出計で計測すると、
「暗っ!」 絞り開放でも 8分の1秒でしか、シャッターが切れません。
支柱にカメラを置いて無理矢理に撮影、プロビア100Fを使い切り、今度はプロビア400Xを装填。
このフィルム、すでに販売終了で有効期限も切れているのですが、買いだめして冷蔵庫に保存していたものをちびちびと使っています。
とはいえ、フィルム感度100 から 400 なので、劇的に変化するわけではありません。
手ブレに気をつけて、慎重にシャッターを切ります。
フジフィルム プロビア400X
木洩れ日が球状にボケています。 絞り開けて撮ってます。
竹林を抜けると若干明るくなったので、ちょっと絞って撮影。
少し歩いて「杉本寺」へ。 鎌倉最古のお寺と言われています。
山門から本堂へ向かう石段は、長年の参拝のためか、すり減っていて通行禁止に。
苔むして、年月を感じさせるいい雰囲気になっています。
横に設置された階段を上がって本堂へ。
御前立の十一面観音像などを拝見して、お寺を後にしました。
気がつけば、日も暮れてきました。
結構歩いた(特にお昼ご飯を求めて・・・)ので、今回の鎌倉散策はここまで。
・・・完
(文責・イット)
棚からローライが出てこなかった方は、こちらでお買い求めいただけます。
|
|