新しい年を迎えてから、既に一週間が経過しました。
加速度的に速くなるような時間の感覚に、どこか辟易してしまいがちですが、カメラ業界について着目すると、各社が来るスポーツの祭典に向けて着々と動き始めたりと、盛り上がりを見せております。
そのような年始を迎え、過去の思い出に浸る暇もないようなせわしさが続きますが、さて、昨年は果たしてどのような一年だったでしょうか。
宜しければ、しばし去年の思い出話にお付き合いください。
・京都へ
去る2019年。
冷え込みが強まる師走の暮れに、私は旅行に出かけようと画策しておりました。
カメラという趣味の助けもあって、最近年に一度はそのような「撮影旅行」を楽しみにしている私。
冬景色が好きで、以前北陸に何度か訪れたことがありましたが、今回は嗜好を変えて、様々な神社仏閣の連なる京都へ行こうということに。
目的地が決まれば、あと肝心なのは、どのようなカメラを共にするかということ。
今までNikonばかり使っていた私は、よく考えてみると、それ以外のメーカーのフィーリングを、饒舌に語ることが出来ないと気づきました。
己の知的好奇心に従って、様々なメーカーの機材を実際に使用してみよう。ということで、今回はFUJIFILM渾身のデジタルカメラ、X-Pro3を伴って、旅行へ赴く事となりました。
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 14mm F2.8R)
お堂の中から見渡す冬の京都の野山。広角の抑えとして持ってきたXF 14mm F2.8Rが早速役に立ちました。
改めて観察すると、このようなお寺の構造というのは、仏教的な要素なのか、非常に洗練されているように感じます。実際に物理的に窓があるわけではない吹き曝しの構造になっていながら、角柱と屋根の部分、そして床板によって、そこにたたずむ景色を自己のいる環境から「窓越し」に、きわめて俯瞰的に眺めてるような錯覚を得ます。これも、神社仏閣ならではの「形」のひとつかもしれません。
14mmについては、絞り込んではいるものの、四隅まで端正な描写は素直で扱いやすい印象です。
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 35mm F1.4R)
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 35mm F1.4R)
著名な清水寺の舞台ですが、今は改修工事中。これはこれで直線的な配置が多くなり、なんだか不思議な魅力を醸し出します。
焚かれている香をアンダー目に切り詰めると、差し込む光と煙が独特の雰囲気の写真となりました。
一説によると、仏教において線香とは、その煙と匂いによって己の身を清めるものとされているそうです。
よって、写し出された煙の不均衡なさまは、今まさに我が身を清めんとしている姿なのかもしれません。
35mmは、このように絞ってパンフォーカスにするとキリリと、開放で撮るとボケ味も良好な優しい描写になります。様々なFUJIFILMユーザーの方がこのレンズを一度は所持するというのも、頷けます。
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 35mm F1.4R)
祇園の古い町並みを散策しているさなか、ふと目をやった壁には、朽ちた椿が、最期の時をかみしめるようにして居ました。
直線で人工的な壁や床に対して、点々と目を引く椿の色。「今年ももう暮なのだ」ということを感じさせる趣でした。
(X-Pro3 + XF 14mm F2.8R)
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 56mm F1.2R APD)
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 56mm F1.2R APD)
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 56mm F1.2R APD)
銀閣寺として知られる、慈照寺庭園は、様々な「形」であふれていました。
生い茂る樹木、竹林、庭園の土壌を覆いつくさんとする一面の苔。石や苔は、やはり日本人の心象風景として存在しているのでしょうか、荘厳な時間の流れを感じさせます。
起伏のある苔の一面を眺めていると、なんだかそれが波打っているような感覚を引き起こします。
ここで繰り出したXF 56mm F1.2 R APDは、アポダイゼーションフィルターを有するレンズで、レンズ中央部と周辺部で透過率の違う特殊なフィルターをレンズ内に設けることにより、描写性能はほぼそのままに、意図的にボケの輪郭をやわかくする効果があります。
滑らかな苔の質感と、ピント部分のディテールから、その効果がよくわかります。
冬の早い日の傾きによって、苔の上に竹林の影が直線に映し出されていました。
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 56mm F1.2R APD)
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 56mm F1.2R APD)
哲学者である西田幾太郎が思案しながら通ったとされる、通称・哲学の道。続く小径とともに流れる琵琶湖疏水の水路の脇、冬の重い緑の中に、目を引く小さな赤い実や花。こうしてみると、植物は様々な色や形があふれています。FUJIFILMのフィルムシミュレーションによる渋めな発色も、雰囲気があって良くマッチします。
余談ですが、普段一眼レフなどを使う機会が多かった私にとって、X-Pro3の撮影スタイルは小さな変化を与えました。
それは、縦構図への挑戦です。基本的に横構図で撮影することの多い私には、積極的に縦構図で情報量を切り詰めて撮影をすることができるX-Pro3はかなり新鮮です。
レンジファインダーライクと言われる本機は、その撮影スタイルも、レンジファインダーカメラと類似するものになるのかもしれません。
(FUJIFILM X-Pro3 + XF 56mm F1.2R APD)
行きたかった京都の街並みを探索し終えて向かった、伏見稲荷大社。想像以上に登山だな、なんて所感を持ちつつ登り切った先には、あたかも祝福するように、京都の街に光がさしていました。
こうして切り取った京都の街並みとともに、私は思い残すことなく、新年を迎えることが出来たのでした…。
・想像以上、X-Pro3
X-Pro3もさることながら、完全にFUJIFILM初心者だった私ですが、今回の旅行を通して、様々な感想を抱きました。
まず、そのディテールの再現性の高さ。正直に申し上げると、フルサイズデジタルカメラをメインとして使用していた私は、APS-Cサイズのデジタルカメラに対して、多少の穿った視点があったようです。しかしそこは、APS-Cサイズでフルサイズ以上の描写力を発揮すると語るFUJIFILM、X-Trans CMOSの面目躍如というところなのでしょうか。想像以上の描写力を堪能できました。
良く巷で囁かれることに、背面ディスプレイを展開しないと撮影画像の確認が取れないことについては、最初は確かに難儀しました。
撮影し、その後すぐ確認をするルーチンが体に染みついてしまっているのかもしれません。しかしそれは使っていくうちに慣れていきましたので、私にとっては大きな問題にはなりませんでした。
また、X-Proシリーズの伝統的な、切り替え可能なファインダーは、素晴らしい技術だと感じました。EVFの利便性は間違いがありませんが、スナップショットの感覚で撮影する際には、やはりOVFも重宝します。
結論としては、これからコンパクトなミラーレスシステムを構築したい方や、X-Proシリーズを使用してる様々な方に、自信を持ってオススメしたいカメラだと感じます。
堅実なパワーアップを遂げた本機。その気になるフィーリングは、是非店頭でお確かめください。
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