2020年も残すところ僅かとなりました。改めて本年を振り返って見るとコロナに振り回された1年だったと言わざるをえません。
そんな状況下でも今後忘れることのない出来事がありました。それは30年以上愛用してきたNikon Fマウントとのお別れです。
厳密に言えば、買取価格が見合わず残されたフィルムカメラが防湿庫の奥に眠っていますが、使う予定が全くないことから、Nikon D5が私にとっての最後のFマウント機となりました。
年末の整理がてらPCに残されたD5の撮影データを改めて見返して見ると、自分には勿体ないくらい良いカメラだったなと思い知らされました。
2016年3月26日に発売された Nikon D5。我が家にやってきたのは約半月遅れの4月中旬でした。最初の試し撮りは成田空港で行っていました。
それまで使用しいてた Nikon D4Sと比べ、AFの喰い付きが格段に良くなったことに驚いたのを今でも覚えています。
ユナイテッド航空やデルタ航空のジャンボ機(B747型)の写真が何枚も保存されており、多くの人が渡航していたと想像できます。それが今では…。1日も早く元の姿に戻ってもらいたいものです。
その後は、重いと文句を言いながらも好きな鉄道や動物の撮影に重宝しました。
地元を走る京成電鉄から3500形の未更新車が引退する時のラストラン。私と同歳だったこともあり思い入れ深い車両です。階調豊かなD5が当時の色を綺麗に残してくれました。
水族館でのイルカショーでは、約12コマ/秒の高速連写で決定的瞬間を捉えてくれました。天井から吊るされたボールがイルカのタッチで変形しているのがはっきり分かります。
普段は全く動かないハシビロコウが、突然ポーズを決めてくれた時も逃さず撮ることができました。
今年は残念ながら中止になりましたが、秋の航空祭は毎年の楽しみ。メインイベントのブルーインパルスの飛行は今年、医療従事者への感謝飛行でも話題になりました。
Kasyapaの仕事を頂いた時も相棒はこのD5でした。重さ約3500gの「AF-S NIKKOR 180-400mm F4E TC1.4FL ED VR」は、私の肩にとどめを刺した張本人。
所有していた200-500mmとは比べものにならない上品な写りに感動したものの、持ち上げるたびに増す肩の痛みに耐えられず撮影を切り上げて帰社する羽目に。結果、軽い機材へのシステム変更を余儀なくされます。
2018年の秋は豊洲ヘの移転を目前にした築地市場に出掛けていました。人混みが苦手な私は、賑わう商いの様子ではなく、昭和の雰囲気を残す事務棟を多く撮っていました。
珍しいカーブした廊下はその昔、市場に荷物を運ぶ専用の貨物列車の線路に沿って建てられた名残だとか。
500mmの超望遠レンズにして、1460gという軽量化に成功した「AF-S NIKKOR 500mm F5.6E PF ED VR 」は、肩の痛みが蔓延化していた私にとって待望のレンズ。
未だ新品で品薄が続く人気ぶりを見ると、軽量化を望んでいる方がいかに多いかが分かります。
2019年になるとD5の稼働率がめっきり減ります。PC内にある他のフォルダを見ると代わりにZシリーズの稼働率が増えており実質、システム変更は昨年から始まっていたのかもしれません。
それでも航空祭など動きある被写体を狙うときは一眼レフが頼りになります。昨年は、F-4ファントムが飛ぶ最後の航空祭ということで百里基地へ赴いていました。
F-4は1974年より導入された戦闘機。軍事技術は常に最新という先入観があっただけに45年近く活躍したF-4には頭が下がります。当然その間、多くのアップデートが行われている訳で…。僅か4年でフルモデルチェンジするデジタルカメラは如何なものかと思ってしまいます。
D5最後の撮影はJR中央線の飯田橋駅のカットでした。肩が痛いと言いながらスナップ撮影に1131gもある「Carl Zeiss Milvus 35mm F1.4 ZF.2 」を使っていたのだから、自分の頭を疑いたくなります。
飯田橋駅といえば今年大きな変化がありました。写真でも分かるように駅が大きくカーブしているため、列車とホームの隙間が大きく、度々転落事故が起きていました。それを解消すべくホームの場所をカーブの無い新宿方面に移設したのです。なのでこの場所からの撮影はもう不可能になりました。数年後、昔の景色を振り返るたびにD5のことも一緒に思い出すことになるでしょう。
約4年間の短い付き合いでしたが、フラッグシップ機に相応しい堅牢性と高機能で未熟な私をカバーしてくれました。肩さえ痛くならなければ、もっと長く付き合いたかったモデルです。そして何よりニコン機が書き出す色が好きでした。
この先Dシリーズが進化を重ね、もっと小さく軽くなったらFマウントを手放した事を後悔する日が来るかもしれません。そんな日を願って…。