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【HASSELBLAD】907Xと、特別な日常

【HASSELBLAD】907Xと、特別な日常

2021年1月現在、市場には多くのデジタル一眼カメラが存在しています。

それらの多くは技術の粋を結集した超・実用的な機種。

デザインはシャープなテイストのものが多く、さながらスポーツカーのように、

高性能であることを、そのフォルムで体現しているような印象を持ちます。

そして、ミラーレスカメラという形態の普及に伴い、

プリズムやミラーボックスなどの構造を有する一眼レフカメラの時代と比較し、

デザインの幅をより多様なものへと進化してきました。

ただ、カメラの中には、変わらないことが大切にされている機種もあるはずです。

例えば、メーカーブランドを想起させる、変わらないからこそ魅力あるカタチも存在します。

Leicaのレンジファインダーデジタルカメラや、交換レンズ群が、よい例でしょう。

新しい技術を伴いつつも、優れたそのプロダクトデザインは、昔のままであり続ける。

享受する者にとって、変わらないからこそ安心できることは多くあると感じます。

HASSELBLADもまた、そのような「温故知新」が感じられるメーカーの一つと言えます。

1950年以降、6×6cmフォーマットの中判フィルムカメラとして、不動の地位を築いてきたHASSELBLAD。

代表的な機種といえば、Vシステムの500シリーズ。中でも500C/Mや503CWなどは、デジタル全盛の今でも、人気機種の一つです。

四角いカメラに輝くシルバーのエッジに、シックな黒いシボ革。初期の1600Fなどの機種からほぼ変わらない、伝統的なデザインです。

また、対応するVシステムは旧製品とはいえ完成されたシステムであります。

レンズはもとより、フォーカシングフード、スクリーン、フィルムバック、レンズフード、

巻き上げノブ、トライポッドプレートに至るまで、様々な用途のオプションが展開され、

様々な撮影者による、様々な撮影環境に応え、今の地位を得ました。

 

さて、そんなHASSELBLADですが、惜しむらくは、今はデジタルカメラ全盛の時代であるということ。

各種フィルムは値上がりを続け、現存してきた銘柄もその多くが失われました。

そんな今や逆境多きフィルムカメラにも、HASSELBLADを始めとするような数多くの銘機があるわけです。

「フィルムカメラのルックスで、デジタルカメラとして使いたい」そんな思いは、きっと多くの方が持っていらっしゃるでしょう。

そんな方に是非お勧めしたいのが、HASSELBLAD 907Xです。

 

907X+XCD 45mm F4P

HASSELBLAD 907X + XCD 45mm F4 P (SS1/1500 F4 ISO100)

 

本体のシステムは、交換レンズ・ボディ本体・デジタルバックの3つの要素で構成されています。

交換レンズはハッセルブラッドXマウント。デジタルバックはCFV II 50C。そしてボディ本体の907Xです。

907X本体の厚みはわずか3cm弱程で、ミラーレスシステムとして生み出されたXマウントの長所が体感できます。

さて、この機種がVマウントシステムユーザーにお勧めたる所以は、このデジタルバック CFV II 50Cに由来します。

このデジタルバックのマウントは旧来のハッセルVマウントシステムと同じ。

すなわち、往年の名機、500C/Mや503CWの後端に装着し、デジタルカメラとして使用することができるというのです。

いやはや、これぞ「システムカメラ」として銘打たれたハッセルブラッドVシステムの真骨頂と言えましょう。

最盛期だった20~30年ほど前にはデジタルカメラとして使うことなど誰も想像していなかったはずですが、

システムの互換性そのものに先見の明があったという他ありません。

 

907X+XCD 45mm F4P

HASSELBLAD 907X + XCD 45mm F4 P (SS1/125 F4 ISO100)

 

さて、そういった魅力も踏まえつつ、今回はVシステムには接続せず、軽いお散歩で907Xと併用しつつのインプレッション。

この907Xボディ本体こそ初出の機種ですが、実はバック部分であるCFV II 50Cは「II」と名の付く通り、CFV 50Cという前機種が存在しています。

CFV 50CはメディアにCFカードを採用。バッテリーはSONY製NP-Fバッテリーと互換性がありました。

ただしNP-Fバッテリーは本体下部にむき出しの状態で装着する必要があり、

SWCなどの広角レンズ付きボディを装着する場合、後方にせり出した三脚座がバッテリーに干渉する可能性に留意する必要がありました。

また、CFカードもCFV 50Cの発売した2014年当時としてはまだポピュラーなものですが、

読み取り端子ピンの物理的脆弱性など含め、正直使いやすいメディアという印象はありませんでした。

そういった些細なストレスは、後継である本機においてはすべて払拭されていると考えてよいでしょう。

バッテリーは内蔵式となり、メディアはSDカードを採用。背面モニターもチルト式タッチパネルになり、より便利になりました。

こういったインターフェースの改善がおろそかにならずしっかりブラッシュアップされるのは、とても良いことだと思います。

また、個人的には背面モニターを90°チルトさせ、ウェストレベルで撮影できるのが嬉しいポイントです。

 

HASSELBLAD 907X + XCD 80mm F1.9

HASSELBLAD 907X + XCD 80mm F1.9 (SS1/2000 F4 ISO100)

 

907X自体は、「これで本当に中判デジタルカメラなのだろうか」と疑問に思うほど、コンパクトな筐体に仕上がっています。

しかし、手に持ってみると、流石は44×33mmのセンサーを搭載するカメラ。ずっしりとした重さを感じます。

とはいえ、スペック値としての重量は公称では907X(CFV II 50C含む)のみだと、740g(バッテリー、メモリーカードを除く)程。

ミラーレスデジタルカメラという括りで見た場合では、フルサイズ相当の一般的な機種などとさほど変わりはありません。

重さを感じるのは、コンパクトなボディ・デジタルバックの筐体に対し、より「密度」を感じるからなのかもしれません。

この機種であれば、重さ自体もディスアドバンテージという印象よりも、

重厚感という意味で肯定的に受け止めていただける方が多いかと思います。

 

HASSELBLAD 907X + HCD 80mm F1.9

HASSELBLAD 907X + XCD 80mm F1.9 (SS1/2000 F2.8 ISO100)

ちなみに、今回907Xとともに懐に忍ばせたレンズは2本。XCD 45mm F4 Pと、XCD 80mm F1.9です。

ハッセルブラッドXマウントレンズは先んじて発売されたX1D 50Cなどに採用されるレンズシステムです。

XCD 45mm F4 Pは大変コンパクトなつくりで、35mm相当の焦点距離と、907Xとの併用では大変よい使い勝手に仕上がっています。

標準域クラスのレンズを検討する場合は、XCD 65mm F2.8が該当します。

余談ですが、6×6cmの感覚で、標準は80mmくらいかなあと思い今回XCD 80mm F1.9をチョイスしてしまいましたが、

(6×6cmの場合、35mm判換算時 クロップ倍率0.55となり、80mmは44mmとなるため、標準レンズとなる)

907X は44×33mmのセンサーサイズなので、倍率は0.79倍、80mmは63mmほどの焦点距離となり、若干中望遠になってしまいます。

907Xの見た目があまりにもHASSELBLAD然としていたがために、にうっかりミスをしてしまったというお話でした。

最初はいささかXCD 80mm F1.9の重さにたじろぎましたが、特有の描写性能の高さに、持ち出したことは僥倖だったと感じました。

ピント面はシャープで、立体感も十分に含まれた自然なボケになっているかと思います。

 

HASSELBLAD 907X + HCD 80mm F1.9 HASSELBLAD 907X + XCD 80mm F1.9 (SS1/2000 F1.9 ISO100)

 

XCD 80mm F1.9は開放ですと、上記のような高コントラスト状況だと軸上色収差が発生します。

軸上色収差は基本的に絞れば改善しますし、除去自体も現像ソフト上で比較的容易に行えるので、個人的にはあまり気にしていません。

それよりもなお、中判デジタルセンサーでF1.9という非常に薄い被写界深度を楽しめというメリットが私の中では先行します。

 

HASSELBLAD 907X + HCD 80mm F1.9

 HASSELBLAD 907X + XCD 80mm F1.9 (SS1/750 F1.9 ISO100)

以前、同じロケーションで、HASSELBLAD 503CX とCF 120mm F4を用い、同じようなアングルの撮影をしたことがありました。

その時の写真が下記になるのですが…、

HASSELBLAD 503CX + CF 120mm F4HASSELBLAD 503CX + CF 120mm F4 

現像から上がったのをワクワクしながらルーペで確認したら、ご覧のようにものの見事に手ぶれしていました。

この時は非常にがっかりしたのをよく覚えています。

その点、デジタルカメラは撮り直しがききますから、手振れしていてもその場で確認し、再度撮影することができます。

そういったわけで、小さな私のリベンジも達成することができました。

 

HASSELBLAD 907X + HCD 80mm F1.9

HASSELBLAD 907X + XCD 80mm F1.9 (SS1/350 F1.9 ISO100)

 

さて、描写性能を測る試し撮りには、「猫を撮影せよ」という考え方があります。(私がいま考えました)

絞り開放の状態で猫を撮影すれば、その猫のこと、もとい、その機材のことをよく知ることができるからです。

赤枠を挿入し、それに従いクロップしてみました。

等倍付近で見てみると、想像以上の描写性能の高さです。

私は光学設計者ではありませんので、饒舌に語ることはできませんが、

立体感と解像力を両立させるのは、かなり難しい事だと感じます。

 

 

私はフィルムカメラも好きですし、デジタルカメラとはまた違った魅力があると思っています。

私がもっともフィルムカメラに心揺さぶられるのは、「その時代に、フィルムカメラとしてそこにあった」という事実です。

もし907Xを所持していれば、デジタルで撮影したいときはデジタルバック CFV II 50Cをそのまま503CXに装着し、

またフィルムで撮影したいときはA12フィルムバックを装着し、臨機応変にスタイルを変えることができます。

これは、デジタルカメラとフィルムカメラをそれぞれ違う機種を使うのとは、また違った意味合いがあります。

そして、907X単体を所持する場合でも、その唯一無二性から、持っていてワクワクする体験を享受するこができるはずです。

907Xは、長年のハッセルブラッドユーザーや、フィルムカメラユーザーの、夢の機種と言っても過言ではないでしょう。

 

[ Category:etc. | 掲載日時:21年01月16日 20時00分 ]

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