【増税前にデビュー】[フィルムデビュー] TC-1と過ごす一週間
秋になるといつか行った公園の近くのカフェを思い出します。
あの頃の私はまだカメラを持っていなかったので写真はあまり残っていないのですが、
公園のいちょう並木が綺麗だったこと、それから不思議なカフェがあったことを覚えています。
店内に入ったときお客さんは他におらず、お店の人だと思われる旦那さんがテレビを見ながらコーヒーを飲んでいました。
なぜかそのまま私もテレビを見て、始まってしまった洋画から目を離せず長居をしてしまったのでした。
もう少し涼しくなったら今度はカメラを持って行ってみたいなと思いながら、名前もわからないカフェのことを思い出す今日この頃です。
さて、そんな新人スタッフの私が今回ご紹介するのは、MINOLTAのTC-1です。
私が初めてちゃんと自分でフィルムをセットして、現像まで出したフィルムカメラ。
まだカメラのこと一つ一つが初めてでどれもデビューではあるのですが、今回はその中からフィルムとの出会いを書かせて頂きます。
The Cameraを名乗る小さいながらも堂々とした佇まいの高級コンパクトカメラ、こんな立派なものを新人の私が触っていいのかな、
そんなことを思いながら一週間ともに過ごしてみました。
小さくシンプルなデザインのボディ、手に取るだけで心が動いてしまいますが、さらに心惹かれるのが絞りです。
レンズ横のつまみを動かすと、完全円形の絞りがまわりカシャン、カシャン、と切り替わります。
これを見てるだけでワクワクがとまりません。この絞りが大好きな人は私だけではない、はず。
最初に入れるのはISO400のフィルム。フィルムをいれて蓋を閉じると自動的に巻き始めます。
ちゃんとセットできたのだろうか、とドキドキしながら待っていると、TC-1から準備万端のサイン。さぁ何を撮ろうか。
はじめの一本は絞りだけ設定してその他はTC-1にお任せしました。
ISO感度の設定や、マニュアルでのフォーカス設定など、ボタンが少ないのに設定が分かりやすいのもTC-1の良いところです。
気取っていそうで、誰にでも優しい。こんなところにも品を感じてしまいます。
今思えばAPS-Cのカメラばかり使ってる私には、28ミリという画角も初めての広角です。
初めての画角にも振り回されて。
最後にピンボケの写真を撮ってこのフィルムは終了しました。
ちょっと近づきすぎたようで。
ああ、そういえばマニュアルフォーカスもあったな、と終わってから気づくのです。
次にいれたフィルムはISO800のフィルム。
フィルムというと100という数字に見慣れてるせいで、800という数字にまたドキドキします。
買ったフィルムを装填。今度は2回目なので少し得意げです。
この日は水族館へ。フィルムでの水族館は初めてでした。
こんなに暗いのにちゃんと撮れるのだろうか・・・。
正直撮ってるときはちゃんと撮れてるか分かりませんでした。
一枚撮っては、見ても何も分からないのにレンズ側からカメラをのぞき込みます。
どうでした?今のは。
返答が返ってくるのはまだだいぶ先です。
現像が返ってきたときは少し驚きました。
ちゃんと撮れてる・・・。それどころかこの上の写真に関してはデジタルで撮ったものより色が好みでした。
これを撮っているときの私はこんな色が出るなんて思っていなかったはずです。
描写に関してもデジタルに負けず劣らずではないでしょうか。
今回はマニュアルフォーカスにも挑戦してみましたが、
今となってはどれがオートフォーカスでどれがマニュアルフォーカスなのかまったくわかりません。
いつもの街に帰ってきました。
残り少ないフィルムを撮ってしまおうと、なにかを探して彷徨います。
一本目のフィルムを現像に出している間にと思っていたはずが、気づけば時間が過ぎていました。
そしてあっさり撮り終わる2本目のフィルム。
私はコンパクトカメラのレンズを出す瞬間と、フィルムを巻き戻す音がたまらなく好きです。
カメラに耳をあてて、1本撮り終わった達成感を感じながらカメラの頑張る音を聞く時間がたまらなく好きなのです。
機械式のフィルムカメラでもデジタルカメラでも味わえないこの感覚。
この小さなカメラには、ボディにはおさまりきらない何かが詰まっています。
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