ご覧いただいている『The MapTimes(StockShot)』では、多くのスタッフが日替わりで記事を投稿しています。
人が変われば作風も切り口も様々で、記事を書いている私達も他のスタッフの記事を楽しみにし、次のネタのヒントを貰っています。
そして私も3月末に投稿されたソフトフィルターの記事を見て、昔買ったソフトフィルターの存在を思い出しました。
防湿庫の奥から発掘されたのは「Nikon ソフトフォーカスフィルター Soft2」。私がカメラを初めてまもない頃に買った物なので30年近く前の代物です。
発掘したフィルターの事を調べようとネット検索すると、メーカーページの「ニッコール千夜一夜物語」が見つかりました。
ニッコール千夜一夜物語と言えば、銘玉ニッコールレンズの開発エピソードを紹介するニコンの人気コンテンツ。「フィルターなのに千夜一夜??」と少し驚きなながら記事を読み進めると、1枚のガラスでも数々の試行錯誤の上で開発されたフィルターであったことが分かります。そして今と昔で製造方法が大きく変わっていることも。
「古い製法で作られた昔のフィルターは貴重なのか?」
しばらく使っていなかったフィルターですが、次第に興味が湧いてきたので使ってみることにしました。
当時愛用していた「AF 70-210mm F4S」のフィルター径に合わせて購入したと思われる62mm径のフィルター。
ミラーレス機への移行でレンズの大半を処分してしまったものの、近接撮影用に残していた 「AF-S Micro NIKKOR 60mm F2.8 G ED」 が同じフィルター径だったので、今回はこのレンズを使うことにします。
訪れたのは、千葉県佐倉市。市北部の印旛沼側にある広場で毎年4月上旬に見頃を迎えるチューリップがお目当てです。
例年より作付け面積を減らしたとのことですが、広場のシンボルでもあるオランダ風車を中心に沢山の花を楽しむことができました。
しかし悔やまれるのは当日はの空模様です。光をにじませることで柔らかさを演出するソフトフィルターに対しこの曇り空では魅力半減です。
広場は線路に接しているため列車も一緒に撮影できます。背景の列車がボケに埋もれないようF8まで絞りましたが、白い花はソフト効果のおかげで柔らかい仕上がりに。早々にソフトフィルターの特徴でもある「絞ってもフレア効果が低下しない」が体感できました。
しばらく撮影を続けていると徐々に天気が怪しくなってきました。この場所は夏に稲作が行われる場所でもあり水が溜まりやすく、少しの雨でもすぐに泥濘んでしまうため降り出す前に別の場所に移動することにします。
移動すると天気が持ち直す不運。
辿り着いたのは旧佐倉藩の総鎮守でもあった麻賀多神社。参拝者は少ないものの1000年以上の歴史を持つというだけあって格式高い雰囲気を感じます。そんな厳かな神社をソフトフィルターで幻想的に仕上げました。
カメラを構えていると猫をお供に連れた参拝者が。よく慣れた猫だなと遠目に眺めていると、猫の方から駆け寄ってきてくれました。
三毛猫はほぼメスと言われてますから、この子も女の子なのでしょうか?
後で高級な餌でも要求されるのでは?と思うほど、サービス精神旺盛な子で写真を撮ろうと1歩下がってもすぐ足元にすり寄ってきます。
そんなかわい子ちゃんをソフト効果で美人に捉えました。
城下町でもあった佐倉には、今でも古い建物が残されています。資料館として残されている武家屋敷にも寄ってみました。
お屋敷の中には当時の甲冑や生活用品が展示されています。外の明かりを柔らかく取り込む障子を背景にすることで、光がいい感じに滲んでくれました。
明暗差がはっきりするとソフト効果がより明確になります。ソフトフィルターを使うことで、普段より光の回り方を意識するようになりました。
玄関に飾られていたサクラソウ。光が良い感じ当たっていたので、とても柔らかい雰囲気になりました。纏ったフレアは小さい花の生命力のようにも見えます。光の特性から、紫の花に対し白い花の方がフレアが強く出ており、被写体の色選びも重要と感じました。
武家屋敷からJR佐倉駅へ抜ける途中にある竹林の坂道「ひよどり坂」。頭上のはるか上まで伸びる竹を仰ぐとチューリップを撮影していた時が嘘のような眩しい日差しが顔を出しました。そして、それをソフトフィルターを通して見ると木漏れ日がキラキラに輝き、夢の世界のような感じに見えました。
フィルターエフェクト機能を搭載したカメラの登場もあり、ガラスのソフトフィルターを使ったのは実に20年以上ぶり。懐かしいを通り越して新鮮な気持ちで撮影することができました。そして、シーンによって効果の出方に差があるなど独特なクセが面白く感じました。
新たな発見もあったフィルター効果。マンネリ化しつつある自身の写真も考え方も柔らかくしてくれた様に思えます。