【撮影レポート】Nikon Z6II + ProRes RAW|NIKKOR Zレンズが捉える映像の世界
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ニコン初のフルサイズミラーレスカメラ「Z6」「Z7」が鮮烈なデビューを飾ってから3年。レンズ・ボディ共にラインナップが充実してきた「Z マウントシステム」の魅力に迫る特別企画。今回は、圧倒的な描写力を誇る「NIKKOR Zレンズ」と、RAW動画出力にも対応する最新機種「Z 6II」を使用した撮影レポート。作例カットを交えながら実際の使用感などをお届けします。撮影の舞台は、築93年の歴史ある古民家と海。全編4K RAWで収録した映像作品をぜひご覧下さい。
SPECIAL MOVIE
目次
NIKKOR Z 50mm F1.2 S
「名画のごとく、主役が輝く」とキャッチコピーの付いたニコン渾身のレンズ。私自身、Zマウントを使うなら絶対に試したいと思っていた一本で、開放F値1.2がもたらす大きなボケにピント面のキレが被写体を美しく浮き上がらせてくれました。ノーライト撮影でしたが、自然光やその場の光源を味方につけながら綺麗な画を出してくれます。言葉で説明するのが難しいのですが、必要以上にカリッとすることなく、余裕のある解像感、品を感じさせる描写はこれまで触ってきた50mmとはひと味異なり、このレンズ特有の世界があると感じます。
動画撮影の味方「瞳AF」機能
Z 6IIの「瞳AF」機能は動画でも優秀で、F1.2の浅い被写界深度でも画面内に瞳が入ると自動で検出してくれます。その精度は非常に高く、今回の撮影でも人物の動き・カメラの移動にもきちんと対応してくれました。タッチパネルによるフォーカスポイントの変更も可能なので、被写体の動きに合わせてスムーズなフォーカスが可能です。
フォーカスブリージングに対応
フォーカスを移動した際に生じる画角変動をブリージングと言います。動画撮影では、ワンカットの中でフォーカス操作が行われるため、この現象が起こると見難い映像になります。「NIKKOR Z 50mm F1.2 S」に限らず、「S-Line」では、この現象を抑えた設計がされており、フォーカス送りの際にも自然な映像演出が可能です。
NIKKOR Z 85mm F1.8 S
横顔でのカットですが、「瞳AF」も問題なく動作してくれました。ピント面で捉えた目元はシャープで、髪や衣服の質感、ボケ感も申し分ない描写です。質量は約470gですので、ジンバルとの組み合わせも良さそうです。Zマウントレンズの「F1.8シリーズ」は現時点で「20mm・24mm・35mm・50mm・85mm」と一通りの焦点距離が揃っています。
NIKKOR Z MC 105mm F2.8 VR S
外からの自然光が柔らかく回り込む室内。肌の質感、手指の立体感も美しく、見たままの雰囲気、空気感まで再現してくれます。NIKKOR史上最高画質と言われる中望遠マイクロレンズ、4Kではなく8K撮影でも使ってみたいと感じさせる見事な写りです。
撮影を通して感じたのはNIKKORレンズならではの自然な立体感や質感表現は動画でも素晴らしいという点。映像制作の様々な場面に一眼・ミラーレスカメラが使われるようになり、写真機にも動画性能が求められることが多くなりました。これまでは動画の解像度や収録形式などボディの動画性能に注目が集まることが多かったと思いますが、今回はRAW収録、写真同様に撮影の入り口となるレンズ性能がより重要となります。フォーカスブリージングの抑制やSTM(ステッピングモーター)による駆動音が極めて小さいオートフォーカスなど動画撮影との相性も抜群です。また、「マウントアダプター FTZ」を使うことで一気にFマウントレンズの選択肢も増え、コストパフォーマンスの高いシステムを組めるというのもニコンで動画撮影をする大きなメリットです。
ProRes RAW収録
Z 6IIは、4K・フルHDの12bit RAW動画出力が可能です。動画のRAW収録と言えばシネマカメラの特権でもありましたが、一般的な写真機でもRAW収録が楽しめる時代が到来しました。さて、Z 6IIでのRAW 動画出力機能に対応しているのは「Atomos」「Blackmagic Design」社製の外部レコーダー。使用する外部レコーダーによってRAW形式が異なり、Atomosは「ProRes RAW」Blackmagic Designは「BlackMagic RAW」、ユーザーの撮影・編集のスタイルに合わせて選ぶ事が出来ます。
撮影セッティング
今回はZ6IIと組み合わせる外部レコーダーにAtomosのNINJA Vを選択しました。Z6IIとNINJA Vは相性が良く、Z6II側のRECボタンに連動して自動的に録画を開始、解像度やフレームレートの識別までしてくれます。NINJA V側で細かい設定をしなくても済むので、現場でも撮影をスムーズに進められました。収録メディアにはSONY「AtomX SSDmini」を使用。Z6IIからのRAW出力はHDMIケーブル1本で対応するので、ケーブル周りもシンプルにまとめられます。※RAW動画出力は、有償設定申し込みが必要になります。詳細はニコンHPにて。
露出の見極めには輝度波形モニターを活用。レンジの広いRAW収録であっても黒つぶれや白飛びしてしまった情報は戻せないので収録時のモニタリングが大きなカギとなります。
NINJA Vにはフォルスカラー、ゼブラといった露出を監視するアシスト機能やピーキング、等倍・拡大表示などのフォーカスアシスト機能も充実しています。これらの機能は録画中でもシームレスに切り替えができるのでRAW収録を強力にアシストしてくれました。プレビュー機能も付いているので収録後の素材もすぐに確認が出来ます。
ProRes RAW編集
編集にはAdobe After Effectsを使用。Windows環境の場合、Appleが提供している「Apple ProRes RAW for Windows」をインストールすることで、 Premiere ProやAfter Effectsでもネイティブに扱えるようになります。ProRes RAWで記録されたファイルは撮像素子からの情報をそのまま収録するので、編集時にいわゆる“現像”を行う必要があります。まず、今回はグレーディングが行いやすいようにニコン独自のカラースペース「Rec.2020/N-log」に変換してから編集を進めました。
カラースペースの選択では、PanasonicのV-Log、CanonのC-Log2など、他社のLOGへ変換して編集を進めることも可能です。もちろん、リニアからLogへ変換せずに編集するなど、ユーザーに合わせた柔軟なワークフローが組めるのもRAWの強みと言えるでしょう。
夕暮れ時、空のグラデーションの描写。無理な補正をしなければ、バンディングなどの破綻も見られず、思い通りの方向でグレーディングを進めることができました。LogやRAW収録において、グレーディングは作品に命を吹き込む作業。同じ素材であってもクリエイターによって色調・印象が大きく変わるが故に、この行程はとても楽しく、実に奥が深いと感じます。ちなみに、Final Cut Proでは、バージョン10.4.9以降でISO設定、色温度の調整にも対応しているので、Adobeユーザーとしても今後のアップデートでの対応に期待したいところ。
RAWデータのため、ノイズリダクションなどの現像プロセスも必要に応じて行います。N-Log撮影時は ISO感度のベースがISO800~なのに対してRAW収録時は低感度側からの撮影が可能で、日中のカットではノイズが気になるシーンは殆どありませんでした。個人的な印象としてはISO800ぐらいから暗部にノイズが目立ってくる印象です。作品内の海辺のカットでは、ISO640~1250で撮影。ノイズリダクションを行っています。
まとめ
撮影を終えて感じたことは、Z 6II + ProRes RAWが捉える映像の美しさ。内部収録と比べると圧倒的に豊かな表現力を持っており、NIKKOR Zレンズの持つ描写力を余すことなく記録してくれます。RAW収録は少し敷居が高い印象を持つ方が多いかもしれませんが、慣れてしまえば撮影自体は非常にスムーズでZ 6II + NINJA Vという組み合わせは安心感があり、ProRes RAWの収録スタイルは多くの可能性を秘めていると思います。Zシリーズ初の8K映像にも対応したフラッグシップ「Z9」の今後の登場も含めて、Nikonの動向には目が離せません。