【Voigtlander】新年をマクロレンズで
年が明けてもう1週間と数日の時間が経ちました。
そろそろお正月気分は抜けてきましたでしょうか。
今回は屋外ではもちろん、室内でも撮影を楽しむことが出来るレンズをご紹介します。
決して正月気分が抜けなかっただとか、外は寒いしできるだけ家の中でのんびりして過ごしたいな、だとかそういった理由で決めたわけではありません。そういう気持ちが全くなかったと言えば嘘になりますが…
さて、まず屋内で撮影しようと思った時に問題になりがちなことがいくつかあります。
上の写真のように、豊かな陽光が差し込むカーテンくらいでしたら日中いつでも撮ることができますが、
室内という限られた空間の狭さ、日の当たらない箇所の暗さ、そして被写体があまり多く見つからないことは問題になるように思います。
その中でも狭さは特に深刻で、屋内という移動が制限される環境の中、最短撮影距離を考えつつ撮影することは意外と難しいです。
昨年のステイホーム期間にも何度か紹介されているとは思いますが、そんな時はやはりマクロレンズの出番ということになるでしょう。最短撮影距離も比較的短いものが多いので、テーブルの上で完結する撮影もお手の物です。
そんなわけで今回の主役はこちら。
「Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 65mm F2 Aspherical」です。
開放F2の明るさを持ち、最短撮影距離30㎝のハーフマクロレンズです。
名前に「APO」とある通り、色収差もばっちり補正されて目で見ている以上に完璧な一枚を写します。
緑と青の描写が特に好きです。
収差が無いため、余計な色が目に入らないことが心地よく鑑賞できる理由の一つ。
このレンズで撮影するために、当時ボディまで買い換えました。
それほど魅力的で、唯一無二の写りを見せてくれます。
(年末年始はろくに外出しないだろうな…)と思っていたので、自分のカメラにはあらかじめこのレンズを装着していました。
そして案の定、そのほとんどが室内でお料理や身近なものの写真が量産されることとなります。
淹れている最中のコーヒーはすっかり撮り忘れ、飲み終わった後の、しかも洗い終わった後の光景にもなってようやく「写真撮っとけばよかった」と思い撮った一枚。しかし案外こういったショットも良いものです。
作例を撮ろうとして撮っているというより、日常を写した一コマといった感じでしょうか。
当事者の自分はもちろんその時のゆったりとした気分も相まってなんだかほっこりとします。
それに、見てくださっている方々にとっても「とある人の生活の中の空気」を感じ得る、趣のある一枚ではないでしょうか。
水滴の一つ一つも明確に描写し、なおかつ開放の豊かなボケ感で立体感を表現する光の捉え方には何度でも驚かされます。
お餅は砂糖醤油か、きな粉でいただくのが好きです。
今年は人生初のみぞれもチャレンジしてみましたが、おいしいと言われる所以が分かったような気がします。甘い味付けや醤油の間に食べると口の中がすっきりして幸せですね。
お餅の、膨れてパリパリになったところの質感がまるで実物を見ているかのようです。
口の中に入れると最初少し痛くて、ぱきぱきと崩して味が染みわたるまでの過程が思い出されて、急にお腹が空いてきました。
幸い、まだお餅は少し余っています。
あ、お餅はくれぐれもよく噛んで、一口を小さめにしておくことも忘れずに。
ワイングラスのシャンパンの泡に弱い光が当たっていたので、思い切りよくアンダーにしました。
湧き上がる泡と液面に溜まった泡の静と動をご覧いただけるかと思います。
室内で撮影をするとき、広角レンズはもちろん、焦点距離が50mmのレンズでさえもちょっと広すぎるな、と感じる事がしばしば。私の場合はきっと部屋があまり綺麗ではないので被写体以外は極力フレームアウトさせたいという理由がほとんどですが、たとえお部屋が綺麗だとしても、写ってしまうと画として面白くないものが入ってしまうことはよくあります。
そんな時も、65mmであればある程度解消されるように思います。
広大な草原や大海原で65mmだとごくごく一部を切り取ることになってしまいますが、家の中だと丁度いい画角です。小物を大きく写して背景をぼかしたり、お料理はお皿全てが写らないにしても、メインにぐっと寄って撮影してみたり。余計な個所が写り込まないことで撮影のストレスは大きく軽減されます。
色収差が適切に補正されるからでしょうか、美味しいものが非常に映えます。
特に寒色に色が寄ってしまうとあまり魅力的に見えなくなってしまう「食べ物の撮影」ですが、シャープなピント面の前後僅かな個所にも目で見てわかる様な収差は発生していません。
本来私たちの眼では起こりえない「収差」、それが無いからこそのリアルな「見え方」を写真として写すことが出来ているのかもしれません。
夕暮れの窓を覗くと飛行機雲がふたつ、ゆっくりと流れていました。
お餅を食べ、ビールを飲み、年末年始の特番を見ながら部屋の中を写してみる。
年が明けずとも、明けようとも、変わらず人はせわしなく何かに追われているこの時期。
全ての喧騒から離れてじっくりと時間を噛みしめてみる休日も悪くはありません。