【Voigtlander】NOKTON 75mm F1.5の甘美な誘惑
戦前か戦後か。コーティングはあるのか。どこの国で何本作られたのか。
仕事では最新機材の撮影や使用感を語る一方、プライベートでは、ほぼオールドレンズしか持っていない変人に育ってしまいました。
今回はその「ほぼ」から外れた1本、私が唯一所有している現行レンズのお話しです。
『Voigtlander (フォクトレンダー) NOKTON 75mm F1.5 Vintage Line Aspherical VM』
子供が2人が居るのですが、思い出の写真のほとんどがポワンとしていたり、背景ボケがザワザワしている。
「これはね、当時世界一の明るさを誇ったF1.5のレンズなんだよ」なんて事は妻に通用するわけがなく「なんか写真が古臭い」「モノクロ写真は嫌だ」と一蹴される日々。そりゃあ友人の『Canon EOS 6D』の方が綺麗に写ります。
そこで「ちゃんと写るレンズ」を探すことにしたのですが、現行ライカレンズをポンポン買えるほどの財力は残念ながらありません。
そんな時、75mmでF1.5という魅力的なレンズがフォクトレンダーより発売されたのです。
普段はプロミネント用の旧フォクトレンダー・ノクトン50mmをライカに付けて撮っている私。
「ちゃんとF1.5じゃん。ノクトンらしくてイイね」と妙なポイントで好印象を抱いた私は、珍しく下調べをあまりせず購入を決意。
「ポワンとしていても、それはそれで良い」と訳の分からない言葉で自身に暗示を掛けて購入ボタンをポチりました。
まず、見た目がカッコいい。
絞り環のくびれ、フードまで続く一連の造形美。いい形をしています。
75mmというと「中途半端」に思えるかもしれませんが、レンジファインダーだと使いやすい画角です。
標準画角のレンズと同様に0.7mからピント合わせが可能で、被写体に寄ることのできないM型ライカでは大きなメリット。
私が使用している『Leica M9』はファインダー倍率が0.68と低いため、本来なら望遠寄りのピント合わせが不利なのですが、そこはマグニファイヤーで倍率をカバーすることに。
装着しているのはMS-OPTICS製の1.35倍マグニファイヤー。倍率は0.918となり、銘機『Leica M3』とほぼ同じファインダー倍率になります。私の場合、使用するレンズは基本50mmなので28mmのフレームは見えなくてもへっちゃらです。
絞り開放からピント面は文句ナシの解像感。
最短距離では収差が少し残って柔らかめの印象です。
絞り開放での周辺はジワリと滲みます。これがまた良い感じ。
初詣のおみくじは「吉」でした。しかし、妻と子供2人は皆「大吉」という…
引きで撮るときは50mmより1歩下がるイメージで。
掲載写真は全て開放F1.5でした。
うーん、良いレンズ。解像感が、ボケ味が、とか性能云々ではなく、撮れる画が完全に好みです。
残存収差を“雑味”ではなく“旨味”だと思っている方に「ちゃんと写るレンズ」としてオススメしたい1本かなと。
同価格帯で『APO-LANTHAR 50mm F2 Aspherical VM』という完全無欠の50mmレンズもありますが、私の場合は「50mm枠は趣味(遊び)で残しておきたい」という妙なこだわりがあったため今回は見送りました。むしろ『HELIAR classic 50mm F1.5 VM』の方が欲しいかも。
旧フォクトレンダーも、今のフォクトレンダーも素晴らしいレンズ、他にはない魅力のレンズを作るブランドだなとつくづく思うのです。次の50mmはF1ですか…非常に楽しみです。