以前試写する機会を得たAPO-SUMMICRON SL50mm F2.0 ASPH.が未だに忘れられず、発作のように欲しくなる時がある。
既にライカにはMマウント用でAPO-SUMMICRON M50mm F2.0 ASPH.をリリースしており、持てる技術の粋を詰め込んだ比類なきレンズとして名を馳せているのはご存知だろう。
ではこのレンズからサイズ的な制約を取り払うとどうなるか?という問いに対しての1つの答えがSL用のAPO-SUMMICRON SL50mm F2.0 ASPH.なのだと思う。
実によく写るレンズで、欠点らしい欠点が思い浮かばない…強いて言うなら手が届きづらい価格ということだろうか。
線と線の交差、凹凸の面、ハイエストライトからシャドウまでのグラデーションと意地悪なシーンでも一切の揺らぎなく素晴らしい画を見せてくれた時は思わず「うーん」と唸ってしまった。
「味」は悪ではないし、作画する上で効果的に扱うことが出来ればレンズの「味」と呼ばれる要素も勿論好きではあるのだが、この「味」は殆ど介在せず実に淡々とよく写る。
「雑味がない」というのが正しいだろうか。光と影さえ美しければ、それらを美しいままに残してくれるのがまた素晴らしい。
階段の踊り場に赤いドレスを着た女性でも立っていれば、と少し悔しい思いをしつつの撮影。
静かなシーンでも克明に光を描く。寧ろこういった場面で本領を発揮するレンズであると感じる。
何度か別のレンズで同じ構図を撮影したことがあるが、今回もピンは街灯へ。前後の曖昧さはもちろんない。
これ1本でどこまでもいけてしまいそうな気になるレンズである。
いや、実際どこまでもいけてしまうのだ。Leica SL2と合わせればトリミング耐性も非常に高く対応できるシーンも多い。
ミニマルな構成の機材となるが撮影の幅は広がると考えてしまうと、諸々を整理して清水の舞台から飛び降りてしまうか…という気持ちになってくる。
昨今の状勢が一区切りつくタイミングが、好機到来なのかもしれない。その時は思い切って踏み出そうと思う。