【増税前にデビュー】CarlZeissの小さなスタンダード
Otus、Millvusと高画質の為なら大きさを厭わないと感じさせるレンズ製品群が多いCarlZeissの中で、
ひときわコンパクトな製品としてレンジファインダー用のZMシリーズがあります。
高い品質に伴った価格設定であり、かつマニュアルフォーカスという事もあり、とても良い製品ではあっても、
なかなか敷居が高いと感じられている方も多いのではないでしょうか。
しかし、ミラーレスカメラが普及することによって、液晶画面上でゆっくり確実にピントを合わせることが出来るようになり、
マニュアルフォーカスの敷居もだいぶ下がっています。
このコンパクトでありながら高画質なZMシリーズ、今回は、もっともスタンダードなPlanar T* 2/50 ZMを
VM-E クローズフォーカスアダプターを介して、SONYフルサイズのもっともスタンダードなα7に装着し撮影した記録です。
なぜ、今このレンズなのか、しばしお付き合いを頂ければ幸いです。
冬の北海道、氷点下10度ちかくまで気温が下がるなかで、2時間ほど撮影をしましたが、なんの問題もなく撮影できました。
α7の良いところは、フルサイズでありながら500gを切る軽量設計のボディであること。
サイズ感も含めMFフィルムカメラのように振り回せ、ファインダーで拡大表示をすればMFでもばっちりピントを
合わせることが出来ます。
Planar T* 2/50 ZMの良いところは、フレアコントロールが抜群で、緻密なコントラストがあってこそ破綻のないフレアを
味わうことが出来るのですが、それを実践できている事。
もちろんスタンダードなダブルガウス型なので、開放では優しく絞ればシャープ、ボケもやや癖がありますが
滑らかすぎず、揺らぎのある写真らしさを感じさせてくれるボケを描きます。
知り合いの農家さんのお宅へお邪魔し、採れたばかりという小麦で作った小麦粉を使い、うどんを作ります。
子供が生まれてからも使い続けていますが、この造りの良さであれば二十歳を迎える頃まで、グリス補充など必要最小限の
メンテナンスで十分使えると感じさせてくれます。
永く使う事を考えた際、Mマウントであることも非常にポイントが高く、Mマウントであれば様々なミラーレスカメラにアダプター
を介して装着でき撮影出来るため、カメラへの依存も最小限で済みます。
個人的には、子供が二十歳になる頃に自分が使っていたレンズを欲しいと言ってもらえたら、カメラ好きにとってはしめたものです。
今、主流のAFレンズ達は、「瞬間」を写真に残すことに究極的に特化し続けています。
その恩恵は、他に代えがたいものですが、きちんとメンテナンスさえすれば、50年前のレンズであっても
普通に使うことが出来てしまう頑強なMFレンズも、また代えがたい魅力を放っています。
Planar T* 2/50 ZMは、ツァイスだからといって「期待を超える」というようなレンズではありません。
どちらかというと、描写も操作性もCarl Zeissのスタンダードでしかありません。
それはまるで、ライブとかお祭りなどのような一過性の楽しみというよりは、毎日を積み重ねる日々に近いのかも知れません。
安定した日々があることで、特別な日も、日々の少しの変化も楽しむことができる「基準」が自分の中に生まれる。
そんなことに気が付かせてくれるレンズです。
手にしたらしばらく我慢して使ってみてください。刺激的な描写も、目の覚めるような変化もありませんので。
けれどもある日、ふと気が付くと思います。緻密なコントラスト、フレアコントロール、絞りでの描写の変化、
滑らかではないが雑でもないボケ、それらが生み出す心地よい描写。
それらをゆっくりとレンズを操作して撮影することの楽しさを。
「増税前に買おう」は、単なるきっかけです。何十年と共に過ごすことが出来るレンズを手にすることへ、
「ぽんっ」と背中を押す言葉でしかありません。
お使いのカメラがミラーレスで、CarlZeissが気になるようでしたら、このレンズから始めることをお勧めします。
【今回の撮影で使用した機材】
・Carl Zeiss Planar T* 50mm F2 ZM
・Voigtlander VM-E クローズフォーカスアダプター
・SONY α7ボディ ILCE-7
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