
【SONY】ZV-E10 先行展示 体験レポート
カメラマンやクリエイターはもちろん、多くのカメラ愛好家に愛されるミラーレス一眼カメラ「SONY αシリーズ」
APS-Cやフルサイズミラーレス一眼のイノベーターとして多くのユーザーを虜にしてきました。
静止画撮影機能をベースに動画撮影も可能という機種が各社多い中で、動画性能に磨きをかけた「α7S」や「CinemaLine」と呼称される「FX」シリーズなど、動画撮影に力を込めたシリーズを生み出している事でも一目置かれています。
約一年ほど前、ソニーの新機軸として発売されたコンパクトデジタルVLOGCAM「SONY ZV-1」
近年、動画投稿サイトやSNSで人気を博す「Vlog」コンテンツの作成に特化したカメラの登場は大きな話題を呼びました。
そんなZVシリーズに兄貴分のようなモデルが登場しました。その名も『SONY ZV-E10』
描写力に優れたAPS-Cセンサーを搭載した本機。ソニーのAPS-Cモデルと言えば現行の「α6000」シリーズが人気ですが、スチル撮影に重きを置いた6000番台に対して『SONY ZV-E10』は動画撮影に特化したモデル。いうなれば「SONY ZV-1」のフォーマットに「α6000」シリーズの性能と高画質を落とし込んだモデルという位置づけになるでしょうか。俄然興味が湧いてまいりました。
さっそくソニーショールーム銀座の先行展示会へ!実機に触れてまいりました。
ソニーを愛し、ソニーに愛されたいソニー愛用者の私がその熱き想いを紹介できたらと思います。
《SONY ZV-E10 外観》
本機の何よりの魅力はAPS-Cサイズのレンズ交換式ミラーレス一眼であるという事。有効約2420万画素CMOSセンサーを搭載しており、解像感や質感描写、ぼけ表現は「SONY ZV-1」より向上しています。また、スマートフォンやコンパクトカメラよりも暗所での高感度撮影に強く、光量が少ない場面でISO感度を上げても低ノイズで美しく動画・静止画を撮影することが出来ます。さらに、豊富なソニーEマウントレンズをすべて装着が可能。シーンによってレンズを選び、広角から望遠まで様々な画角を楽しむことが出来たり、開放が明るい単焦点レンズと組み合わせてボケを活かしたシネマティックな映像を高い表現力で撮影することが可能です。
まずはホワイトモデルで外観をじっくりご覧ください。「SONY ZV-1」でも後発ながら大人気だったホワイト、『SONY ZV-E10』では最初からラインナップされています。THE カメラ機材という風貌で馴染みのあるブラック、ポップなイメージで女性や若いユーザーに人気の出そうなホワイト。好みによって選んでいただきたいところ。
背面ディスプレイを見てみましょう。ソニーのAPS-C搭載機では初となる、バリアングル液晶を採用。ハイアングル・ローアングルの撮影に対応するのはもちろんVlogの肝となる「自撮り」が容易に。写りと画角を確認しながら撮影していくことが出来ます。レンズ交換式であることを活かして、広角レンズを装着すれば自分だけでなく広い背景も自在に自撮り撮影に入れ込むことが可能です。
続いて背面です。液晶上部にはモデル名と「4K」の文字が。このサイズ感でXAVC S 4K 30p までの高画質な内部収録が可能です。今や動画撮影においてひとつの指標となっている4K。Vlogだけにとどまらず、様々な映像作品でその画質を楽しめそうです。
そして操作系統ですが、ボタンとホイールは全て右手親指で操作できるようにまとまっています。手持ち撮影の際でも、モニターから目線を外さずに直感的に操作できるのは嬉しいポイント。特筆すべき点はデリートボタン右上に付いた「商品レビュー用設定ボタン」のマーク。「SONY ZV-1」から登場したこの機能はもちろん本機にも継承されています。商品紹介の動画を撮る中で、見て欲しい商品をカメラにグイッと近付けても顔認証が優先されてしまい、肝心の商品にピントが合ってくれないという事があります。このボタンを押すと、近付けられたものに素早くピントが移るようになるので、顔を隠したりせずスムーズに撮影することが出来るのです。
実際に「商品レビュー用設定」のON/OFF を比較してみました。人物ではなく犬の置きものなので、多少違いがあるかもしれません。ご了承ください。見比べてみると、設定OFFの状態でもなかなかピントの写りは早いのですが戻る時に少し反応が遅れ、ピント位置が迷っているように感じます。ONにしてみると、かなり高速でピントが犬、手、と移り変わっているのが分かります。戻りの時が特に分かりやすいでしょうか。どうやら、このボタンをONにすると平常時は顔認証が作動し、画角の近いところに別の被写体が割り込んでくると即座にマクロモードに切り替わるような挙動になっているようです。
グリップ上部です。ソニーユーザーの皆様であれば、この部分が一番このモデルの根幹を担っていることにお気づきでしょう。まず、電源のON/OFFは今までと変わって左右のスライド式スイッチに。一目で電源が入っているのかわかる、視認性の高いデザインです。その横にはこれぞ動画機と言わんばかりに、大きな録画スタートボタン。ボタン周りが一段くぼんでいて感触で分かるので、被写体を確認しながらカメラを見ないでも押すことが出来ます。グリップの上には静止画のシャッターボタンと、電動ズーム用のズーミングレバーを搭載。APS-C機ではこちらも初めての実装となります。キットレンズの『E PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSS』を始めとした電動ズーム対応レンズをこちらで操作できることはもちろん、単焦点レンズ使用時でも「全画素超解像ズーム」を使う事で最大約2倍のズームを画質劣化を抑えながら行うことが出来ます。
ソニーだけでなく、様々なメーカーのカメラに搭載されているモードダイヤル。マニュアル撮影や絞り優先、または動画、カスタム設定への素早い切り替えが出来るダイアルが本機は非搭載です。その代替としてついているのが「静止画/動画/S&Q」というボタン。こちらは押すたびに「静止画撮影→動画撮影→スローorクイックモーション撮影→静止画撮影…」と三つの撮影モードが切り替わってループしているという仕組みになっています。こちらの挙動は、上の動画でご覧ください。
この設定はそれぞれ分離していて、たとえば「静止画はマニュアル設定で自分で決めながら撮りたいけど、動画はカメラ任せでプログラムオート!」というような使い方が可能です。
そしてもう一つ。C1(カスタムボタン)にはデフォルトでぼけ調整機能が設定されています。これは、ボタンを押すと絞りが変わり背景ボケのぼけ量が変わるというもの。背景を大きくぼかして人物を引き立たせて見せたいときに素早く切り替えが出来て便利です。ちなみに、C1とデリートボタンは取り上げた機能がデフォルト設定になっているだけなのでその他に良く使う機能があれば割り当てることが出来ます。「商品紹介はしないけど、手ブレ補正のON/OFFをこまめに切り替えたい」など用途に合わせて活用できます。
外観の最後は底面部分。底蓋を開けるとバッテリー室とメモリーカードスロットが出てきます。「SONY ZV-1」はコンパクトデジタルカメラということでバッテリーもコンパクトなものが使用されており、屋外での長時間撮影等では電池残量が気になるケースが多々ありました。『SONY ZV-E10』は歴代のAPS-C機と同様に「NP-FW50」が使用できるため、バッテリー容量も安心です。また、個人的に「SONY ZV-1」で唯一と言っていいほど気になっていたのが充電用の端子がUSB Type-Bだったことなのですが、さすがソニー。本機では端子が互換性の高いUSB Type-Cになっており、外出先でスマートフォンと同じケーブルを用いてモバイルバッテリーなどで充電することも可能。一石二鳥です。
メモリーカードスロットはメモリースティック デュオ・SDメモリーカードが使えるマルチスロット仕様となっています。余談ですが、この項目を見た時に「そういえばPSPで使っていたメモリースティック PRO デュオ、まだ机の引き出しにあったかな…」と懐かしくなる人も多いのではないでしょうか。互換性を切り捨てることなく、最新機種にもマルチスロット仕様を盛り込んでくれるのは実用の是非はともかくとして、なんとなく嬉しい気持ちになるものですね。
《ZV-E10と類似機種との比較》
・α6400
左 ZV-E10 / 右 α6400
まずは同じくAPS-Cセンサーを搭載し、サイズ感なども似ている「SONY α6400」との比較です。
キットレンズも同じものなので真正面からだとほとんど判別がつきません。背面に回ると、大きな違いがあり区別がつきますね。一番の違いはファインダーの有無。「SONY α6400」は静止画撮影をメインに作られたモデルですので、このコンパクトな造りながらしっかりファインダーが付いています。ではVLOGCAMである『SONY ZV-E10』にファインダーは不要なのか?という疑問が出てきます。例えば、室内なら良くても屋外の日差しが強いシチュエーションでは液晶は見えづらくなるでしょうし、あれば便利なのは間違いありません。しかし「気軽に動画撮影を」というカメラコンセプトを考えた時に、動画撮影ではシチュエーションによって使用頻度の変わるファインダーをあえて取り除き、よりコンパクトで手にしやすい価格に収めることが出来た、と考えるべきでしょう。そういった意味で、価格差のあるこちらの二台はそれぞれの魅力があり、しっかり住み分けされていると言えます。
左 ZV-E10 / 右 α6400
背面液晶も『SONY ZV-E10』は前述のとおりバリアングル液晶、「SONY α6400」はチルト液晶とそれぞれモデルの個性にあったものが採用されています。ご存じの方も多いとは思いますが、「α6000」シリーズのチルト液晶はファインダーがあることも含め自撮りモードにできません。そういった用途で考えると、やはりバリアングルは便利ですね。
左 ZV-E10 / 右 α6400
一番違いを感じられるのはボディ上部かもしれません。「SONY α6400」は内蔵フラッシュが搭載されていて、その開スイッチが背面に付いています。『SONY ZV-E10』では、それらが取り除かれた代わりに「SONY ZV-1」から受け継いだ高い集音性能を持つ指向性3カプセルマイクを中央に配置。その横にウインドスクリーンを装着したり、高音質を約束するマイクなどのオーディオ機器をとりつけるマルチインターフェースシューが並んでいます。
グリップ付近も大きく変わっており、シャッターボタンと同化している電源ON/OFFスイッチが独立していたり、モードダイヤルが切り替えボタンになっていたりと『SONY ZV-E10』はなるべく少ない動作で撮影を始めることに特化している、と言えるのではないでしょうか。
筆者が注目したのはストラップの取り付け部分。『SONY ZV-E10』では従来機の三角環を介するシステムが撤廃され、ボディから直に取り付けスペースが出ています。恐らくですが、動画撮影時には三脚や電動ジンバルとの相性を考慮してストラップをそもそもつけないという事が多いです。そうすると、従来の造りでは三角環がボディにカチカチ当たってノイズが入ってしまいます。なので三角環が無くてもストラップが取り付けられる機構にすることで、「付ける派 / 付けない派」のどちらも使いやすいデザインとなっています。
・ZV-1
左 ZV-E10 / 右 ZV-1
冒頭で兄貴分のような存在と書きましたが、実際に並べてみるとなお一層そう感じます。非常に類似点が多く、よく似ていながらサイズ感が一回り違うというイメージ。さて、いきなり革新的な部分ですがこの2商品、新品時価格も非常に似ています。『SONY ZV-E10 パワーズームレンズキット』より「SONY ZV-1」が1割ほど高い価格設定。この部分、機能面で大きな差がないと感じるので何が要因なのかなと考えてみたのですがその差は「レンズ」かなと思います。「SONY ZV-1」に搭載されているのはカール・ツァイスのバリオ・ゾナー。画角はフルサイズ換算で約24-70mm、F値は変動式ですが1.8-2.8と望遠端でも明るく、非常に使いやすい銘レンズが搭載されています。センサーサイズは小さいものの、カメラに最適化された光学的に優れるレンズは描写力を高めてくれています。同スペックくらいの交換レンズを『ZV-E10』に取り付けようとすればこの価格差の中では手にすることは出来ないかな、と思いますのでこの2台で「どちらにしようかな」と悩まれるときはこんなところも加味して頂くと良いかと思います。
左 ZV-E10 / 右 ZV-1
上部の比較です。ボタン体系も非常に似ているな、という感想ですがやはり「SONY ZV-1」のコンパクトさはこうやって見てみると際立ちます。逆に言えば、「SONY ZV-1」が作ろうとしているムーブメントをAPS-Cのフォーマットに丁寧に落とし込んだなと思います。その中で大きく用途に関わってきそうなのがグリップでしょう。やはり『SONY ZV-E10』の深みのあるグリップは手持ち撮影で安定感が生まれます。「SONY ZV-1」はグリップに装着しての使用感の良さも一つの長所なので手持ちでガシガシ撮っていく場合には軍配が上がりそうです。
・α5100
左 ZV-E10 / 右 α5100
最後の比較は「コンパクトなAPS-C機で自撮り可能といえば」という筆者の思いから行いました。NEXシリーズからソニーを愛用している者にとっては「やっとこのモデルが現れてくれたか…」と感慨にふける方もいらっしゃるのではと思います。私だけかもしれません。
左 ZV-E10 / 右 α5100
バリアングルではなくチルト液晶なのですが、ファインダーが無いため完全にチルトアップすることが出来る「SONY α5100」
この状態でよく自撮り撮影をした思い出がよみがえります。
左 ZV-E10 / 右 α5100
「ボディよりマウントが大きい」という衝撃的なデザイン。初めて見た時、軽量化をここまで突き詰めることが出来るなんて…と驚きました。「撮影を日常的に楽しんでもらいたい」というスピリットはきっとこの時から培われ、今なおソニーの中で不動のアイデンティティなのではと感じます。時を経て登場した『SONY ZV-E10』に継承され、色々な人のクリエイティビティをくすぐってほしい。そう願うばかりです。
《サードパーティーレンズのAF駆動》
ソニーEマウントと言えば、純正レンズのラインナップが素晴らしい事は言わずもがな。『ZV-E10』の性能をフルに活かすには純正レンズを組み合わせたいものです。しかし、サードパーティー製にも魅力的なレンズ群が揃っているのもまた事実。すでに持っている、あるいは同時購入して活用したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
今回は「SIGMA Contemporary 16mm F1.4 DC DN(ソニーE用)」と「TAMRON 11-20mm F2.8 DiIII-A RXD B060S (ソニーE用/APS-C専用) 」という2つの人気レンズを実際に組み合わせて記事上部の要領で「商品レビュー用設定モード」でのAFの駆動を試してみました。
いかがでしたでしょうか。確かに比べてみると、食いつきからピントが戻るまでに少しだけタイムラグがあるように感じます。しかし、実用に適わないほどではありませんし十分に高速です。ピントが迷うようなそぶりもどちらのレンズも見受けられませんでした。
1パターンの検証ではやや物足りない所ではありますが、従来のαシリーズがサードパーティー製レンズでも素晴らしいパフォーマンスをしてくれることを考えてみても『SONY ZV-E10』でもぜひ、気になるレンズを使って頂きたいと思います。
いかがでしたでしょうか。すべての魅力はお伝えしきれていませんが「より動画撮影が身近に」なる。そしてもっと動画撮影が好きになる1台に仕上がっていると感じました。今から発売日が待ち遠しくて仕方ありません。
2021年9月17日発売。動画フリークの方は勿論、これから動画をはじめてみようという方もぜひご検討ください。
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