【Leica】The World of Monochrome Ep. VI
『The World of Monochrome』第6回です。残念ながら今回の筆者である私はEpisode Ⅵと聞いてもピンときません。
あ、ちなみに今回掲載する写真たちはみなフワフワとした描写のものが多いですが、決して「ピンとこない」からではないです。
【M10 monochrom】と、伝説のソフトフォーカスレンズの復刻版【Thambar 90mm F2.2】で白昼夢の世界に迷い込んできました。
せっかくの撮影予定ですが外は雨です。久しぶりに早起きをしたというのに。
どんな写真を撮ろうかしらん、と、まずは朝食のパンを焼きたてで。
あつあつのうちにマーガリンをたっぷり塗ってから、この写真を見つつ頬張りました。もぐもぐ、なんだか夢の世界から取り出したようです。
ああでもないこうでもない、室内でこのレンズを使うのは私には少しむつかしく感じます。
ストロボを焚いてみたり、うんと絞ってみたり、机の上に出したままのマーガリンを見つけて慌ててみたり。
そうこうしているうちに少しづつ晴れてきました、よくあるパターンです。
もう昼下がり、小雨上がりのアスファルトを踏みしめに、家のすぐ近くをほんの少しだけお散歩。
所謂鉛色の雲に覆われてまだまだ暗い空。
そこに急に冷たい風が吹いたと思えば、先程までのお天気は嘘のように空が広がり、西日がじゃぶじゃぶと光を注ぎます。そのさまはまるで、一日の大半を照らし損ねた太陽が、焦って今日の分の日光を大盤振る舞いしたかのようで。
私も負けじと、焦ってカメラを向けます。
濡れたアスファルトはすっかり渇き、まばゆいのはもう春だからでしょうか。
春なのです、花々が頑張るおかげでこの時期の行動は大きく制限されます。
帰路、カフェインレスのおいしいコーヒーを挽いてもらって早々に引き上げましょう。
太陽もちょっと頑張りすぎたようで、すでに少し眠たそうです。
もうすぐ暮れ。
陽が射したあの一瞬、強烈な陽光を前にしたこのレンズたちの喜びようを見てしまうと、マジックアワーは自分の顔についた“優秀な二つのレンズ”にお任せしようという気になりました。
優秀、と言ってもコンタクトレンズが無いと何も見えないのですが。
午前中の暇がゆえによく片付いたお部屋でコーヒーを啜りながら、今日の成果を振り返ります。
語彙がそう多くはないので語り切れませんが、白昼夢の世界とはこんな感じなのでしょう。
人はモノクロの夢を見るという話も聞いたことがあります。
「もしかしたら、色付きの夢も実は全部モノクロで、色が付いたように記憶されてるだけかもしれん。」
そんな仮説を立てながら、真っ黒な液体はもう底をつきました。
夢中で切ったシャッター、撮った時のことはよく覚えてません。まさに夢のよう、です。
それとも、本当に白昼夢の世界に迷い込んでいたのかも。
今朝の残りのパンをトースターに放り込んで、大きな欠伸をひとつして、パソコンをぱたんと閉じて。
目の前の世界に色があることを確認して少し落ち着きます。
このカメラ、このレンズだからこそ感じられた、唯一無二の心地よい体験でした。
皆様にも少しでも体感して頂けたなら幸いです。