『逍遥(しょうよう)』とは、気ままにぶらぶら歩くこと、
つまりは散歩です。
たとえば、天気の良い日に洗濯物を干していて、ふと出かけたくなり、ちょっとそこまで散歩をする。
こういったことを『逍遥』と呼ぶのだと個人的に解釈しています。
散歩よりも、ちょっとかっこいい存在です。
今回は珍しく足を延ばし、京都へ。
Leica M4とズミクロン M35mm F2 (8枚玉)を『逍遥』へ持ち出しました。
Leicaの伝説ともいえる初代ズミクロン M35mm F2 ですが、6群8枚構成のため8枚玉とも呼ばれています。
初めて触れる伝説のレンズの写りはいかに…。
フィルムはCineStill 800Tをチョイス。控えにはKodak PORTRA800もスタンバイ。
京都を訪れた目的の一つでもあった夜スナップ、それを叶えるために、映画用タングステン光下用のカラーネガフィルムCineStill 800Tを使用しました。こちらは映画用フィルムをスチル用にしたものでC-41現像で現像が可能です。現行品では珍しいタングステンフィルム、そして映画用フィルムからハレーション防止層を取り払った興味深い描写…語ると長くなってしまいますが、ひとまず見ていただきたいフィルムです。
控えのPORTRA800は筆者の中でどうしても押さえたい写真がある時に選ぶ守護神のような存在です。
複数の感度のフィルムを持ち歩くと、今何のフィルムが入っているのか忘れてしまうため、なるべく感度を揃えて持ち出すようにしています。以前カラーネガフィルムのつもりで撮影後、ボディから低感度のリバーサルフィルムが出てきて以来、筆者の教訓となっています。
それでは写真をご紹介します。
CineStill800Tは強い光源に対して滲む特徴があります。
これを求めていた…。と現像後のフィルムを手に取りながら筆者うなずいております。
初代ズミクロンは光量の少ないアーケード街でも難なく任せられるような描写力を持っていると感じました。
歩きながら一枚。光源の滲んでほわっとした雰囲気、独特の青みがかった色合い、フィルムならではのざらつき、満足です。
長秒露光にするのも面白そうだと思いましたが、電車感を残したかったため、シャッタースピードは1/15程度で撮影。
どれくらいの速度で通過するのか1回目の通過で目測しつつ、2回目の通過を待ち撮影しました。
反射板付きの自動販売機と標識が大変なことに…。フィルム写真は目で見ているのとはまた違った面白さがあります。
夜に撮りきることが出来ず翌日朝に延長戦となりました…!
このフィルムはデイライトフィルムとは違い強い日の光に当てるとハレーションが出ます。瓦屋根と空の境がまさにそれです。
感光した時のようなオレンジ色になり独特の雰囲気を楽しむことが出来ます。
ズミクロンの描写も相まって白い百日紅の花も繊細に描写されています。
ハレーションの中に佇むふわりとした花の描写がとてもきれいです。
丁度フィルムがなくなったため移動中にPORTRA800へ選手交代。
コントラストは低めの落ち着いた8枚玉ズミクロン、PORTRAシリーズのあっさりとした感じがマッチします。
鴨川沿いの風景を優しい描写で残してくれました。
逆光にも何とか粘りを見せています。白く飛んだ石畳にもかすかなディティールが残っており、レンズの階調性能に驚かされます。
ゆっくりリラックスしながら写真を撮ることは一つの発散方法でもあったりします。
何を考えながら撮っていたのかと考えるだけでも自然と頭が整理されます。
さて、もうそろそろ帰路につくというところ、
名残惜しさから非常用に隠し持っていたCineStill800Tを装填…。
CineStill800Tの注意書きでは静電気によりフィルムに赤や青の稲妻のようなものが映り込むことがあるとのこと。
これはフィルムを巻き取る際にゆっくりと巻き取ると起こりにくいようです。
初めて購入した時にはフムフム…と思っていましたが、実際あまり目にすることはなく、いつか見てみたいと期待を膨らませながら普段通りフィルムを巻き取っていました。そして今回初めて例の稲妻を全色コンプリート。まさにレアカードを引き当てたような感動でした。
自分で露出を決めてフレーミングした一枚に思いもよらぬものが映り込んでいたりすると、なお嬉しいものです。
これからも素敵な写りこみを期待して『逍遥』したいと思います。
現在CineStill 800Tは120フィルムのみの取り扱いとなりますが中判カメラをお持ちの方は是非お試しくださいませ。