【タイムズフォト】江戸城探訪 その2 激動の近代史 北の丸公園編
なかなか満足感の高かった江戸城本丸散策を終え、北の丸へ。徳川家の一族で御三家に次ぐ存在であった御三卿の田安家、清水家の屋敷があった場所です。
北の丸公園に入ってすぐの左手にある立派な騎馬軍人の銅像。(北白川宮能久親王像)この界隈は銅像多いです。この銅像の奥になにやら気になる洋館が。
東京都国立近代美術館 工芸館。華やかでありながら瀟洒と言うよりは均整の取れた美しさを感じさせる建物です。
※この写真は「SUPER-DANUBIA」28mm。うーん。レンガひとつひとつを解像しきれてないような・・
ファサード正面手前側突出部。ゴシック様式と言うのでしょうか?
両端と中央の窓の両側の柱状のものは「バットレス」と言って、構造体の外側への推力を抑えることによって安定させるための支持体で、下が広く、上に行くにしたがって細くなっていて見た目にもどっしりとした印象を与えます。
※ところでこの「ファサード」という言葉、建物外観の1番目立つ正面の部分の事をいう建築用語のようですが、とにかくカッコイイ響きなのでつい使ってしまいました。
赤いレンガと白い花崗岩がマッチして非常に格好のよい建物です。
札幌の北海道庁赤レンガ庁舎に似ている気もしますが、こちらのほうがシャープな印象です。
※この写真はバリオゾナー。先ほどの28mmと比べると細かいレンガひとつひとつまできちんと見せてくれているような気がします。
近づいてみてこの建物の素性がわかりました。
「旧 近衛師団司令部庁舎」明治43年の建物。
前述の通り現在は東京都国立近代美術館 工芸館として使用されています。
うーん図らずして「歴史的建造物」に遭遇です。
工芸品よりもむしろ、激動の歴史を見てきたであろうこの建物を見てみたくて中へ。
受付の方にお聞きしたところ展示室以外の階段とホール部分は撮影していただいてOKですよ、との事でした。有難うございます。
近衛師団と言えばエリート中のエリート部隊。
制服に身を包んだ青年将校がこの階段を駆け上がったりしていたのでしょうか。
(イメージは「はいからさん」の少尉みたいな感じ?)
階段部と入り口の真上にある応接室。
この近衛師団司令部では終戦直前にポツダム宣言受諾(敗戦)に納得できない一部の将校が師団長を殺害してニセの命令で近衛師団を決起させ、玉音放送の原盤である「玉音盤」を奪い、徹底抗戦しようとしたという事件がありました。(もちろん失敗に終わり首謀者の将校は自決)
そう思ってみると「激動の昭和」を感じさせるたたずまいです。
そして現在の北の丸の象徴「日本武道館」
この建物は1964年の東京オリンピックの会場のひとつとして建設され、柔道などの競技が行われました。
現在は「コンサートホール」としても名高い武道館ですが、その特異な形状のためか音響特性がよいわけではなく、それをカバーするために音響技術が発達した、との事です。
フード、またやってしまいました。
この建物のモチーフは法隆寺の夢殿。そういわれてみればなるほどと言う感じ。
てっぺんの「たまねぎ」は修復中か、覆いがかけられていました。
北の丸の出入り口、田安門をくぐり、ついに城外へ。
田安門を背にして右側のお堀を「牛ヶ淵」左側のお堀を「千鳥ヶ淵」といいます。
まだ早かったので見られなかったのですが、ここは桜の名所です。
右側「牛ヶ淵」の向こうに特徴的な建物が見えてきます。
この建物は「九段会館」
現在ホールやレストラン、ホテルとしての機能を備え、各種公演や式典会場、結婚式場として使用されています。
そして、かつての名を「軍人会館」と言い、予備役軍人のための宿泊、訓練施設として建設された旧軍施設です。
この建物もまた「激動の近代史の目撃者」。昭和11年2月26日の2.26事件発生時、ここに戒厳司令部が設置されました。
この28mmも強い光が入らない条件なら多少ましなようです。フードって大事ですね。
この鉄筋コンクリート造洋風建築に純日本風の城郭を思わせる屋根をのせた建築様式を「帝冠様式」といい、1930年代のナショナリズム台頭を象徴するものと言われています。
別名は「軍服を着た建物」。
ほかに「愛知県庁」や中国吉林省に現存する「旧関東軍司令部」などが帝冠様式として知られています。
確かに現代の目で見るとなんとなく一種の重苦しさを感じます。
ファサード壁面に見られる龍の顔のようなものは一種の「魔よけ」のようです。
他にも八角形の窓や、しゃちほこのようなものなど、細部のディティールには興味深いものがあります。
実は学生時代、私はこの近くの学校に通っていたのですが、「ここの屋上にビアガーデンがあってバニーガールが接客してくれるらしい」というウワサがありました。
(結局学生時代に行く機会はなく、確かめることは出来ませんでした。)
ナショナリズムの象徴的建造物とバニーガール。何ともいえない組み合わせです。
九段会館に隣接して「昭和館」という資料館があります。
ちょうど10周年と言うことで記念の写真展「ワーナー・ビショフ写真展~新しい日本と永遠なるもの 1951-52年~」が開催されていました。
このワーナー・ビショフと言う人はマグナム所属のスイス人写真家。
生き生きとしたスナップを堪能することができました。(入場無料でした)
そして激動の昭和史の締めくくりは千鳥ヶ淵の戦没者霊園と靖国神社。
戦没者霊園はひっそりとしたたたずまい。
時折訪れるご老人の、帽子を取って深々と頭を垂れる姿が印象的でした。
お城を見に行ったはずでしたが、北の丸公園編は「帝都探訪 激動の明治、大正、昭和史」と言う感じ。
しかしなかなかに好奇心を刺激されるお散歩でした。
ちょっと歩くだけで歴史的建造物につきあたる。なんとも贅沢なエリアです。
撮りたいものが次々と現れて、瞬く間にフィルムを使い切ってしまいました。
こういった場合、やはりデジタルのほうが便利と思われるかもしれませんが、一概にそうとは言い切れないと思います。
撮ってきた写真を見るため、「スキャンニング」という作業を通じて、否応でも一枚一枚と向き合う事となるので、「もうちょっとこうすれば良かった」「これは予想通り撮れたな」など反省が生まれ、結果として撮影時に以前より考えて撮れるようになったような気がします。(それが上達に直結しているとは言い切れないのが悲しいところですが・・)
スキャン後のレタッチに関しては「ネガは素材」と考えて、色調に関してはいじってしまっていますが、「彩度あげる」のと「シャープネスをあげる」のはやらない事にしています。
それをやってしまうと「負け」のような気がして・・何に負けるのかはわかりませんが。
これからも、思わずフィルムを無駄使いしてしまうような楽しいものを探したいと思います。
【撮影データ】
CONTAX RX
Vario Sonar 35-70mm f3.4 SUPER-DANUBIA 28mm f2.8
DNP CENTURIA 200
EPSON GT-F520でフィルムスキャン
Photoshopでリサイズ、レベル調整