【マップカメラ情報】ローライのプラナー50ミリF1.4!
古くからのカメラ愛好家の間ではPlanar(プラナー)という“響き”は特別の
ものがあるようです。プラナーは現行の標準レンズの多くが採用している
ガウスタイプの先駆けで、その誕生は100年以上前に遡ります。しかし当時の
ガラス硝材に制約があったことと、コーティング技術が未発達であったことから、
標準レンズとしてはあまり注目を集めませんでした。
しかし、徐々に新たな硝材が発見・開発され、またコーティング技術の進歩
に伴って、標準レンズに採用されるに至ります。その光学特性はすばらしく、
ツァイスのカメラ用としては勿論、約半世紀前に二眼レフで世界を席巻していた
フランケ&ハイデッケ(F&H)社のローライフレックスに、またそのシステム性と
堅牢性から一気にスタジオ撮影のメイン機に伸し上がったハッセルブラッドの
標準レンズ(いずれも80mm)にも採用され、美しい印画を無数に作ってきました。
しかし、当時は大変高価だったこれらのカメラは一般大衆が簡単に手に出来る
はずもなく、長らく高嶺の花として憧れの的となったわけです。
“Planar(プラナー)”!なんと、心地よい響き!
そして今なお“プラナー”は、SONYがαマウントで、そしてコシナがZEISS
IKON用として採用し、すばらしいデジタル画像と印画を生んでいます。
さて、では話をプラナーの50mmF1.4に移しましょう。プラナーの50mmF1.4
と言えばヤシカ・京セラのコンタックス用が大変有名です。
このプラナー、「標準レンズの帝王」とも称されるほどその絞り開放ないしは
1、2段絞った時のボケ味の美しさと、絞りこんだ際のシャープネスと濃い色のり
で大変定評があります。またその立体感ときたら!こればかりは使って頂かない
となかなか分かってはもらえませんが、「うーん、さすが帝王!」と時々唸って
しまうほどです。これらは第一には勿論カールツァイスの優秀な設計に拠る
ところが大きいのでしょうが、それに加えて世界屈指のT*(ティースター)
コーティングのなせる技と言えます。
同じツァイスのレンズであってもT*コーティングがあるかないかでその
レンズの評価が変わってくるほど、このコーティング技術は優れていて、
コンタックス用のツァイスレンズには一部の例外を除いて、全てこのコー
ティングが施されています。
ところがです。ローライ用のそれはなんとこのT*をあえて採用しませんでした。
その代わりに「HFT」という文字が鏡胴に刻まれています。そう、ローライは
独自のHFTコーティングを施しているんです。因みにHFTはHigh Fidelity
Transparentの略だそうな。「高度に忠実な透明性」という感じでしょうか?
レンズ製造に多くのノウハウを有する“ツァイスのコーティング”を使わない
からには、F&H社は自社のコーティングによっぽど自信を持っているのでしょう。
実際、コンタックス用があるのに、ローライ用を改造してコンタックスで使う人
もいるくらいです。さあ、どんな写りをするか気になってきましたねえ。
上:ローライ用 下:コンタックス用
上の写真ではあまりよく分からないかも知れませんが、見た目では同じプラナー
でもコンタックス用とローライ用とではコーティングの色の違いはそれほど
大きくありません。が、T*コーティングとHFTコーティングとではやはり
写り方が違うというのが一般の見方で、プラナーの持ち味の柔らかさに関して、
今月(’08.9)の日本カメラで紹介されているようにローライ用の方がさらに
柔らかく写ると言います。むむ、“あのプラナー”よりもさらに柔らかい!
また、これもコーティングの違いゆえだと思いますが、若干アンバーよりに色が
傾くともいわれ、温かい雰囲気を出すにはもってこいです。
標準レンズの帝王がさらに優しく温かい!一度は使ってみたいレンズです!