時は令和4年。
野鳥撮影にも様々な選択肢が生まれ、マイクロフォーサーズ機で軽快に超望遠を愉しんだり、フルサイズ機に2倍テレコンを装着してF値が11を超えてもAF出来る時代がやってきました。
そんななかでも際立った存在感を示しているのが、Canon RF800mm F11 IS STMです。
一眼レフ用のEF800mm F5.6L IS USMが4,500gという超重量級レンズだったのに対して、本レンズのF値は2段暗くなるもののなんと1,260g!
この重さは、何と焦点距離が約1/10のRF85mm F1.2 L USM(1,195g)とほぼ一緒なのです!
EOS R5に装着し持ち上げてみると、ヒョイッという言葉が似あうほど軽々持ち上がりました。
本体は樹脂製ですが、ボディではなくレンズを持って持ち上げてもも「ギシギシ」と軋むようなことは全くありません。それは沈胴状態でも、レンズ繰り出し状態でも一緒です。
このレンズは絞り機構を持たない為、F値は11で固定されており、このことを不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながら鳥撮影時の被写界深度は充分足りていますのでご安心を。(それはこれからの作例でご覧いただければと思います)
まずはAFエリアについてお話します。
キヤノンのホームページには、「本レンズ使用時には、カメラの測距可能エリアは、撮像面の横:約40%×縦:約60%の範囲になります。」という記載があります。実際に撮影した写真で表すとおおよそこのようになります。
「木にとまっているカワセミ」の様に、じっとしている被写体ならフルサイズでも良いのですが、メジロやシジュウカラなどちょこまかと動く小鳥を狙うときは流石に大変です。
AFエリア内に捕捉しなきゃ!と思うと焦ってしまい、手振れを起こしたり構図が悪くなったりしがちなので、可能な限りクロップを使用した方が良い写真が撮れる確率が上がります。
そのことから、組み合わせるカメラはクロップ後も1,760万画素を得られるEOS R5がお勧めです。
これは1昔前のAPS-C機程度の解像力で、高性能なタブレット端末の画面解像度が550万ドット程度になってきている2022年でも十分楽しめます。ダブルタップで等倍にした際の鳥の目や羽にうっとりできます。
仮にこれがEOS R6ですと、クロップ後は790万画素まで下がってしまうのでフルサイズモードで使用した方が良いと思いました。
しっかりと合焦していれば、後編集無しでも非常にシャープな写真が得られます。
EOS R5の「顔+追尾優先AF」でここまでしっかりと撮れる確率はおよそ3~4割でした。
いろいろ試したところ、AF設定はCase1 汎用性の高い基本的な設定が一番ヒット率が高かったです。
このように前から向かってくる鳥を狙うシーンでは、そこそこと言った印象。瞳検出の四角はあまり当てにしない方が良いでしょう。
この大きさまで来ると、「瞳検出の枠が出ていても実際は合焦していない」事は減ります。
しかしながら瞳が影になっている場合などは頻発しますので、連写で枚数を撮ってカバーするのがオススメです。
上の写真の様な背景だと、「顔+追尾優先AF」では鳥を見つけられませんので、スポット一点AFやMFを併用しましょう。
DO(Diffractive Optical element=回折光学素子)を使用したレンズに共通の特徴ですが、ごちゃついた背景でのボケ味は独特です。まるで枝が盛り上がっているかのような写り。
DOレンズの強みである色収差補正能力については、どのようなシーンでもほぼ全く気になりません。
流石に800mmともなると、しっかりと構えていても構図がずれることが多い印象。
普段100mm以下のレンズしか試用していない私の腕ではなおさらでした。
この辺りは筋力や集中力を鍛えるか、高品質なビデオ雲台を搭載した三脚で対策出来ると思います。
・・・
「フルサイズ機で野鳥を撮るなら、とりあえず200万円用意しろ」
私がこの言葉を言われたのは、10年ほど前でしょうか。
当時はミラーレスカメラが本格的に出始めた頃で、まだまだ一眼レフカメラが現役の時代。
フラグシップ一眼レフ(約1.5キロ)のボディに、800mm F5.6(4.5キロのレンズ)を装着し、超大型三脚の上に載せる…。
総重量10キロを優に超える荷物と共に、知る人ぞ知る小鳥のスポットへ必死で移動…。
というような苦行の末、運が悪いと目当ての鳥に会えずじまいというシビアなものだったのです。
でも、今は違います。
軽量なミラーレスに軽量な超望遠、無理することなく持ち運べ、翌日の仕事にも響きません。
鳥の瞳を自動で追ってくれるAFもあり、撮影のハードルは大きく下がりました。
待ち望んだ理想の未来が到来したのです!
このレンズとなら、鳥を追いかけてどこまでも飛んで行ける。そんな気がします。
アクティブな撮影には、撥水撥油や防汚コーティングを!